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第8話うさぎは天命を知る

 翌朝。


 学生寮。


 第1王子の寝室。


 高級ホテルみたいな部屋の中央で。


 うさぎが布団に埋もれていた。


「……やっぱこの布団おかしいだろ……」


 もふ。


 優兎は顔を埋める。


「寝心地良すぎる……」


 数日。


 この学園で生活して分かった事がある。


「しかし不思議だなぁ」


 天井を見上げながら呟く。


 学園内。


 全ての物が元に戻る。


 使った食器。


 洗った調理器具。


 干したタオル。


 全部。


 次に見た時には。


 最初からそこにあったみたいに棚へ戻っていた。


 割れた皿すら元通り。


 だが。


 冷蔵庫へ入れた食材。


 調理した料理。


 それだけは残る。


「ゲームの処理落ちみたいな世界だな……」


 意味が分からない。


 だが。


「まぁ便利だからいいか」


 考えるのをやめた。


「考えても分からんし」


 そもそも。


 うさぎになった時点で。


 だいたい終わっている。



 調理場。


 昨日の残りのカレーを温める。


 光る米もどきへかける。


「朝から重いな……」


 そう言いつつ食べる。


 もぐもぐ。


「……やっぱカレーパンだこれ」


 意味不明だった。


 食後。


 優兎はリュックを背負う。


「今日は昨日のエリア探索だな」


 昨日は荷物運搬だけで終わった。


 今日は別だ。


「なんか使えそうな物あるといいなぁ」


 向かう先。


 昨日略奪したコンビニ周辺。



「近っ」


 意外とすぐ着いた。


「昨日必死だったから遠く感じたのか……?」


 優兎は案内図を見る。


「えーと……どれどれ」


 商業地区。


 店一覧。


 ブティック。


 宝石店。


 カフェ。


 ランジェリー店。


 洋菓子店。


「……何か偏ってない?」


 完全にデートスポットだった。


「乙女ゲーム感すごいな」


 さらに見る。


「ロクな店がねぇ」


 男一人で嬉しい店が少ない。


 そして。


 その他欄。


 魔法道具店。


 武具店。


 その下。


「……ん?」


 優兎の動きが止まる。


「は?」


 二度見。


「海賊のアレじゃん」


 さらに。


「ってかペンギンのアレじゃん」


 どう見ても。


 あの店だった。


 名前は書いてない。


 だが。


 完全にあの店だった。


「女神日本にかぶれ過ぎだろ……」


 優兎は歩き出す。



 店はすぐ見つかった。


 派手。


 とにかく派手。


 妙に主張の強い外観。


 見覚えある配色。


「うわぁ……」


 引いた。


 そして入店。


♪ドンドンドン―――♪


 軽快なBGM。


 店名連呼。


「怒られろ女神」


 心底そう思った。


「……まぁ今は有効活用してやる……有難く思え」


 うさぎは店内を見回す。


「何でもあるなここ……」


 家電っぽい魔法道具。


 布団。


 家具。


 アウトドア用品。


 おもちゃ。


 謎グッズ。


 さらに。


「うわ、やらかし商品まである」


 完全にあの店だった。



「お?」


 優兎は商品を手に取る。


「これ使えそう」


 カートへ入れる。


 さらに。


「あ、これもいいな」


 ぽいぽい入れる。


 その時。


「……あ」


 何か閃いた。


 うさぎの目が光る。


「これがあれば……イケるな」


 さらに商品追加。


 長い棒。


 小型台。


 固定具。


 その他諸々。


 完全に何か企んでいた。


「よし」


 カートを押す。


「帰るか」


 そのまま店を出る。


 当然のように会計はしていない。


 もう人間だった頃の法律感覚はだいぶ消えていた。



 歩いている途中。


「あれ?」


 見覚えある建物。


 白黒。


 警備施設。


「数多くない?」


「この街そんな治安悪かったのか?」


 横を見る。


 そこに。


「……っ!」


 優兎の目が見開く。


 低い車体。


 太いタイヤ。


 獰猛なフロント。


 ただの警備車両じゃない。


「こ、コレは……!」


 うさぎが震える。


「やっぱ女神バカだ!!」


 なんで異世界にこんなのあるんだ。


「これは一旦確認しないとな……」


 優兎は建物へ侵入した。



 数分後。


 ガン!!


 バキャ!!


 金属破壊音。


 そして。


 建物から出てくるうさぎ。


「鍵無いな……」


 荒れ果てた施設。


 強盗跡地みたいになっていた。


 優兎は車を覗く。


「おぉ……」


 高級感ある内装。


 追加機材。


 スポーツカー特有の空気。


「やっぱベースこれだよな……」


 さらに。


 座席を見る。


「……あ」


 鍵。


 普通に置いてあった。


 ドアへ手をかける。


 ガチャ。


 開いた。


「おぉぉ……」


 うさぎが乗り込む。


 シート。


 メーター。


 シフト。


 そして。


「マニュアル……!」


 歓喜。


 優兎のテンションが爆上がりした。


 前回は。


 オートマだった。


 つまり。


 足が届かなかった。


 だが今回は。


 マニュアル。


 つまり。


「これは……天命か……」


 ちらり。


 外を見る。


 カート。


 そこには。


 先程買った長い棒。


 小型台。


 固定具。


「ふふふ……」


 笑う。


「ふはははは!!」


 うさぎが悪い顔をしていた。


―――続く

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