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『バグったうさぎを修正できません』 ――ブラック企業の天使がヤケクソで転生させた結果――  作者: 島ながぁ
第三章 異形の王様

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第60話うさぎは海に飛び出した

 朝。


 潮風の匂い。


 波の音。


 浜辺に張っていたテントを片付けながら、うさぎは昨夜のことを思い返していた。


 月明かり。

 ラムネ。

 妙に近かった距離。


 そして――謎のキラキラ空間。


 うさぎ「……わからん」


 どう考えても雰囲気がおかしかった。


 なんかこう。


 乙女ゲームみたいだった。


 乙女ゲームだったわ。


 うさぎ「なんでだよ……」


 視線を向ける。


 少し離れた場所。


 マオが近未来バイクの整備をしていた。


 だが。


 目が合った瞬間。


 スッ。


 逸らされた。


 うさぎ「……?」


 避けられてる。


 うさぎ「なんで?」


 マシロ「青春ってやつだね」


 後ろからニヤニヤ顔。


 うさぎ「何言ってんだおめぇは?」


 マシロ「いやぁ〜甘酸っぱい」


 うさぎ「焼きそばソースの匂いしかしねぇよ」


 マシロ「台無しだよブラザー」



 ◇



 車とバイクは海沿いの街道を進む。


 昨日よりさらに潮の匂いが強い。


 遠くには港町が見え始めていた。


 巨大なクレーン。


 白い灯台。


 海鳥。


 物流都市らしく活気がある――


 はずだった。


 だが。


 うさぎ「……居る」


 マオ「……居るわね」


 マシロ「こわ」


 門の前。


 満面の笑みで手を振る聖女。


 ロチュス「うさぎ様ー!!」


 さらに。


 ウルシ「うさぎー!」


 うさぎ「なんでウルシまで居んだよ!?」


 ウルシは女性職員に抱っこされながら手を振っている。


 うさぎ「一本道だったよなここ?」


 マオ「そのはずなんだけど……」


 途中で追い抜かされた覚えもない。


 うさぎ「……どうやって来た?」


 ロチュス「愛の力です!」


 満面の笑み。


 ウルシ「あいのちからー!」


 真似するウルシ。


 うさぎ「愛ってなんなんだ……」


 マシロ「深いテーマね……」


 マオ「普通に恐怖よこれ」


 側近「全て聖女様の赴くままです!」


 うさぎ「訳が分からねぇ」



 ◇



 一行は港へ向かった。


 巨大な船着場。


 停泊する船。


 大量の荷物。


 ……だが。


 静かだった。


 うさぎ「ん?」


 張り紙。


『海洋魔物出現につき、連絡船運航停止中』


 うさぎ「うわぁ……」


 マシロ「タイミング悪ぅ」


 マオ「私は飛んでいけるけど」


 近未来バイクを軽く叩く。


 うさぎ「いいな飛行機能」


 ロチュス「うさぎ様!」


 ロチュスが一歩前へ出る。


 自信満々だった。


 ロチュス「ご安心ください!」


 ロチュスが空へ向かって手を掲げる。


 側近達が一斉に動き始めた。


 うさぎ「……?」


 ゴゴゴゴゴ――


 街の一角。


 教会施設。


 その地下が開く。


 うさぎ「は?」


 白い巨体がゆっくり浮上してきた。


 巨大船。


 だが普通じゃない。


 流線型の船体。


 白い装甲。


 ネオンのように発光するライン。


 そして。


 側面に描かれた巨大うさぎマーク。


 うさぎ「ファンタジーどこ行った!?」


 マシロ「技術ツリーおかしいでしょ」


 マオ「……魔導技術だけでここまで?」


 ロチュスは胸を張る。


 ロチュス「我が教団の最新鋭高速飛空船です!」


 ロチュス「その名も――」


 嫌な予感。


 ロチュス「偉大なるうさぎ様号です!!」


 うさぎ「ネーミングで全部台無しだよ!!」



 ◇



 その時。


 後ろで白黒車が騒ぎ始めた。


 ラジオ『暫し!暫しお待ちを!』


 うさぎ「なんだよ……」


 ラジオ『モード変更』


 ガコン。


 車体がエンジンを吹かす。


 うさぎ「……嫌な予感しかしねぇ」


 ラジオ『やってやんよオラァ!!』


 うさぎ「待て待て待て!」


 ラジオ『発射5秒前』


 うさぎ「発射ってなんだよ!?」


『4』


 マシロ「ちょっと待ってまだ乗って――」


『3』


 うさぎ「シートベルト!」


『2』


 マオ「嘘でしょ!?」


『1』


『GOOOOO!!』


 ドゴォォォォォォ!!


 車が爆発的加速。


 うさぎ「ぬわあああああああ!!」


 マシロ「うゴゴゴゴゴゴゴ!!」


 そのまま船着場を飛び出し――


 海へ。


 うさぎ、マシロ「なああああああああ!!」


 着水。


 だが沈まない。


 ザバァァァァ!!


 車体下部から光が噴き出す。


 水面を滑走し始めた。


 うさぎ「走ってるぅぅぅぅ!?」


 マシロ「どうなってんのぉぉぉぉ!?」


 ラジオ『海ッ!!最高ォォォォォ!!』


 うさぎ「お前テンションで動いてんのか!?」


 水しぶきを撒き散らしながら海上を爆走する白黒車。


 完全に頭がおかしい。



 ◇



 マオ「待ちなさいよーー!!」


 マオもバイクで追従する。


 浮遊バイクは水面スレスレを高速滑空。


 ピンク色の光の軌跡を引いていた。


 うさぎ「うおおお速ぇ!!」


 マシロ「胃がぁぁぁ!!」


 マシロは窓からキラキラを吐いた。



 ◇



 その後方。


 ロチュスは目を輝かせていた。


 ロチュス「これは……!」


 ロチュス「噂に聞いた海辺での追いかけっこですね!!」


 何をどう聞いたのかは不明。


 側近達が敬礼する。


「発進準備完了しております!」


 ロチュス「直ちに追います!」


 ウルシ「追いかけっこー」


 巨大飛空船が浮上。


 シュウウウウ……


 四枚の巨大翼が展開。


 最早戦略兵器だった。


 教会職員「圧縮魔導炉安定」


 教会職員「レーダー起動」


 側近「全システム正常!」


 ロチュス「発進を」


 ウルシ「ゴーゴー!」


 ゴォォォォォ!!


 白い飛空船がロケットのような加速で空へ飛び出した。


 漁師達がその光景を見上げる。


 漁師「いやぁすげぇな……」


 船乗り「ありゃ海の魔物も逃げるわ!」


 船乗り2「ちげぇねぇ!!」


「がははははははは」


 港町に笑い声が響く。


 その遥か先。


 白黒車。

 ピンクのバイク。

 白い飛空船。


 三つの狂った乗り物が海上を突き進んでいた。


 ――続く

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