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『バグったうさぎを修正できません』 ――ブラック企業の天使がヤケクソで転生させた結果――  作者: 島ながぁ
第2章白き聖女

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第53話うさぎと白の聖地

 教会崩落から数日。


 白の宗教国家は、以前とはまるで違う熱気に包まれていた。


 崩れ落ちた巨大塔の周囲には足場が組まれ、職人達が忙しなく行き交っている。


 だが――。


 誰一人として暗い顔をしていなかった。


 むしろ。


 祭りの準備でもしているかのようだった。


 白い旗。


 白い花。


 白い布。


 そして。


 巨大化うさぎを描いた謎の旗。


 うさぎ「なんだこれ……」


 街の中央広場。


 そこには即席の演説台が作られていた。


 その上に立つのは、白い聖衣を纏った聖女ロチュス。


 額にはもうティアラは無い。


 代わりに、薄く残った傷跡だけが見えていた。


 ロチュスは静かに両手を広げる。


 ロチュス「皆様」


 広場が静まり返る。


 ロチュス「私は……間違っていました」


 ざわめき。


 だが誰も否定しない。


 ロチュス「苦しみを消したかった」


「悲しみを消したかった」


「争いを止めたかった」


「ですが私は……皆様を縛っていたのです」


 白い風が吹く。


 ロチュスは小さく息を吐いた。


 ロチュス「よって本日をもって――」


「人体実験計画の完全停止を宣言します」


 どよめき。


 ロチュス「薬物による精神制御も終了します」


「今後、教団は医療・福祉・美容技術へと転換し」


「皆様をより自然な形で支援する組織へ再編します」


 うさぎ「美容?」


 隣で聞いていたマシロが反応した。


 マシロ「ほう」


 ロチュス「また、人体改造技術の副産物として発展した施術技術を活用し――」


「高級スパリゾート事業へ参入します」


 マシロ「やったぁ!!」


 うさぎ「食いつくな」


 さらにロチュスは続ける。


 ロチュス「そして」


「教団本部跡地を――」


 振り返る。


 崩れた巨大塔。


 その中央に残る。


 巨大な。


 うさぎ型の足跡。


 ロチュス「“うさぎ様降臨の聖地”として保存します」


 うさぎ「やめろぉ!?」


 歓声。


 拍手。


「うさぎ様ー!!」


「白き神よー!!」


「モフモフ万歳!!」


 うさぎ「なんだよモフモフ万歳って……」


 ロチュスは真顔だった。


 ロチュス「さらに観光事業として」


「うさぎ様ぬいぐるみ」


「うさぎ様キーホルダー」


「うさぎ様饅頭」


「うさぎ様Tシャツ」


「うさぎ様抱き枕」


「うさぎ様白毛使用風クッション」


 うさぎ「待て最後なんだ」


 ロチュス「勿論抜け毛風です」


 うさぎ「余計嫌だわ」


 ◇


 その後。


 新設中のスパ施設。


 白い大理石。


 白い湯気。


 白い床。


 白い天井。


 うさぎ「白すぎて目が痛ぇ……」


 施設の奥。


 高級ホテルみたいな個室で。


 マシロとマオは施術ベッドに寝転がっていた。


 二人とも水着姿。


 マシロ「やっぱり天国だわぁ……」


 マオ「……ここに住みたい……」


 うさぎ「完全に堕落してんなお前ら」


 施術担当達は、恐ろしいほど手際が良かった。


 肩。


 背中。


 翼。


 脚。


 ピンポイントで疲労を消していく。


 マオ「そこ……そこ最高……」


 うさぎ「目が死んでねぇ……キラキラしてやがる……」


 普段の鋭い雰囲気が消えていた。


 髪も下ろしている。


 やたら柔らかい雰囲気だ。


 うさぎ「……マオだよな?」


 マオ「失礼ね」


 うさぎ「なんかお嬢様感増してんだけど」


 マオ「そう?」


 マシロ「落ちたわね」


 マオ「何が?」


 マシロ「沼に」


 マオ「……否定できないのが腹立つわ」


 うさぎは思わず視線を逸らした。


 ……でけぇ。


 しかも柔らかそう。


 いや見ちゃダメだ。


 殺される。


 うさぎ「……髪下ろしてんの似合うな」


 うさぎは誤魔化した。


 マオ「……は?」


 不意打ちだった。


 マオの動きが止まる。


 耳まで赤くなる。


 マオ「……あ、ありがと」


 マシロ「うわ珍しい反応」


 マオ「うるさい!」


 うさぎ「?」


 本人だけ気づいていなかった。


 ◇


 うさぎは持っていた袋を机に置く。


 中から出てきたのは。


 黒い粘液まみれのティアラ残骸。


 ピク。


 ピクピク。


 うさぎ「……まだ動いてんだよなこれ」


 マシロ「え、キモ」


 マオ「なにこれ……」


 黒いヘドロのようなものが蠢いている。


 見ているだけで不快感があった。


 うさぎ「転生者の紋章みたいなの出てたから、多分女神関連だと思う」


 マシロ「うわぁ……」


 マオ「よく頭に乗せてたわねあの聖女……」


 そこへ。


 勢いよく扉が開いた。


 ロチュス「うさぎ様!!」


 うさぎ「うわ近っ!?」


 ロチュスが凄い勢いで駆け寄ってくる。


 抱きつきそうな距離。


 側近達も後ろにいた。


 全員真顔。


 ロチュス「見てください!」


 うさぎ「な、何を」


 ロチュスが広げたのは。


 巨大な絵画。


 朝日に照らされ。


 巨大化し。


 塔を突き破って現れる白いうさぎ。


 背景には神々しい光。


 無駄に壮大。


 うさぎ「……」


 ロチュス「うさぎ様の神々しさ、雄大さ、慈愛、圧倒的モフモフ感を丁寧に描きました!」


 うさぎ「自分で描いたんかい!」


 ロチュス「はい!」


 ドヤ顔だった。


 ロチュス「他にもありますよ!」


「うさぎ様ぬいぐるみ!」


「うさぎ様キーホルダー!」


「うさぎ様饅頭!」


「うさぎ様Tシャツ!」


「うさぎ様白饅頭!」


「うさぎ様入浴剤!」


「うさぎ様添い寝毛布!」


 うさぎ「まって!?増えてる増えてる!」


 ロチュスは止まらない。


 早口だった。


 完全にオタクのそれだった。


 うさぎは側近達を見る。


 うさぎ「……止めないの?」


 側近「我々は聖女様の望むままに!」


「そうだ!」


「うさぎ様万歳!」


 ダメだこいつら。


 完全に染まっている。


 うさぎは遠い目をした。


 その横で。


 マシロが真顔で呟く。


 マシロ「……うさぎ様饅頭ちょっと欲しい」


 うさぎ「お前もかよ」


 ―――続く

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