第49話●乱入する女
第6世界担当室。
薄暗いオフィスの中で、異様な速度の打鍵音だけが響いていた。
カタカタカタカタカタカタ――――!!
マオ「……」
マオは無言だった。
だがその目は完全に死んでいた。
いや、違う。
殺す目だった。
モニターには複数の監視画面。
宗教国家。 白い街。 暴走する教団員。 崩れ始めた教会。
そして――――
高級スパ顔負けの施術を受け、 だらけ切った顔で蕩けているマシロ。
マシロ『そこそこぉ〜♡』
マオ「……は?」
第6世界担当室の空気が凍った。
遊んでいた職員達の動きが止まる。
空調の音。
PCの駆動音。
誰も喋らない。
マオの頬が引きつる。
マオ「……何してんのアイツ」
さらに画面が切り替わる。
白い服の女性職員達に囲まれ、 フワフワ浮きながら全身マッサージされるマシロ。
マシロ『ここをキャンプ地とする』
マオ「…………」
ピクッ。
マオの眉が動いた。
次の瞬間。
マオ「コロス」
職員達「「「うわ出た」」」
マオ「アイツ殺してやるううううううううう!!」
ガンッ!!
マオは立ち上がる勢いで机を蹴飛ばした。
書類が宙を舞う。
近くの職員が慌ててコーヒーを避けた。
「うおっ!?」
マオはスマホ型端末を高速操作する。
画面に大量の警告文。
【世界間転移:制限中】 【許可申請が必要です】 【上位権限が――】
マオ「知るかァ!!」
端末を壁へ投げつける。
バチバチバチィッ!!
空間が裂けた。
楕円状の転送ゲートが強引に開く。
不安定に火花を散らしながら脈動するゲート。
職員達「うわぁ……」
どこから取り出したのか。
マオの周囲に大量の武器が浮かび上がった。
拳銃。
短機関銃。
ライフル。
ロケットランチャー。
手榴弾。
ナイフ。
果ては対物ライフルまである。
完全武装だった。
新人職員「なんでシナリオ担当がそんな装備持ってるんですか!?」
先輩職員「聞くな」
別の職員「たまにいるんだよな……仕事のストレスを武力で解決しようとするタイプ」
マオ「……マシロぉ」
笑っている。
目が笑っていない。
ものすごく怖い。
マオはゲートの前で立ち止まり、 ゆっくり振り返った。
マオ「もしアイツが」
「『気持ちよかった〜』とか言ったら」
「撃つ」
職員達「「「理不尽!!」」」
マオ「じゃあ行ってくる」
職員「待ってください許可書!!」
マオ「後で書く!!」
バチィッ!!
マオはそのままゲートへ飛び込んだ。
火花を散らしながら閉じていく転送ゲート。
静寂。
数秒後。
一人の職員がぽつりと呟く。
「……マシロのヤツ何やったんだ?」
別の職員。
「さぁ?」
「でもあそこまでキレてるマオ初めて見たかも」
「いや、あれキレてるっていうか半分嫉妬じゃね?」
「それ言うとお前消されるぞ」
「でもマシロだしなぁ」
「あー……」
納得する一同。
また各々の作業へ戻っていく。
モニターの中では。
白い宗教国家の巨大塔が崩れ始めていた。
―――続く




