第45話うさぎと白い街
数日後の朝。
教会の大きな鐘の音で、うさぎは目を覚ました。
ゴォォン……。
静かな白い部屋に低い音が響く。
うさぎ「……朝かぁ」
窓の外を見る。
真っ白だった。
白い石畳。 白い建物。 白い服の人々。
朝日が反射してやたら眩しい。
うさぎ「照り返しやべぇなこの国」
ベッドの端ではウルシがまだ寝ている。
抱き枕代わりにうさぎ型ぬいぐるみを抱えていた。
うさぎ「……」
いつの間にか懐いてんなぁ。
その時。
コンコン。
扉がノックされた。
ロチュス「おはようございます」
白い。
朝から白い。
うさぎ「おはよう聖女さん」
ロチュス「本日は街をご案内しようかと思いまして」
うさぎ「観光ツアーってやつか」
ロチュス「はい!」
少し嬉しそうだった。
善人オーラがすごい。
◇
数十分後。
うさぎ達は街を歩いていた。
ウルシも起き、白い服を着ている。
少しサイズが大きい。
ウルシ「……ぶかぶか」
うさぎ「そのうち合うだろ」
マシロは布切れみたいな服で飛んでいた。
マシロ「私だけ雑くない?」
うさぎ「妖精サイズねぇからな」
街は静かだった。
だが活気はある。
白い市場。 白いパン屋。 白い噴水。
どこを見ても白い。
うさぎ「徹底しすぎだろ……」
ロチュス「清潔は心を穏やかにしますから」
街の人々がロチュスに気づく。
「あっ、聖女様だ」
「おはようございます!」
「今日もお美しい……!」
皆笑顔だ。
ロチュスは一人一人に丁寧に返していく。
ロチュス「おはようございます」
「足のお怪我はもう大丈夫ですか?」
「あまり無理はなさらないでくださいね」
老人「聖女様のお薬のおかげです」
本当に慕われていた。
演技じゃない。
うさぎ「人気すげぇな」
ロチュス「皆さんが優しいだけですよ」
謙虚だ。
だがその直後。
路地裏で子供が転んだ。
ロチュスは即座に駆け寄る。
ロチュス「大丈夫ですか!?」
子供「いたぁい……」
膝から少し血が出ていた。
ロチュスは白い液体の入った小瓶を取り出す。
患部に垂らした。
傷が塞がっていく。
うさぎ「おぉ……」
本当に治ってる。
子供「なおった!」
ロチュス「ふふっ、良かったです」
周囲から拍手。
完全に聖女だった。
うさぎ「……いい人じゃん」
マシロ「……」
マシロは黙ったままロチュスの頭のティアラを見ている。
◇
街を進む。
驚くほど綺麗だった。
ゴミ一つ無い。
喧嘩も無い。
怒鳴り声も無い。
全員穏やか。
穏やかすぎる。
うさぎ「……」
逆に変だ。
その時。
農作業区画が見えてきた。
白い畑。
白い服の農夫達。
そして。
大量の白い液体を作物に撒いていた。
ドバドバ。
うさぎ「いや量多くね?」
農夫「聖女様の祝福です!」
笑顔。
でも。
目の焦点が少し変だった。
うさぎ「……」
ロチュス「病気も害虫も無くなります」
うさぎ「便利だなぁ……」
でもなんか嫌な感じがする。
ウルシはうさぎの後ろに隠れていた。
ロチュスが近づくたび少し警戒している。
うさぎ「……?」
ウルシは何も言わない。
◇
広場。
白い噴水の前でロチュスは立ち止まった。
ロチュス「この国には争いがありません」
うさぎ「へぇ」
ロチュス「皆、幸福ですから」
その時だった。
一人の男が突然倒れた。
「う……」
周囲が少しざわつく。
だが。
誰も驚いていない。
教団員が慣れた様子で近づき男を支える。
教団員「お連れします」
男は苦しそうに震えていた。
汗だくで。
でも。
周囲の人々は笑顔のままだ。
何事も無かったように歩いている。
うさぎ「……」
ロチュス「少々疲労が溜まっていたのでしょう」
自然な口調。
本当にそう思っている顔。
男はそのまま教団員達に運ばれていった。
笑顔で。
白い街の奥へ。
―――続く




