第34話うさぎと白い道
誰かの独り言(複数)。
「ちょうどいいタイミングで呼び出せると思ったのに、ミスって飛んじゃいましたねぇ〜」
『外部からの不正な干渉を検知。userの強制転送を確認しました。user捜索の為、機能拡張を実行します』
「あ、ヤバい人がいるなぁ〜。これは、干渉するタイミングを考えないと危ないなぁ〜」
眩い閃光。
次の瞬間。
全身を殴りつけられたような衝撃が走った。
うさぎ「うわ!?」
身体が浮く。
いや、違う。
どこかへ引きずり込まれている。
上下も左右もわからない。
白い光。
耳鳴り。
身体の感覚が消えていく。
うさぎ「な、なんだこれ——」
声すら途中で掻き消えた。
しばらくして。
ふっと衝撃が消える。
代わりに聞こえてきたのは、風の音だった。
ざぁ……。
草が揺れる音。
外か?
うさぎはゆっくりと目を開けた。
うさぎ「……は?」
そこは街道のど真ん中だった。
青空。
どこまでも続く草原。
遠くに森。
そして、自分の足元から真っ直ぐ伸びる白い道。
見覚えのない景色だった。
うさぎ「い、意味がわからん」
うさぎは慌てて周囲を見回す。
誰もいない。
うさぎ「いやさっきまで城にいたよな?」
うさぎ「姫とハイタッチして……なんかバチバチいって……」
記憶を辿る。
あの瞬間。
手を合わせた瞬間、弾けた光。
そして——。
うさぎ「姫は!?」
叫ぶように振り返る。
だが誰もいない。
風だけが吹き抜けた。
うさぎ「……嘘だろ?」
姫は無事か?
マシロは何処に?
ウルシは?
皆も飛ばされたのか?
さっきの感覚を必死に思い出す。
引き込まれる感覚。
身体が千切れそうな圧迫感。
もし皆も巻き込まれたなら——。
うさぎ「……いや」
姫やマシロなら何か声を出すはずだ。
マシロなら絶対うるさい。
マオだって何か叫ぶ。
でも聞こえなかった。
何も。
……俺だけ飛ばされた?
どこに?
うさぎ「……」
沈黙。
広い草原。
風の音だけ。
うさぎ「ここどこだよおおおおおおおおお!!」
叫びが草原に響く。
遠くまで。
どこまでも。
そして——返事は無い。
うさぎ「……」
うさぎ「……わからん……」
不安を誤魔化すように名前を呼ぶ。
うさぎ「マシロ! マオ!」
無音。
返事はない。
うさぎは俯き、大きく息を吐いた。
その時。
足元に違和感を覚える。
うさぎ「……ん?」
白い石畳。
草原のど真ん中を、真っ白な道が一直線に続いていた。
継ぎ目が妙に少ない。
表面も滑らかだ。
うさぎはしゃがみ込み、地面を軽く叩く。
コン、コン。
硬い。
うさぎ「……コンクリート?」
異世界で見るには妙に人工的だった。
しかも綺麗すぎる。
風雨に晒された感じがない。
まるで最近作られたみたいだ。
うさぎは立ち上がり、道の先を見る。
遥か遠く。
霞の向こうに何かが見えた。
巨大な建物。
尖塔。
うさぎ「城……?」
目を細める。
うさぎ「いや……教会っぽい?」
遠すぎてよくわからない。
今度は後ろを見る。
遠くに森。
それ以外は何もない。
うさぎ「……仕方ない」
うさぎ「行くか!」
そう言って振り向く。
いつものように車へ向かおうとして——止まった。
うさぎ「あ……」
何も無い。
車が無かった。
うさぎ「……車……」
食料。
テント。
酒。
あとタバコ。
全部、車の中だ。
うさぎは数秒固まった。
うさぎ「……終わった」
風が吹く。
草が揺れる。
やけに静かだった。
うさぎ「いや待て」
うさぎ「死ぬほどではない……よな?」
沈黙。
うさぎ「……たぶん」
自信は無かった。
うさぎは頭を抱える。
うさぎ「マジかぁ……」
うさぎ「全ロスリスタートかよぉ……」
空を見上げる。
青い。
やたら青い。
現実感が薄い。
うさぎ「……」
しばらく黙ったあと。
うさぎは諦めたように肩を落とした。
うさぎ「まぁ歩きゃ着くかぁ……」
白い道へ向き直る。
そして。
草原の中を、ひとり歩き始めた。
―――続く
裏テーマ的な小話。
初期構想では聖女は淫乱男の娘、転生者と被る為廃案にしました。
白を尊ぶ宗教国家です。
うさぎは白いのです。




