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『バグったうさぎを修正できません』 ――ブラック企業の天使がヤケクソで転生させた結果――  作者: 島ながぁ
第一章︰名無しの王女

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第33話消えたうさぎ

初期の構想ではハイタッチで世界が爆散する予定でした。

ロズワールさんちょっとカッコよくしすぎて無理やったわ。

まだまだ続きます。

転生者の騒動から、一週間が経過していた。


王都は未だ完全には立ち直っていない。


だが、それでも少しずつ変わり始めていた。


街では被害者の保護が進み。


洗脳されていた人々も徐々に正気を取り戻し。


王宮では新しい統治体制の話し合いが続いている。


そんな中―――


うさぎは未だ部屋に引きこもっていた。


 


コンコン。


 


ドアが少しだけ開く。


ほんの数センチ。


そこから片目だけ覗いていた。


路地に倒れていた少女、ウルシだった。


うさぎ「……何見てんねん」


ウルシ「……なんでもない」


うさぎ「なんでもない顔じゃねぇだろ」


ウルシ「……」


じーっ。


うさぎ「見るな見るな」


ウルシ「……元気?」


うさぎ「まぁそれなり」


ウルシ「……そっか」


少しだけ安心したようにドアが閉まる。


……と思ったらまた開いた。


うさぎ「なんやねん」


ウルシ「……お腹すいた」


うさぎ「さっき食堂で食ってただろ」


ウルシ「……デザートは別」


うさぎ「お前ちゃっかりしてんな?」


ウルシは少しだけ笑った。


あの怯え切っていた姿を思えば、かなりマシになった方だ。


数日前、マオが被害者保護と記憶処理のために各地を回っていた時。


ウルシも保護対象として声を掛けられた。


だが。


何故か断った。


理由は最後まで言わなかった。


ただ。


「ここにいる」


それだけだった。


……多分。


俺の部屋の近くに居たかったんだろう。


理由は知らん。


 


他の兵士や侍女達は最低限しか話しかけてこない。


やはりあの日の件が原因だろう。


そりゃそうだ。


広場の真ん中で人を食ってたうさぎなんて怖いに決まってる。


だが。


何故か例外もいた。


 


ドンドン!!


 


勢いよくドアが開く。


武者甲冑のおっさんだった。


例の門番である。


武者兵「うさぎ殿ぉ!!」


うさぎ「うわ出た」


武者兵「本日もお元気そうで何よりでござる!!」


うさぎ「テンション高ぇなアンタ」


武者兵「いやぁ!あの日の御活躍!!まさに英雄!!」


うさぎ「やめろやめろ」


武者兵「悪鬼羅刹を討ち滅ぼす白き獣!!」


うさぎ「語彙が時代劇なんよ」


武者兵は目を輝かせていた。


……あの場に居たらしい。


全部見てたらしい。


それで好印象なの意味わからん。


武者兵「某!感動致しましたぞ!!」


うさぎ「感性どうなってんだアンタ」


武者兵「ではまた!!」


帰った。


嵐みたいな人だった。


 


そして。


もう一人。


何度も部屋へ来る人物がいる。


 


コンコン。


 


静かなノック。


このノックだけはすぐわかった。


うさぎ「……はい」


扉越しに声が聞こえる。


―――姫「……うさぎさん、起きていますか?」


うさぎ「……起きてる」


だが。


顔は合わせられなかった。


まだ怖かった。


姫があの時どんな顔をしていたのか。


自分がどんな目をしていたのか。


考えるだけで胃が痛くなる。


だから。


扉越しにしか話せない。


 


ロズワール王だけは例外だった。


ノックも無しに入ってくる。


うさぎ「だからノックしろって」


ロズワール「ここは俺ん家だぞ?それに、男同士で何を気にする」


うさぎ「俺うさぎなんだけど」


ロズワール「細かい事だ」


豪快に笑う。


最初に会った時とは随分印象が違った。


疲れ果てた王ではなく。


ただの苦労人のおっさんだ。


最近はよく酒を持って来る。


そして愚痴る。


ロズワール「何故余が初代首相なのだ……」


うさぎ「知らんがな」


ロズワール「息子達も継承権放棄しおった……」


うさぎ「いい事じゃね?」


ロズワール「外交官をやりたいなどと言い始めおって……」


うさぎ「平和そうでいいじゃん」


転生者の支配が消え。


国そのものを作り替える流れになっていた。


合議投票制国家。


王ではなく、人々が選ぶ政治。


―――姫はその象徴。


王座に就く予定らしい。


本人はかなり困惑していたが。


「皆さんの役に立てるなら……」


そう言って受け入れた。


……相変わらずお人好しだ。


 


その日の夜。


部屋でぼーっとしていた時。


ふと思い出した。


 


うさぎ「なぁマシロ、マオ」


マシロ「んー?」


マオ『何よ』


うさぎ「……神性エネルギーって何だ?」


空気が止まった。


マオ『……どこで聞いたの?』


マシロ「それなんだっけ?」


うさぎ「転生者食った後から時々出てくる」


「今も」


マオ『……何も見えないわよ?』


マシロ「幻覚?」


うさぎ「えーっと……」


空中を指差す。


うさぎ「“捕食により神性エネルギーを獲得しました”って」


「“消去しますか?”って表示されてる」


マシロ「……なんで転生者がそんなもん持ってんのよ」


マオ『うさぎ、それ誰かに話した?』


うさぎ「いや?」


マオ『何ですぐ聞かないのよ!?』


うさぎ「いや色々あって忘れてたんだよ!」


マシロ「神性ねぇ……」


うさぎ「女神関係?」


マオ『多分……』


マシロ「転生者を中継点にしてたとか?」


マオ『恐らく』


うさぎ「で?」


マオ、マシロ「?」


うさぎ「これ鬱陶しいんだけど」


「消していいの?」


マシロ「消去に一票」


マオ『保留』


うさぎ「押したら警告出た」


マオ『なんで押したのよ!?』


うさぎ「何となく……」


うさぎは表示を読む。


うさぎ「“消去した場合、肉体に吸収還元されます”だって」


マシロ「怖っ」


マオ『保留!!絶対保留!!』


うさぎ「だよなぁ……」


その時だった。


 


コンコン。


 


静かなノック。


うさぎ「あーはいこんばんは、こちら人喰いうさぎです」


開けた。


マシロ「ぶふぉっ」


盛大に吹き出した。


 


扉の前。


そこに居たのは。


―――姫だった。


 


―――姫「あ……私です」


うさぎ「あっ」


やらかした。


ノリで変な返しするんじゃなかった。


気まずい。


凄く気まずい。


―――姫「元気そうで安心しました」


うさぎ「あ、うん」


沈黙。


気まずい。


すると姫は少し頬を膨らませた。


―――姫「でも」


うさぎ「はい」


―――姫「そんなふうに悪い人ぶってはいけません」


うさぎ「……おっしゃる通りでございます」


うさぎはゴメン寝みたいな土下座をした。


―――姫「悪い子にはお説教です!」


許されなかった。


しっかり怒られた。


 


……数十分後。


 


説教が終わった。


うさぎ「あ、あのさ」


―――姫「はい?」


うさぎ「あの時……噛んでごめん」


姫はきょとんとした。


そして。


少し笑った。


―――姫「大丈夫ですよ」


首元を見せる。


傷一つ残っていない。


―――姫「ほら」


うさぎ「……うん」


うさぎ「あと……止めてくれてありがとな」


―――姫「咄嗟でした」


―――姫「自分でも驚いたんです」


少しだけ視線を落とす姫。


―――姫「でも……助けなきゃって思ったんです」


うさぎ「……」


―――姫「それに」


姫は微笑む。


―――姫「うさぎさんは、怖い人じゃありませんから」


胸が少し痛かった。



うさぎ「俺さ」


「元々人間だったんだ」


姫は黙って聞いている。


うさぎ「色々あってこの姿になって」


「変なうさぎだけど……まぁ結構楽しいよ」


苦笑する。


うさぎ「この前は最悪だったけどな」


―――姫「私は」


姫は優しく笑った。


―――姫「うさぎさんと会えて、とても楽しかったです」


うさぎ「……そっか」


少し沈黙。


うさぎは前足を見る。


うさぎ「俺、旅続けようと思うんだ」


―――姫「私はしばらくここに残ります」


うさぎ「……だよな」


―――姫「でも」


姫の声が少し震えた。


―――姫「また……いつか……」


―――姫「お会いできたら……」


―――姫「その時は……!」


うさぎ「その時はよろしくな!」


―――姫「……はい!」


二人は笑う。


うさぎ「俺の名前は佐伯優兎さえきゆうと、見ての通りの変な兎だ」


―――姫「私はアズローザ・―――・―――です」


(名前が聞こえる……なんでだ?……けど)


うさぎ「アズローザか…いい名前だな!」


そして。


前足と手を合わせた。


ハイタッチ。


 


その瞬間。


 


バチバチッ―――!!


 


うさぎ「へ?」


―――姫「あら?」


眩い光が弾けた。


部屋が白く染まる。


マシロ「え?」


マオ『ちょっ―――』


光。


轟音。


電流のような衝撃。


そして。


光が消えた。


 


―――姫「……うさぎさん?」


 


そこに。


うさぎの姿は無かった。


―――続く

次回予告的なアレ

うさぎ「ここどこ?」

うさぎは真っ白な街を眺めていた。

聖女「貴方は神だったのですね」

うさぎ「いや、うさぎだけど……」

次回から第2章白き聖女スタートです。

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