大事(だいじ)の前の大事(おおごと)・・・誰も正しいが正しくない事もある
※原作リスペクト作品です
※残虐・性的描写なし/対象年齢15歳以上推奨
※本小説の設定やキャラクターイメージはこちらから
https://akkin.site/?page_id=90
「はい!到着しました!!」
「ここはどこよ?」
「はい!ガールズバー『ピンクのハート』の店前です!!」
予想はしていたけど、マジで「ガールズバー」なんだ。
「新人ちゃんが呼んでいるって事は、ここに入れと?」
「はい!その通りです!!」
「私、未成年なんだけど?」
ここは基本お酒を飲むところ。
なので、未成年の私は入れないハズなのよね。
ま、保護者が一緒だとどうなのかは分かんないけど、少なくともパパはここには居ないからね。
「はい!大丈夫です!!」
「なんで大丈夫なのよ?」
「はい!現在裁判中で営業してません!!」
それ、誰が認定するのよ!
それ以前に、状況が意味不明。
「なんで裁判中なのよ...てか、私はどうして呼ばれたのよ?」
「はい!証人として!!」
「とにかくお客じゃないって事ね」
「はい!です!!」
このドローン。会話は明確なのは良いんだけど、いちいちうるさいのよね。
それにしても、ホントに魔物枠なの?
まぁ、どうせここはVRゲームだし、そもそもプレイヤーが全員未成年って事もないだろうし、気にしたら負けね。
「わかったわ。とりま、入りましょうか」
ガールがガールズバーに入るってどういう事よ?
と思いつつ、やたら派手なピンクの扉を開けて、お店に入ってみた。
『き~んこ~んか~んこ~ん』
ドアベル?っていうのかしら。ドアが開いたことを知らせる奴が鳴ったみたいなんだけど、なんで学校のチャイムなのよ。
そして相変わらずの効果音セリフ。
もう驚かないけどね。
「ようやく来たわね」
お店のカウンターの向こうで仁王立ちをしている新人ちゃん。
そして、カウンターには例の常連客6名。
カウンター向こうの奥には店長さんもいるわね。
問題なのは、カウンターじゃない、普通のテーブル席の所に九尾猫と、マウス、いろはさんとジョンさん、社長令嬢、白いお兄さんと、みんな居る。
ん?誰か足りないような気がするけど、もう十分面倒な人が揃っているのよね。
...もう帰りたいんだけど...
「裁判って聞いたんですけねど、なんの裁判なの?」
「誰かが私のお酒を飲んじゃったのよ」
「それで?」
「それで?って!これは犯罪なのよ!裁判が必要なのよ!」
そんな事で裁判なんて・・・
「犯人は誰か分かっているの?」
「この人よ!」
と、目の前の人を指さす。
人を指さししたらいけません、って教わらなかったのだろうか?
「僕は飲んでないよ~」
常連客(僕)が困ったような声で弁明しているけど、新人ちゃんの飲みかけのお酒だったら、飲んでても不思議じゃないか...
「ここには防犯カメラってないの?」
「ないわよ」
「なんで?」
「アタシがいるからよ」
「意味が分かんないんだけど?」
「すべてはアタシが正しいの。だから防犯カメラなんて要らないの」
もっと意味が分からないわよ!
「でも、こういう時は困るわよね?」
「アタシが言う事がすべてなのよ!」
だめだこりゃ。
「店長さんはそれで良いの?」
「いやあ、隠しカメラはあるんだけどね」
「カメラあるんじゃん!!」
それで解決するんじゃないの?
「それ、私の帽子に仕込まれているので、私が見てない場合は撮れてないんですよ」
「意味ないじゃん!」
ややこしい事言わないで!
あと、それだと新人ちゃんが拗ねるんじゃないの?
「あ、それアタシ知ってるよ」
知ってるんだ!
「とにかく!アタシのお酒を飲んだのは、この人!確定なのよ!間違いないのよ!」
「だから~、僕は飲んでないよ~」
この人たちの言う事は基本嘘はないんだけど、信じられないんだよね...
「飲んでいない証拠はあるの?」
「飲んだ証拠がないのが証拠だよ~」
ほら来た。
屁理屈ばっかり!
「アタシに逆らうの?出禁よ!!」
「こらこら、裁判なんだからちゃんと証拠を確認してだね~...」
ホントに裁判なんだ。
てか、店長さんはどういう立ち位置なんだろ?裁判長?
その割には何も進行とかしてこないのはなんで?
え?私に丸投げ?
「出禁にしてから確認した方が早いでしょ?」
「...それもそうか...」
「いや、だったらそれは裁判じゃないからね!!」
思わず新人ちゃんと店長さんの会話をぶった切っちゃった。
ホントに大丈夫か?この世界の人たち!
「そうか!証拠が必要なんだな!!」
バン!と扉が開き、遅れて、
『き~んこ~んか~んこ~ん』
と鳴る。いや、言う。
緊張感が一気に消えるんですけど?
「今こそ私の『虹色の脳細胞』が必要な時だな!」
やってきたのは死神博士だった。
もう、この裁判は終わったと思ったわ。
「死神博士...なんで来たのよ?」
「むむむ!私の名前を知っている、君は誰だ!!」
「それは良いですから、なぜ来たんですか?」
正直、私の事を思い出して欲しくない。
また実験に付き合わされるのは嫌!
「お~!お~お~お~...」
また額をぺしぺし叩きながらうろうろし始める。
「そうだ!私の開発した『オモロインダーKY』が反応したので、ここまでわざわざ来てやったのだ!」
「ちなみに、『オモロインダーKY』のKYって何ですか?」
「当然、『空気読めない』だが?」
すみません。聞いた私が間違ってました。
「ともかく!証拠を作れば問題ないんだな!」
「作るって、偽造してどうするんですか!」
「私にできない事はない!そうだ、早速かえって証拠を作らねば!!」
またドアを勢いよく開けて出ていき、勢いよくドアを閉める。
『き~んこ~んか~んこ~ん』
遅れて効果音セリフが鳴った。
...何しに来たんだろ?
「お願いだから、もう来ないでね」
思わず声に出してしまったわね。
「いや、また来るんじゃないの?」
で、この声に新人ちゃんが反応しちゃったわね。
てか、新人ちゃんは反応が良いのね。そこだけは安心する。
けど、この反応は聞き捨てならないわね。
「どうしてよ!」
絶対来て欲しくないんですけど!
「証拠を作りに行ったんだったら、作った証拠を持ってくるんじゃ?」
「証拠を作ったら、そもそもダメでしょ?」
「え?そうなの?」
お~い!常識!!
「証拠は作るんじゃなくって、見つけるものなのよ?」
「なんだ...面倒なのね」
あなた、ホントに何歳なんですか?
そう言えば、お兄さんやらいろはさんとかが居るけど、普通にお客さんで来てるのかな?
「お兄さんはなんでここに居るの?」
「お嬢様のお供で来たんだよ」
お嬢様はガールにご興味が?
「じゃあ、お嬢様はどうして来たの?」
「新人はわらわの友人での。仕事ぶりを確認しにきたのじゃ」
あ、そっち。安心した。
「へぇ~...で、感想は?」
「下僕を従わせる手腕はなかなかのものじゃな。わらわが教育しただけはあるの」
諸悪の根源はまさかの社長令嬢だったのね!
「ところで畜生禁止だったんじゃないの?」
九尾猫に向かって注意する。
横目で店長さんを見るけど何も言わない。
新人ちゃんに丸め込まれたか?
「僕は畜生ではないからセーフなのよ~(当然ですね~)」
「家で飼われているのは全部『畜生』になるんじゃないの?」
家畜の「畜」って「畜生」の事よね?
ペットも家畜枠なんじゃなかったっけ?
「僕は『飼われてなく』って、あのお屋敷に『住んでるだけ』なのよね~(びっくりしますよね~)」
「そうなんですか?」
「私のペットはセバスチャンだけだからな」
そういうオチ?
っていうか、店長は九尾猫に丸め込まれたのね。
「じゃあ、九尾猫はどうしているのよ」
「お嬢様について来ただけよ~(面白そうだったしね~)」
「いろはさんとジョンさんは?」
「吾輩たちはお茶に飽きたからだな。『心頭滅却すれば火もまた涼し』である」
「ね~山吹色でしょ?」
この人たちは相変わらずだな~...
なるほど、偶然来たって感じね。
ん?なんで令嬢と同じテーブルに座っているのよ?
「お嬢様とお知り合いなんですか?」
「いや、わらわはこのような者を知らん」
「吾輩も『百聞は一見に如かず』」
「水色~」
意味不明だけど、「知らない」って事だけは伝わってきた。
どうしてだろ~...やっぱ、適応し始めているのかしら、私...
「で、一番分からないのは、あんたなんだけど?」
と、マウスに向かって言う。
他の人はともかく、お酒飲めないでしょ?
「店長に拾われちゃってねぇ~。そしたら新人ちゃんのプレゼントにされちゃったんだよねぇ~」
店長!野良マウスを拾ったらダメじゃない!
てか、こんな気持ち悪いのをプレゼントにしちゃダメでしょ!!
「新人ちゃんはね~、可愛いって言って、めっちゃ喜んでくれたんだよぉ~」
「あ、そーなんですねー」
可愛いの定義が分からない。
なんにしても、この人たち(?)がここに居る理由は分かったんだけど、
「ちなみに、新人ちゃんのお酒を飲んだ人って知ってます?」
どこまで裁判(?)が進んだのか分からないけど、自分で聞くのが早そう。
だって、ここに居る人たちがまともな事を言うとは思えないもん。
問題は、質問には答えてくれるけど、その答えが意味不明な事がある事。
「僕は見てないから分からないよ」
「わらわも知らぬ」
「僕も分からないね~(見てもいないしね~)」
「知らぬ。『論より証拠』だ」
「分からないわぁ~。漆黒よね~」
「僕はねぇ~興味がないかな~」
身構えたけど無難だった。
どうやら、目撃者はいないのかしらね。
てか、カウンターに座っている常連客はどうなのよ?
「皆さんはどうなんですか?」
初めからこっちに聞けば良かった。
「そもそも儂たちがそんな事するハズはなかろう?」
「それに、そんな奴がいたら、そいつを出し抜いて俺が先に飲む!」
「だから、それはダメだって...てか、あっしも出し抜くっすね」
「私もだな」
「おいらは...ばれないようにするね」
「僕は...いやいや、そもそも僕はやってないからね?」
どうやら、ここは牽制し合っているので普通に無理そうよね。
それにしても、常連客(僕)はぎりぎりで失言しなかったのは、よく頑張ったんじゃない?
知らんけど。
「店長さんは?」
「私はちょっと用事で店に居なくて、戻ってきたら裁判だったんだよ」
役に立たないわね、この店長。
「そういや、どうして『飲まれた』って事が分かったの?」
現場検証しなきゃ先に進まないわよね。
なんで私がこんな事してるんだろ?
「アタシが見てない間に、5mm減ってたのよ!」
新人ちゃんが見せてきた7cmぐらいのグラスには、今は5cmほど薄い茶色の液体が入っている。
確かに5mm減ったら分かるかもだけど、新人ちゃんがちゃんと5mmを把握するとは思えない。
「見間違いとかは?」
「お酒は5mm分ずつしか飲めないのよ!」
「仕様だからね」
そんな仕様は不要!
「今は何cm残ってるの?」
「5cmね」
「ちなみに最初は何cm?」
「7.5cmよ」
「ん?グラスは7.5cmの高さって事?」
「そうよ。あと、そこが5mmあるからね」
「え?じゃあ、5mm分オーバーしちゃうじゃない!」
「え?表面張力でしょ?」
「え?表面張力って5mmもあるの?
「え?仕様でしょ?」
これも仕様なの?!
ダメよ!ここはVRの世界なのよ!現実じゃないんだからね!
「じゃあ、何回飲んだの?」
新人ちゃんに聞くと指折り数え始める。
7.5 ― 5 = 2.5。
5mmずつなので、5回飲まれている計算。
もし、新人ちゃんが「5回」って言ったら裁判は終わりね。
「5回ね」
よっしゃ!
「だったら、新人ちゃんが全部自分で飲んでいるって事になるわ」
「じゃあ4回」
なんでよ!
「なんで回数変えるのよ!」
「回数を間違えただけよ」
指折り数えてるんだから、シチュエーションとか覚えてたんでしょ?
絶対ごまかしてるわよね。
「そうだよ!新人ちゃんが正しいよ!」
疑惑が掛けられている常連客(僕)が割り込む。
ちょっと!自分の嫌疑が晴れそうなのに、そんな邪魔をしないでちょうだい!
「ちょっとややこしくなるから割り込まないでください!」
「出禁にするわよ!」
と、新人ちゃん。
伝家の宝刀のバーゲンセールね。
「大人しくしてます」
新人ちゃんのおかげで収まったけど、良いのか?この流れは...
また、バン!と扉が開く。
それだけであれば緊張感のある場面になるんだけど、
『き~んこ~んか~んこ~ん』
と、効果音セリフが続くので、一気に緊張感が抜ける。
ホント、どうにかならないかしら?
「ぼ...ぼぼ、僕の話が...とと、途中だったん...だけどな」
まさかの謎肉登場。
え?あの話の続きをしに来たの?
てか、何の話だっけ?
「あら?謎肉じゃない。なにしに来たのよ」
新人ちゃんが謎肉に声を掛ける。
てか、どうしてこの2人は知り合いなんだろ?
常連客なのかな?
「ぼ...ぼぼ、僕の話を、き...聞いて欲しいんだな」
「いやよ。今は裁判中なんだから」
「じゃ...じゃあ、お、終わるまで...ま、待つよ...」
ゆっくりとドアを閉め、こっちを向く。
その瞬間、ポジティブモードに入ったらしく、右手を掲げながら堂々と歩いてきて、空いている椅子に足を組みながら座る。
恰好よくしているつもりだろうけど、見た目が頭が謎肉の棒人間。様になっていない。
「で、裁判なんだって?そういう事だい?教えてくれないかな?」
気障な動作をしながら、流暢な言葉遣いで聞いてくる。
なんか面倒ごとが増えたんじゃない?
「アタシのお酒を5mm分、誰かが飲んだのよ」
「そうなのかい?で、裁判なんだね」
「そうなのよ。何か良いアイディアはないの?」
だから、アイディアで解決はしないのよ?
「そうだねぇ~アイディアというより、解決できるかもしれない方法を一つだけ知ってるよ?」
マジ?それは朗報!!
「え?マジ?それはどんな方法?」
「上を...天井を見る事さ」
と言って、人差し指を上に向ける。
そう言えば、この世界では「欲しい答え」が天井に書かれているんだった。
全員が揃って上を見る。
そこに書かれていた文字は...
『下を見ろ』
ん?なぜ?と思いつつ、条件反射的に下を見てみた。
そこに書かれていた文字は...
『ざまあみろ』
...
...え?
何のいたずら?誰のいたずら?この店にこんな事を仕掛けるのは店長?
全員が一斉に店長を見る。
店長は両手と頭をぶんぶんと横に振っている。
「天井の書き込みは『天の声』だから、誰かの書き込みとかは無いんですよ!」
え?そうなの?
「あ~、ともかく、僕には分からないね」
何もなかったかのように謎肉がそう締めくくったの。
ちなみに、この件に関してはもう誰も言わないみたいね。
お兄さんの「仕様だしね」以外は。
とにかく、「誰が飲んだのか」は依然として分からないのよね。
一番ありそうなのは、新人ちゃんが自分で飲んだのを勘違いしている可能性。
それが証明できれば良いんだけど、常連客が「新人ちゃんは可愛い」と言って、新人ちゃんを支持するし。
それも、一番疑われている常連客(僕)も支持するもんだから、ややこしい事この上ないのよ。
この問題。どうしても解決しなきゃダメなの?
「ねぇ、犯人が分からなかったらどうするの?」
「全員出禁」
「店長さん、もうそれで良いんじゃない?」
「いやいや!そんな事したら商売あがったりですよ!」
まぁ、そうよね~。
復活ルールがあるとはいえ、全員だと復活しにくいわよね。
「新人ちゃんも、さっき5回って言ったんだし、もう止めておいたら?」
少なくとも成人しているハズで、私よりも年上なんだしさぁ~。
新人ちゃんは私に向かって半泣きしながら訴えてきた
「ちょっと!アタシは悪くないでしょ?」
なんでそう思うかな・・・みんなを出禁にしたら商売が成り立たないじゃない
「ダメなものはダメと言うのは良いけど、出禁はやりすぎ」
「いや!新人ちゃんの言う事は絶対正しいのです!!」
なんで、こいつら(店の常連客)は新人ちゃんをここまで「よいしょ」するんだろ?
そもそも、それが諸悪の根源なんだけどな...
「てか、それってあなたの感想ですよね?」
と、思わず言っちゃった
一回言ってみたかったんだよね
「なぁ~にぃ~!やっちまったなぁ~!!」
...をい...
と、思わず心でツッコんだ。
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
常連客達が「可愛いは正義」と唱えながら、こちらに向かってゆっくり歩いてくる。
「仕様です」
と急に横から聞こえたので、そちらを向くと、白いお兄さんが私の肩に手を置いて、ニヤリと笑っていた。
どういう事?
何が仕様なの?
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
「可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!可愛いは正義!」
固まっている間も狂信者はスローガンを唱えて近づいてくる。
背後には満面の笑顔で逃げ道をふさいでくる白い悪魔。
あ~!!めっちゃ面倒!!そして怖い!!
これ以上は付き合いきれない!もう嫌!
どうしようかと思い、頭を抱えた時にVRゴーグルが指に当たった。
そうだわ!これはゲーム!VRゲームだったんだ!
で、思わずVRゴーグルを外しちゃった。




