憎まれっ子世に謀る・・・何も進まないお話
※原作リスペクト作品です
※残虐・性的描写なし/対象年齢15歳以上推奨
※本小説の設定やキャラクターイメージはこちらから
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進んでいくと小さな家が見えてきた。
家というより、小屋みたいな感じね。
あそこが「帽子とうさぎ」がいる場所なのかしら?
さらに近づくと、小屋の外に人影が見える。
どうやら、座っているみたい。
で、近づくと二人の男の人...パパよりも年上に見える人たちが、お茶を飲んでいたの。
一人は和服に......学生帽?
あ~、やっぱり学生帽だわ。
おじさんで和服で学生帽って、全く似あっていないわよね。
でも、猫が言ってた『帽子』はこの人ね。
で、もう一人が問題ね...
この人も和服を着ているんだけど、帽子じゃないものを被っていた。
...ウサギの耳が付いたカチューシャを...
『うさぎ』はこの人で確定だけど、絶対に見てはイケナイものだ!
方向を変えて通り過ぎようと思ったんだけど、さっき三毛猫に「帽子とうさぎが目印だよ」と言われたんだよね...
仕方ない...とりま、聞いてみるか...
二人は森の真ん中に御座をひいて、そこにちゃぶ台を置いて、座布団に座ってお茶を飲んでいたみたいね。
脇にはアレは...七輪だっけ?そして、その上にやかんが乗っていて湯気がうっすら出ている。
さて、覚悟をして声を掛けてみましょうか。
まずは挨拶。
大事よね?
「こんにちは」
「やあ、こんにちは」
「ご機嫌麗しゅう」
この世界の人たちって、反応は良いのよね。
とりあえず、無難な話からして行こう。
「こんな所でお茶をしているんですか?」
「吾輩たちがお茶を飲んでいるように見えるのかね?」
と、学生帽を被った人がちょっと時代がかった話し方をしてこちらを見てきた。
しまった!「いい天気ですね」が正解だったのかしら?
そんな事を一瞬思ったけど、もう遅い。
でも、お茶を飲んでいるようにしか見えないのに、なんでこんな事を言うのかしら?
「違うんですか?」
「いや?違わない」
なんなのよ、この人は!
「これも『袖すり合うも他生の縁』と言うからな。こちらに来て、一緒にお茶を飲もうではないか」
「ありがとうございます」
ここは逆らわない方が良さそうな気がする。
進められた座布団まで進むと視線が自動的に座った高さになった。
私も疲れてきたので、近くの椅子を手繰り寄せて座る。
最初から座ってやればよかったわね。
ところで、「袖すり合うも他生の縁」って、どういう意味なのかしら?
「さて、吾輩の名前は、いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす!!」
「長いわよ!」
途中でオチが分かってたけど、意外過ぎて思考停止してたので結局全部聞いてしまったじゃない...
ただ、心のどこかで「寿限無寿限無」じゃなくて良かったと思ったのも事実なのよね。
ちっちゃい時にみたテレビ番組で、かなりしつこくやってたので覚えちゃったんだけど、流石に言いたくはないからね。
「そして私は、ジョン!」
「...みじか」
短くて助かるけど、それよりも「ウサギ耳」って呼んでしまいそうなのが怖いわね。
学生帽の人は...どうしよ?
とか考えてると、ウサギ耳...違った、ジョンさんが私に聞いてきた。
「君の名は?」
「私はアリスよ」
相手が名乗ったんならちゃんと応えるべきよね。
大丈夫!私は礼儀正しい女の子なのよ。
それにしても、ここにきて初めて名乗ったんじゃない?
「さて、アリス君」
「アリス君?」
いろはにほへと ちりぬる...あ~面倒ね!
いろはさんが私に湯飲みを渡しながら聞いてきた。
てか、普通は「アリスちゃん」でしょ?なんで「アリス君」なのよ!
「君がここに来たという事は、君は我々の同志だという事だ!歓迎するぞ!『窮鼠猫を嚙む』だな」
どゆこと?『窮鼠猫を嚙む』って、こういう時には使わないでしょ?
いや、ツッコむと負ける気がするのでここはスルーよ。
その前に...
「なんでそれだけで『同志』になるんです?私は聞きたい事があるから来ただけです!」
「なるほど、どうやら間違いないようだな!ここを目標にして来たと言っているのだから」
「ここを目標にしてきたのは間違いないですけど、目的の為に来ただけです!」
「それなら同志だな」
「なんでそうなるのよ...ちゃんと人の話聞いて?」
どうしてこのゲームの人たちは人の話を聞いてくれないんだろ?
まぁ、他のゲームでも街の人は大体人の話を聞いてくれないんだけど...
「お茶は良いものよね?」
と、ジョンさんが話しかけてきた。
話を変えるのに良い感じなので、乗っかる事にしましょう。
これはアレね。『渡りに船』ってやつね。
「え?あ、はい。そうですね」
「気持ちは『紅茶色』って感じになるわよね~」
「(VRだから実際に飲めないけど)これって、見た目から普通のお茶ですよね?普通は『茶色』になるんじゃ?」
「ところで同志よ、目的は何だったのかな?」
また話が変わった。
てか、『アリス君』が「同志」に変わった。
ものすごく嫌だけど、ここをツッコむと話が進まないのでここもスルーしましょう。
「えっと、元の場所に戻りたいのよ」
「ふむ、『大山鳴動して鼠一匹』だな」
「...なにそれ?」
聞いた記憶だけはあるけど、意味はなんだったかな?
どの漫画だったかな~...パパのコレクションのギャグマンガにあった気が...
「『玉虫色』って事よ~」
と、考えていたらジョンさんが教えてくれた。
けど、当然全く分からない。
「よけいにイミフなんだけど?」
「アリスちゃんは『群青色』ね~」
「いわゆる『自給自足』だな」
「それ、絶対適当に言ってるでしょ?」
二人の説明は一切分からない。
これ、どうしたら良いの?
「それはともかく、お茶が無くなったでしょ?もっとお飲みなさいな」
「あ~お構いなく」
ここはVRなので飲めないし、減らないわよ!
「ダメよ~、好意はちゃんと受けないと『薄桃色』よ~」
「色から想像できるのは全く違う方向になるんですけど?」
「ふむ、『安物買いの銭失い』になるかも知れぬぞ?」
「微妙に合ってそうだけど、使い方間違ってますよ!」
と、思わずツッコむんだけど、これじゃあ『糠に釘』ね...
いや、待って?私、精神汚染されてる?
「おっと、そろそろ席替えの時間だな」
「あら?本当ね」
二人はそういうと、懐から何かを取り出し、ちゃぶ台の上に転がしたの。
で、それを見ると...サイコロだった...んだけど、普通の6面のサイコロじゃないの...もっと多い奴だった。
「あの~...それは?」
「なぬ?おぬしはこれを知らぬのか?これは『賽』というものだ」
賽ってサイコロの事ってのは知ってます!
「知っていますよ!じゃなくて、いっぱい面がありますよね?」
「いっぱい面がある?そんな事はなかろう。席替えの為の賽は昔から20面と決まっておろう?『諸行無常』ではないか!」
ごめん...ツッコミどころが分かんない。
けど、話を進めるなら『20面サイコロ』よね?
「私、20面のサイコロを見たことがなくって...」
「そうなのか?賽は他にも種類があるぞ?」
と、また懐を探っている。
着物の懐って、色々入っているのね。
「どのちゃぶ台にするかを決める賽、どの湯飲みにするかを決める賽、どの着物にするかを決める賽、どのお茶にするかを決める賽、どの座布団にするかを決める賽、そして、席を決める賽だ」
と、順番にサイコロを置いていく。
順番に、4面、6面、8面、10面、12面、20面。
「へ~...サイコロって、いっぱい種類があるんですね~」
本当に6面のものしか知らなかったので、ちょっとびっくり。
今度パパに教えてあげよう。
「まぁ!アリスちゃんは『葡萄鼠色』な事を言うのね?」
「そんな色あるんですか?」
「当然!この色は赤みがかった鈍い紫色で、『倫理・スピード・冒険心』っていう意味があるのよ~」
言ってることは全部信じられないんだけど!
「珍しいなら持っていくがいい。同志なのだから遠慮は不要だ」
いろはさんがそう言った瞬間、アイテム欄に6つのサイコロが登録された。
これはこれでイベント達成なのかも?
「ありがとうございます。だけど、いいんですか?」
なんとなくだけど、こういうサイコロは貴重なんじゃないかと思うんだけど?
「気にすることはない。まだ20セットはあるんでな。『能ある鷹は爪を隠す』だな!」
と、ちゃぶ台の上に無数のサイコロが転がる。
それも色んな色があるので、見た目だけはとても綺麗なんだけど...
なんでそんなに持ってるのよ!!
あと、『備えあれば患いなし』よ!
「では移動だな」
そんな事を考えていたら、二人は20面のサイコロを振って、出た目を確認して席を立った。
てか、移動ってどこに行くの?
「私は18だから右に一つね」
「吾輩は7だから右に一つだな」
二人はそれぞれ右に一つずれて座る。
隣に座られる事は無かったので、とても安心した。
隣に来たら、私も席を移動しようと考えていたのよね。
が、18と7で出た目が違うのに、右に一つってどういう事?
しかも、偶数と奇数だから共通点もない。
7は素数だから18との関連性も皆無。
...ダメだ...考えるのを辞めよう...
言い忘れたけど、このちゃぶ台の周りには十枚の座布団が置いてあるのよね。
座布団が沢山ある意味は分かったけど、やっぱり全然イミフ。
色々疲れたので、景色を見ようと思って、一番目立つ小屋を見てみた。
そうしたら気が付いちゃった...その壁に掛けられた、不釣り合いなほど大きな、有名な『大きなのっぽの古時計』を...
針はきっかり六時を指したまま、微動だにしない。振り子は動いているのにね。
「そういえば...ねぇ、あの時計...止まってません?」
ちょっと気になって私のアバターの左手に仕込まれた腕時計を見てみる。
パパが設定してくれた有名なポケットに入る犬のようなモンスターの腕時計は「14:09」を表示していた。
ゲームを開始してから約一時間...まあ、そんなものよね。
「止まっている? 貴殿、それは『色即是空』というものだぞ」
いろはさんが、湯呑みを置かずに私を凝視した。
湯飲みを傾け、「ズズー」というお茶をすする効果音と共に音声が聞こえるのはVRならではの風景よね。
てか、『貴殿』ってなに?『色即是空』ってなに?
「いやいやいや...秒針すら動いてないじゃん」
もう、気を遣うのは止めよう。それどころじゃないわ。
「あら~、アリスちゃん。それは『鳶色』な思い込みよ~」
ジョンさんが、ウサ耳をピコピコさせながら口を挟む。
あ、あれって動くんだ。
今知った。
「ここでは六時こそが『純白』なの。それ以外の時間は、存在しないのよね~」
「存在しないって...じゃあ、さっきの『席替えの時間』って何ですか?」
「ふむ、それは『温故知新』によるからなのだよ」
意味は忘れたけど合ってそうな気がする。
けど、説明にはなってないわよ!
「いいかい? 常に六時であるからこそ、我々は『一期一会』にお茶を楽しめるのだ」
「そうよ~、時間は『山吹色』に固定されているのが一番贅沢なの~」
言いたい事は色々あるけど、一番大きな問題にツッコミを入れてみる。
「...つまり、意図的に六時にしていると?」
二人は一瞬お互いを見合った。
いわゆる「視線で会話する」ってやつね。
そして、ゆっくり私を見て、にんまりと笑い、右手の拳を縦にして私に突き出したかと思うと、親指を立てた。
二人が同時に口を開く。
「「Yes, that's right.」」
待って!
いや、もう待たなくていいや...
てか、私が待てない!
なんで、ここに来てネイティブ発音の英語なのよ~!!
だめだ...小さい時からパパと一緒に笑点や新喜劇を見てたからツッコミが止められない...
ツッコミって、ここまで消費するのね...これで痩せれないかしら...
ともかく、もうこれ以上は自分を保てないと思ったので、ここを離れよう。
「お茶、ごちそうさまでした」
「おや?もう旅立つのかね?」
このゲームはそんなに大げさなものではないと思うんだけど?
「貴殿の行く先に『七転八起』あれ!」
意味は合ってるけど、本当は『七転八倒』って言いたいんじゃないかと思ってしまうわね。
「あら~『青色』ね~」
これも意味はなんとなく通じるけど、『黄色』とかと間違えてそうな気がする。
ともかく、これで最後なので、念のため、一応、保険だと思って聞いてみた。
「ところで、私はどっちに行けば良いかしら?」
二人は顔を見合わせることなく真面目な顔をして、示し合わせたかのような動作で人差し指を真上に向ける。
...ねぇ...これってどう判断したらいいの?
聞いた私が悪かった事を自覚しながら、二人に背を向けて進みだした。
ゲームが終わったら体重計に乗って見よう。
そういや、二人を名前で呼ばなかったなぁ~と、漠然と思い出していた...
振り返りもせずにまっすぐ進むと、やっと街が見えてきた。
なんとなくホッとして、大通りにでた所で左に曲がってみた。
曲がってすぐの左側に見た事のあるものが見えたので、そちらを向いてみるんだけど、理解が追いつかない...。
ここは街中なので、目の前にはコンクリートの壁。
それはビル壁で、そのビルの外側には窓やクーラーの外の奴が見える(名前を忘れた)。
で、入口が一つだけ。
ドアには「ようこそ」と書かれた看板(?)がデカデカと張り付いており、周りにはご丁寧にLEDライトらしきもので電飾されている。
え~...マジで最初に戻ったの?
さっきまでここを目指していたのは事実なんだけど...
ちょっとあっさり見つかりすぎて拍子抜け。
てか、さっきまでの苦労は何だったの?
でも、ここに戻るって事は、このゲームの入り口はやっぱりここって事よね?
だからこその「ようこそ」の看板だと思うし...
仕方ない...もうゲームを辞めても良いとは思うけど、なんとなく負けた気がするので、もう少し行けるところまで行ってみよう。
どうせ、無料のゲームだし。
手元に残っていた認証カードをかざし、中に入る。
そうすると、やっぱりテーブルの上にさらなる認証カードがあるので、まずは手に入れる。
もう、テーブルには「飲め」と付箋の付いた瓶はないので、死神博士の所から持ってきた青いキャンディーを口に含む。
『ぴろりろりん』
思った通り、アバターが小さくなって、今回は小さなドアにちょうど良い大きさになった。
やっとこれで前に進めるのね...
めっちゃ長かったわ~...
まぁいいわ。とにかく認証カードをかざし、鍵が開いたので進んでみようと思う。
てか、長い廊下ね...
結構長いわよ?
白いお兄さんはどこのメンテナンスをしていたの?
途中にドアもないので、まっすぐ進むしかない廊下を、私はただ進んでいくと、突き当りに来た。
目の前にドアがあって、今度は認証しなくても良いみたい。
そっとドアを開けて出てみる。
...森の中でした...
え?なんで?戻ってきちゃったの?
流石に嫌気がさしていたので、戻ろうと思って振り返ってドアを開けようとしたけど開かない...
え~...ちょっと強引なんじゃない?
仕方なく周りを見渡すと、すぐ近くに開けた場所があるみたい。
これ...行くしかないわよね?
「攻略法はない」というゲームだったのを思い出したわ...
とにかく進むしかなさそうなので、進んでみる事にした。




