お嬢様の望み(5)
「わあああ、美味しかったね……私は満足じゃ……」
「ああ、真夏の鍋もいいもんだな……」
「ふふっ、楽しい食事だったわ」
俺たち3人は真夏のキムチ鍋を堪能した。雑炊まで食ったし。さらに如月と実花が――。
『貴方は、わたくしたちのことは気にしないでお酒を飲みなさいな』
『そうそう! 私たちはその分、デザートを食べるから!』
とのことだったので、多少気は引けたが、ありがたく酒を飲ませてもらっている。
「昼間っから飲む酒は最高にうまいな……」
鍋も食べ終わり、なんというかまったりとしている。まあ、昼のピーク時も過ぎたてお客さんも減って来たので、少しぐらいゆっくりしてもいいだろう。
酒がうめぇ……もうちょっと飲みたい気分だ。
「ねぇねぇ、のぞみんはどのデザート食べる?」
「そうね……あまり食べると太りそうで怖いわね」
JK2人は仲良くデザートメニューを見ている。それで太ることを気にしているのか、如月はチラチラと俺のことを見てくる。
前に娘たちとデザートバイキングに行った時に未来も同じようなことを気にしてたな。
(やっぱり女の子は気になるんだな……)
俺は元社畜。学習する男だ。ここで余計なことを言うといいことがないということはわかっている。具体的に言うと俺までダイエットで走らされる……。
男は黙って酒を飲むに限る。
「どうしようかしら……? まあ、せっかくだし実花さんと同じものをお願いするわ」
「うん! お姉さん! 注文いいですか!?」
「はい! ご注文をお伺いします!」
「デビルズデーモンルシフェルパフェを二つ下さい! パパはハイボールでいい?」
「……………あ、ああ」
「……………」
何? その悪魔に魂を売るようなパフェの名は……いや、それはパフェなのか? 実花の悪ふざけではないのか……?
と、思ったが……お姉さんは普通に実花の注文を受けて厨房に引っ込んでいった。
「…………フレアにダイエットメニューを作ってもらうわ」
「頑張れ……なんか家の娘がすみません……」
「えええ、なんか私が悪者みたいじゃん! 私はのぞみんと子ブタさんになろうとしただけなのに。ぶぅぅ」
悪者じゃん。
「いいわよ。フレアはトレーニングメニューを作るのが大好きだから。あの子の笑顔が頭に浮かぶわ」
如月は苦笑いをするが、その笑顔にはどこかあたたかさがある。「もう、フレアは可愛いんだから」みたいな心の声が聞こえてきそうだ。
2人の関係は見ていて気持ちがいいな。信頼関係がある。
(ちょっと、2人の話を聞いてみたいな……)
「フレアさんと出会って10年って言ってたけど、どこで出会ったんだ?」
「戦場よ? まあ、厳密に言えば数日前まで戦場だった場所ね。先代の当主の仕事の関係ついて行ったのよ。当時6歳だったかしら?」
「…………」
「…………ぱ、パパ?」
めっちゃ話が重そう。
隣にいる娘から「お前、余計なこと聞いてるんじゃねぇぞ? 何を地雷を踏んでるんだボケ」っていうプレッシャーを感じる。
「ああ、気にしなくていいわよ?」
「だ、大丈夫……? なんならパパが服脱ぐよ?」
やめろ……。
「それは魅力的な提案ね……」
やめろ……真剣に悩むな。
「おほん……別にトラウマになってるわけではないから。むしろ……あそこでフレアに出会えてよかったわ……会わなかったらわたくしは『如月家の思想』に染まっていたでしょうね。ふふっ、今よりも冷徹な人間になっていたかもしれないわね」
「あはは、のぞみんとフレアちゃんって本当にいい関係だね!」
「ああ、そうだな……」
決して軽い内容ではない気がするが……如月は明るく語る。短い言葉だったが、如月とフレアさんとの絆を感じた。
言ってしまえば関係ない俺だが……何故かその話を聞いて嬉しく感じた
お礼が遅くなってしまいましたが……先日誤字報告して頂い方、
まことにありがとうございます。
いつも助かりますmm




