お嬢様の望み(1)
◇◇◇
未来がバイトに出かけて1時間後――。
そのあとすぐに如月が家にやってきて一緒にゲームをしている。
……俺が何でまた如月と遊んでいるかは謎だ。
実花いわく「サプライズ!! 特別ゲストふうううううう!」とのことだが……だ、大丈夫か? 俺、毎週如月、女子高生と遊んでいるんだけど……。
ま、まあ、でも実花とは約束していたらしいから、俺は娘の遊びに来た同級生と親交を深めているだけだ。
そ、そういうことをしておこう。
「…………ちょっといいかしら? 貴方と実花さんに相談があるわ」
俺が自分への言い訳を完了させていると、如月が持っていたコントローラーを置いて、俺と実花の方を見た。
ちなみに如月は我が家の座布団にちょこんと正座をしている。俺と実花はだらしなく寝っ転がっているが……まったく、上品さも気品もない駄目親子だ。
だけど……実花のやつ、短いスカートを履いてるのに不思議と下着は見えないんだよな……これが絶対領域というやつか。
「わたくし……わりと真面目な話をしようとしているのだけど……貴方は何で娘のスカートを凝視しているのかしら?」
「……いや、ものぐさに見えて結構気を使ってるんだと思ってな」
「もうっ、パパはわかってないなぁー。こういうのは極たまに見せるから価値があるんだよ? 30分のアニメで何回もパンチラがあったらうんざりするでしょ? それにパパなら大歓迎だけど、他の男に下着を見せるなら戦争をするよ……相手が蒸発するまで」
「普通に恐い……。まあ、そういうのに気を遣うのはいいことだと思うぞ。お前って案外貞操概念はしっかりしてるんだな。変な思想が混じってて恐いけど……」
「恐いって2回も言った! それなら今すぐ服を脱いでパパにだけは見せてあげるよ! 男の子に見せるのはパパだけ――」
実花が憤慨して立ち上がり、スカートをたくし上げようと――。
「おほん……大事な話なのだけいいかしら?」
「ご、ごめん……」
如月の咳払いに実花はびくっと肩を震わせて、素直にその場で正座をする。如月のやつ、お嬢様特有の威圧感があるからな……それにビビったか。
まったく情けない奴だ。雰囲気にのまれやがって、こういう時は堂々としてればいいんだ。ビビる必要なんかない。
「あれ? パパも正座するの?」
「…………」
これはビビったわけでは断じてない。ただ、周りと合わせただけだ。社畜とは空気を感じるだけでその場の状況に適応できる生物だからな。
「それで? 話ってなんだ?」
「今度フレアにプレゼント送りたくて……あと数日であの子が私の元に来て10年になるので……」
歯切れ悪く言う如月。なんか照れているような雰囲気を感じる。
「おっ、いいじゃねぇか。フレアさん喜ぶと思うぞ?」
「うんうん! パパの言う通りだよ! フレアちゃん号泣しちゃうかも!」
「そ、そうかしら……それなら嬉しいのだけど……でも、何をプレゼントしたらいいかわからなくて……こういう時いつもフレアが相談に乗ってくれていたから……はぁ、わたくしって駄目ね」
落ち込むように窓の外を見る如月。
俺はその妙に悩んでいるような姿を見て思わず口が動く。
「気にするなって。わかんないことを誰かに聞くことは大事だ。それができるできないで、社畜としてのランクが変わってくるからな。こうして俺らに相談している時点でお前は立派な社畜だ」
「…………貴方、ものすごくわかりづらいのだけど……私の心象を察して慰めてくれてるの?」
「パパぁ……その社畜理論はパパにしかわかんないよぉー」
目を丸くして驚く如月と、ジト目で見てくる実花。
お前らうっせえ……なんか照れるじゃねぇか。
「とにかく、俺らもフレアさんには世話になってるからな。一緒に考える」
「…………ふふっ、ありがとう」
嬉しそうにほほ笑む如月。その純粋な笑顔を見ると……さらに照れくさくなり、同時にその望みをを叶えてやりたいと思った。




