夢のある休日
同時刻ーー。
夢野明菜はお気に入りのぬいぐるみを抱きながら、家のベッドに腰掛けていた。
「…………」
ぼぉーっと天井を見る。すると昨日、隣の部屋から聞こえてきた義孝の言葉が頭に思い浮かんでーー。
『それに明菜とはしないんじゃねぇ! できねぇんだよ!! 自由にさせてくれるんなら土下座するわ!!』
「…………!!!」
顔どころか耳まで真っ赤になる。ぬいぐるみを抱きしめる力がぎゅうっと強くなる。
「うぅぅ、あ、あんなすごいこと言われるなんてぇ……」
明菜は深く息を吐く。顔はにやけて、嬉しさを隠すことができない。
昨日は自分でもうまく事態を飲み込めなかったが、一晩経って冷静さを取り戻したら、嬉しさが込み上げてきた。
「き、昨日何食わない顔で一緒に飲み会をした自分を褒めてあげたいですぅ……うぅ、た、多分ばれてないですよね……わざわざ仕事だって言うアリバイまで作ったんだから……」
明菜は義孝の言葉を聞いた後にすぐに家をこっそり出た。あの言葉を聞いたと知られたら、どう反応したらいいかわからなかったのだ……。
「で、でも、義孝さんに……わ、わたしと、そ、その……したいってことだよね……うぅ」
明菜は妄想が膨らみ止まらなかった。
ゴロンと寝転がりぬいぐるみを抱きしめながら、身悶える。
「う、うん、わたしたちいい大人なんだから、も、もし、お付き合いしたら、そういうことも普通にするわけでして……で、でも、義孝さんには高校生のお子さんがいるわけで、そういうデリケートなことは気を使わないと……実花ちゃんと未来ちゃんのことは大切にしたいし……」
と、まだまだ妄想が止まらなそうだった。
その時ーー。
ピピピピピ
「あっ……」
スマホのチャット着信が鳴る。明菜はそこで我にかえり、ハッとして近くに置いていたスマホを手に取って、画面を見る。
チャットの相手は由衣で、内容はーー。
『お疲れ様です。実は麻依さんに絆をとられてしまって(´;Д;`) よかったら、お茶と買い物に行きませんか?』
メールの文面を見て思わず笑みがこぼれる。
明菜はひと月に1度ぐらい由衣から、このようなメールを貰うことがある。
三沢が由衣に気を使っていて、由衣も冗談っぽく文句を言ってはいるが、そのことをわかっているのでどこか嬉しそうなのが、見ていて気持ちよかった。
「ふふっ、ふふっ見た目は正反対だけど、仲のいい姉妹みたいだなぁー」
ちょっとほっこりした気分になって、明菜は手早くチャットを返した。
立ち上がり外に出る準備をするために洗面台に向かう。
(こ、このままだと妄想でお休みが終わっちゃうところだったなぁ〜わたしって馬鹿だなぁ)
自傷的なことを考えつつも気持ちは軽い。由衣が自分に遊びの約束をしてくれたのが嬉しいのだ。
「さて、何か買うものあったかな……あっ」
その時、思い出したことがあり、洗面台の鏡に写る明菜の顔がみるみるうちにまた赤くなっていく。
頭には昨日義孝たちとゲームをやった時の光景が思い浮かんでいた。
「し、下着買っちゃおうかな……義孝さん、薄いピンクが好きって……も、もうわたしの馬鹿! そんなこと考えてないで、さっさと準備しないと……」
明菜は浮かんだ考えを打ち消すように頭を振り、出かける準備をしたのだった




