お嬢様が休日に遊びに来た(9)
午後4時過ぎ――。
未来のバイト先の喫茶店を出た俺たちはフレアさんが運転する車に乗り、俺のマンション前まで帰ってきた。
「ねぇ……」
如月が階段を上りながら、ちょっと申し訳なさそうに口を開く。
「未来さんに気を遣わせてしまったかしら……?」
「いや、本人がやりたくて、やってたからいいんじゃないか?」
あれから俺と如月は未来の働く喫茶店でまったりした時間を過ごした。
……まあ、JKと2人お茶してるとかある意味デンジャラスな状況だったんだけど。
警察に職質を受けたら「娘の友達と遊んでるんですよ~」としか言えん。
うん。残念ながら俺が警察でも楽勝で俺をしょっ引く。
さらにはそのプレッシャーと同じぐらい心を蝕んでいたのが、愛娘の態度だ。
JKと楽しくお喋りをしている父親があまりにも気持ち悪かったのか……視線が厳しいかった。だけどそのわりには……世話をやいてくれた。
『お父さん、如月さん、これはお店自慢のチーズケーキだよ。ラーメンを食べた後だということなので、半分ずつ持ってきました。もちろん私の奢りです。コーヒーのお替りも言ってね。あ、如月さんはチョコ好きだったよね。お勧めのチョコを私が買って――』
『い、いや、金は俺が払うって』
『わ、わたしくしも自分で……』
『お父さん、如月さん、私はこんな時のために働いています』
と、真顔で言われてしまい、俺と如月は何も言えなくなってしまった……。
未来は店内にいた時間、俺たちのこと甘やかしまくりだった。
いや、嬉しんだが……お父さんとしては心配だ。将来悪徳商法とかに引っかからないだろうか……。
俺は未来にクソ高い壺を買わせる自信があるぞ。絶対そんなことしないけど……。
「……未来さんって優しいわよね……今日のこともなんだかんだ言って許してくれたし……チャットグループでも……」
「ん? チャットグループって、例の女子連中が集まった『俺をいびる会』か?」
「…………貴方はどこまで卑屈なのよ」
いや、年頃の娘たちが作ってるチャットグループとかそんな感じだろ。俺のこと呼んでくれないし……。
いや、女だけのグループに呼ばれても困るんだけど……っと、毎回考えてしまうめんどくさい年頃の中年です。はい。
はぁ、家入るか。鍵はっと……。
「はいはい、落ち込まないの。貴方はもっと自信を持ちなさいな」
俺が家の前の廊下に到着して鍵を取り出そうとしていと、如月が俺が落ち込んでると思ったのか、優し気に声をかけてくる。
「そうは言ってもな……」
「そんなメンタルでは愛人は作れないわよ?」
「はぁ!? そんなメンタル必要ねぇよ!」
「はぁ、だから何度も言ってるでしょ? 如月の当主として愛人の1人も作らないでどうするの?」
「俺も何度も言ってるだろ! ありえねぇ!」
やべぇ……相変わらず如月は冗談を言っている感じはまったくない。これが4大名家ってやつの常識なのか?
竜胆家もやたら娘のことをお勧めしてくるし……。
「はぁ、貴方は浮気はしないタイプ? わたくしは絶対にしないけど、貴方はどんどんしてくれて構わないわよ? むしろしなさいな。あ、でも、妊娠させたら責任は取りなさいな。わたくしも可愛がるから」
「お前少し黙れや! ここはもう家の前なんだよ! もし誰かに聞かれたら――」
『あわわわわわわわわわ』
あ、あれ……お隣さんから可愛らしい声が聞こえてくるんだが……振り向くとそこには。
「こ、こんにちは……あ、あはは……」
如月の発言を聞いて顔を真っ赤にした明菜が立っていた。
明菜はスーパーの買い物袋を持っていてオロオロしている。
ん、これが正常な反応だよな……淡々と愛人とか言ってる如月がおかしい。
「あら、夢野さんごきげんよう」
そんな頭のおかしい如月さんは夢野さんにさっきの会話を聞かれても余裕しゃくしゃくなようだ。
「チャットでは話したけれど、騒がしくしてしまって申し訳ないです」
「う、ううん、大丈夫だよ? 今まで仕事で出かけていたので」
明菜出かけてたのか……ということは午前中の騒ぎは聞かれてないということだな。純粋によかった……。
「ねぇ、夢野さんもゲームに誘ってもいいかしら?」
俺が安堵していると、如月がそんなことを言ってきた。俺は全然かまわない。というか、おい、明菜ほどの美女とゲームするってすげぇリア充じゃねぇ……?
「ああ、明菜がよかったらだけど……」
と、平常心を装いながら答える……今なぜだか緊張してるんだけど……。
「で、でも……その……」
明菜はある程度事情を把握しているようで、遠慮がちに如月のことを見る。
「ふふふっ、わたくしは充分この人と2人で居れたから満足よ」
「……ゲームはあんまりやったことはないんですけど、してみたいです」
明菜が遠慮がちに頷く。
「決まりね。ふふふっ、面白くなりそうだわ」
如月が嬉しそうに笑う。
こいつナチュラルに明菜を誘いやがった。神か。如月がもし男だったら嫉妬の炎で焼き尽くしてる。
まあ、俺から今言えることは……よくやった如月!! これは男だったら誰でも嬉しい!!
こうして――3人でゲームをすることになった。




