お嬢様が休日に遊びに来た(7)
それから十数分後――。
俺と如月はラーメンを堪能して店を出た。店の外は相変わらず暑く、過ごしにくい気温だったが……如月はご機嫌だった。
「ふふっ、珍しい体験だったわ。はぁぁ……日本のラーメンは初めてだったのだけど、美味しいかったわ。濃い味付けかと思ったのだけど、スープは繊細で麺は適度に歯ごたえがあってそのスープと絶妙に絡み合って……あと、卵、あれは半熟でトロトロで……あれ作れないかしら」
と、会話が止まらない。
ここまで喜んでくれると、店に連れてきた側としては嬉しくなってくる。
「ああ、あそこは秘伝のたれに付け込んでいるらしいぞ」
「……なるほど、この店を買収して技術を得て……」
「はっ、買収!?」
えっ!? 俺のお気に入りのラーメン屋が買収されるの!?
「あっ……いえ、せっかく貴方が連れ来てくれた初めてのお店なのだから、そんなことをするのは無粋ね」
「あ、あはは……」
はしゃいでる姿は可愛いんだけど……ちょいちょい言うことがお嬢様で一般人の俺ではツッコミ切れない場合があるんだよな。
「それじゃあ、帰るか。ゲームの続きでもやるか?」
「ええ、ふふっいいわね。ねえ、次はパーティゲームをやってみたいのだけど……」
期待したような笑顔の如月はそこまで言って、何かを思いたったのか笑顔の質が変わる。
悪戯を思いついたみたいな顔だ。
「っと、その前に寄りたいところがあるのだけどいいかしら?」
「ああ、仕事に関係のないところだったらいいぞ。休日の俺は仕事のことを1ミリでも関係することをすると発狂するからな」
「…………貴方が取り乱すところは見てみたいわね」
「普通にこぇわ……。お前ドSなの……? お嬢様で幼児体系でドSとか一部のファンが喜びそうだな」
「えっ……貴方は罵られるのが好きなの……? それならわたくしも努力わするわよ?」
「変な勘繰りはやめろや……俺は真面目を絵にかいたような人間だぞ。そんな特殊な性癖はない」
ぶっちゃけ嫌いではない! 如月が罵ってくれるなら金を払ってもいい。とか、言うとドン引きされそうだから言わんけど……。
「そう……そうなの……はぁ」
「…………」
えっ? お、お前ガチで俺のこと罵りたいの? 昔由衣にも同じような反応をされたけど……お、俺はドMの才能があるのだろうか。
真のドMは自分が気持ちよくなるだけではなく、ドSの精神的な支柱になるというからな。
「…………」
……わ、話題を変えよう。少なともJKとする話ではない。
「えっと、それでどこに行くんだ?」
「ふふっ、内緒。言えば貴方、駄々こねそうだもの」
「……それで俺がつい行くわけないだろ」
「もっともね。でもついてきて欲しいわ。駄目かしら?」
「…………」
正直嫌な予感がするのだが……。
期待の眼差しを向けてくる如月のお願いは断りづらいし。それに如月は俺が本気で嫌がることはしないだろう。
お嬢様の特有の独特な価値感があるから、時々とんでもない行動をとることはあるけど……。
まあ……あれか、いざとなればそれとなく理由を付けて逃げればいいか。
「わかった……」
「ふふっ、ありがとう。とても嬉しいわ。さあついてきなさいな」
「はいはい。そのかわりとんでもないところだと、すぐに逃走するからな」
「大丈夫よ。貴方も喜ぶと思うわよ。みんな幸せになれて世界も救えるわ」
「…………俺は救世主にでもなるのかよ」
俺は呆れながらも如月の後について行く。
自分でもよくわからないが……どこかワクワクしていた。




