お嬢様が休日に遊びに来た(6)
俺たちはラーメン屋のテーブル席に腰かける。
すると、店員が水を持ってきたので、俺は2人分の食券を手渡す。
「らっしゃっせえ! ラーメン、チャーシュー、煮卵っすね! お好みはどうしまっすか! ひゃおおお!」
「え、お、お好み……?」
如月が俺のことを助けを求めるように視線を向けてくる。
この店員さんは前衛的だからな……悪い人じゃないんだけど。むしろ、いろいろサービスしてくれるいい人なんだぞ。
「ああ、脂、ニンニクと味濃さとかだな」
「えっと……その……」
如月は何かを考えているようだけど、何も思い浮かばないって感じだ。
初めてラーメン屋でよくわからないんだろう。
「俺が頼んでもいいか?」
「ええ、お願いするわ」
「よし、店員さん、俺は味は普通で脂多め、麺硬めで。ライスは少な目で。ニンニクは……なしで。それで彼女は……」
「か、彼女……ふーん……貴方に言われるのはいいものね」
おい、ぽつりとつぶやきながら照れるな。言葉の綾だ。俺まで照れる……。
「味薄目で、油少なめ、それから麺の硬めでライスは……どうする?」
「あ、貴方と同でお願いするわ」
「それじゃライス少な目でお願いします」
「かしこまりやしたあああ! ひゃおおお! いや~常連のお兄さん、激マブな彼女っすね! マジでうらやましいっす!」
「はっ? お、おい……!」
店員はやたらいい笑顔でそう言うと、颯爽と厨房に去っていく。
俺は店員の誇大妄想を訂正しようと呼び留めようとするが、その声を遮るように如月が声をかけてくる。
「そのままにしておきなさいな。大した問題ではないわ。数年後には現実になるのだし。まあ、貴方の性癖がロリコンになるかもしれないけど」
「いや、大問題だろ……」
俺そんな将来は知らん。しかもここ結構来るラーメン屋なんだけど……何でロリコン扱いされなきゃいけないんだよ……。
こ、今度来た時にでも否定しよう。
「それよりも、貴方すごいのね。わたくしのラーメンの味まですんなり決めて」
露骨に話題をそらしやがったな。
「はぁ、別に普通だよ。お前からするとフランス料理のコースを選択するようなもんだ」
「ふふっ、そうね。わたくしたち互いに欠けている部分を補っているのではないかしら? いい夫婦になれる気がするわ」
……いや、真逆すぎて価値観が違い過ぎるのではないだろうか。
具体的に言うと一食当たりの値段の桁が2つぐらい違いそうだ……。
「それにしてもラーメンって色々とサイドオーダーができるのね。わたくしに遠慮したみたいだけど、ガーリックもトッピングすればよかったのに」
「いや、さすがにな……」
おっさん、若い子にニンニク臭いとか思われたくない。
「ここのラーメン屋もいろいろトッピングできるけど、場所によっては野菜多めとか、背脂も頼めるぞ? 次郎系ってやつだけど」
あれはラーメンじゃなくて次郎系っていう別の食べ物な気がするけど……。
「へぇ、いろいろあるのね。そこに行ってみたいわ」
「ああ、次はそっちに連れてってやるよ」
「ふふっ、約束よ? わたくしとの約束を破ると如月の暗部が動くわよ?」
「……普通に恐い」
ここに来てるだけでも如月の暗部が仕事しそうなのに……。
まあ、でも――。
「ふふっ、ラーメンそろそろくるのかしら?」
これだけ楽しみししているなら、また来てもいいか、という気持ちになってくる。
そして俺たちは2人でラーメンを楽しんだ。




