お嬢様が休日に遊びに来た(5)
それから2時間の午後3時。
俺と如月は家に出て、家から歩いて10分ぐらいのところにある人気のラーメン店の前までやってきていた。
結局、如月にせがまれて来るのが遅くなってしまった……。
「……暑い、暑すぎる。何で世界はこんなにも灼熱なんだ」
「ふふっ、ラーメン楽しみだわ……」
俺たちは2人でまったく違う反応をしていた。
いや、この場合俺の反応のが正しい。
外に出ると7月の30度を越える蒸し暑さと、『ミーン! ミーン!』とうるさいセミの鳴き声が耳に届いた。
あまりの暑さにあれほど腹が減っていたのに食欲が一気に失せた……。
これでまだ7月というのだから、どんなギャグだよ……8月になったらマジでとけるんじゃねぇか?
そんなふうに暑さにダウンしているが……。
「早く入りましょう。ふふっ、何を食べようかしら?」
いや、ラーメンしかねぇよ……。
今日は如月に振り回されっぱなしだな……まあ、本人が楽しそうだし、俺も楽しくない訳ではないからいいんだけど……。
周りからはどう思われてるんだろうか……見た目から内面まで生粋のお嬢様だ。普通の冴えないおっさんである俺とはつり合いが取れていないと思うんだが……はぁ考えるだけ無駄か。
「暑いし、さっさと入るぞ?」
「ええ、楽しみだわ」
俺は如月を引き連れてラーメン屋に入る。ここはいわゆる家系と言われる横浜ラーメンの店で、豚骨醤油のスープに太麺で味が濃く、油ぎとぎとのラーメンと一緒に白飯をかっくらう店だ。まさに男飯。
…………ラーメン初心者、女子高生を連れてくるにはあっていな気もするが、ま、まあ、いいだろう。
(俺の背後から……視線を感じる気もするのだが……ふ、フレアさんかな? 俺、暗部に消されないかな……)
とか、考えながら俺は店内の扉を開ける。
冷房のきいて豚骨の匂いが香る店内はカウンター20席にテーブルせき10程の広さだ。ピーク時ならいつもならほぼ満席なのだが、今は時間が中途半端なためか、店内には2、3組のお客さんがいるだけだ。
これならゆっくりできそうだな。
『らっしゃませえええええええええ! ひゃおおお!!』
「きゃ!」
店に入ると、ラーメン屋の金髪兄ちゃんが、某世紀末漫画に出てくる雑魚キャラみたいな挨拶をしてくる。
それに怯えたような声を上げる如月。
「大丈夫だ。噛みつきはしない」
「え、ええ……」
そうは言うものの如月はまだ怯えているのか、俺のシャツを掴んで後をついてくる。ここはお化け屋敷じゃないんだが……。
まあ、あの挨拶は慣れないとびっくりするけどな……。
「この券売機で券を買うんだけど? 何食う? とは言ってもトッピングが選べるぐらいなんだけど……」
「そうね……わたくしはラーメンに疎いから、貴方のお勧めでお願いするわ」
そんなことを言いながら持っていたハンドバックから財布を取り出そうとする如月。えっ……待て待て!
「おい、女子高生に払わせる訳にはいかねぇって!」
「えっ……でも……」
いや、お前の方が10000倍稼いでるのはわかるんだけど、これはプライドの問題だ。なんでもない日に娘の同級生に奢ってもらう父親とか特殊だと思う……。
俺は自分の財布から5千円札を取り出すと、券売機に入れてチャーシューラーメンを2杯と煮卵を頼む。
如月って小食だから、頼み過ぎな感じはするが、まあ、最悪俺が食えばいいだろう。
「ほらっ、あそこの席に座ろうぜ」
「ふふっ、そうね。買ってくれてありがとう」
如月は嬉しそうに俺の言葉に頷く。機嫌よさそうに俺についてくる。
どうやらラーメン屋へのエスコートの初手は成功したようだった……。
如月の口に合えばいいけど……。
誤字修正して頂いた方ありがとうございます……
毎回すみません……




