お嬢様が休日に遊びに来た(4)
俺と如月がゲームを始めて数時間後――。
時刻は昼の1時に差し掛かろうとしていた。
そろそろ腹も減ってきて飯でも食べに行きたいんだけどな……。
だけど……。
「ふふっ、もう一戦よ。もう一戦しましょう。次はわたくしが接近戦をするから貴方が援護しなさいな」
「ああ、それを構わないんだけど……」
如月はどっぷりゲームにはまっていた。
今やっているのは社畜戦士とニート鬼たちを操作し、社会悪を討伐していくというアクションゲーム『社畜ニート』だ。協力プレーもでき、俺と如月は大型の悪『振り込めマン』の討伐をしようとしていた。
…………このゲーム頭おかしいんじゃねぇか?
まあ、でもこんなふざけたコンセプトなのにゲーム性はかなり面白い……巨大な敵を攻撃する爽快感に、ボスの攻撃をよける緊張感、さらには仲間との協力プレーをして、敵を倒した時の達成感。
(グラフィックもびっくりするぐらい綺麗だし、最近のゲームは進化してるんだな……実花が夢中になるのもわかるなぁ、普通に面白い)
「ふふっ、次は誰でプレイしようかしら? 前線なら根性社畜かしら……いえ、年金ニートで力で攻めた方が、ふふっ」
楽しんでいるのは俺だけだではなく、如月もいつもの落ち着いた空気は控えめで、歳相応にはしゃいでいる。
如月はお嬢様だからな。こういうゲームにふれるのは新鮮で面白いのかもしれない。このまま放っておけばいつまでもゲームをしていそうだ。
「なぁ、如月、これ終わったら飯を食おうぜ」
俺がそう言うと、如月は少し拗ねたような顔を見せる。
「え、まだいいじゃない? まだ、貴方とゲームをしていたわ。あと1時間でいいから……そ、そうしたら、フレアにゲームをしながらでも摘まめるものを用意させるわ。貴方サンドウィッチとか好きかしら……」
「あはは、お前どんだけゲームにハマってるんだよ」
普段見せない如月の様子は可愛らしく、微笑ましいのでついつい甘やかしたくなるが……ここで甘やかすと引きこもりになりそうな気がする。
いや、なんか大変な趣味を得てしまったような……。
「だめだ、俺はもうラーメンの気分だ。ラーメン以外は食いたくない」
「うぅ…………ん?」
恨みがましく俺のことを睨む如月だが、何かに気が付いたのか、急に真面目な表情になる。
ど、どうしたんだ? 幼児体系とはいえ美人が急に黙ると恐いんだが……。
「ここで食べるのではなく、どこかに行くのかしら? てっきり家で食べるのかと」
「あ、ああ、ラーメンを……」
「ラーメン……」
待て俺。
超絶お嬢様をラーメン屋に連れていくのか? それはまずくないか……? 下手したら社会的に殺されるんじゃないか?
如月家の暗部に――。
「い、いや、今のは冗談――」
「しょうがないわね。貴方がそこまで言うのならゲームを中断するのやぶさかではないわ。感謝しなさいな。日本のラーメン……一度食べてみたかったの」
「……………えっ? 一度? 食べたことないの?」
「ええ、日本のはね。中国のホテルでなら何度かあるのだけど……ふふっ、日本のラーメンは別物と聞いていたから、食べてみたかったの。フレアも普段は許してくれないけど、貴方と一緒なら折れるでしょう。ふふっ」
そして如月は不意に俺から視線を逸らすと、小さく口を開いて――。
「それに……貴方とランチ……これってデートかしら? ふふっ」
「ん? 今なんか言ったか? 聞こえなかった」
「いえ、貴方は気にしなくていいわ。ふふっ」
お嬢様はラーメンが食べられるのが嬉しいのかご機嫌だった。
たくっ、こっちは命の危機を感じてるのに……まあ、嬉しそうにしてるからいっか。
もう、ここまできたらどんなラーメン屋に行っても同じだな。家系か次郎系に行ってやろう……フレアさんに怒られないことを願って。




