お嬢様が休日に遊びに来た(3)
「それで何をしに来たんだよ……」
如月とよくわからない言い合いをした後、ようやく本題に入れそうだよ。
俺は自分の家で如月とテーブルを挟んで向かいあって座っていた。如月は上品に正座をしながら、興味深そうに部屋を見渡している。
「…………ここには何度か来たことがありますが、みんなでいるのと、貴方と2人でいるのでは、心持が全然違うわね」
「…………そういうことは口に出さないでくれ……別に何もするつもりはねぇから」
「ふふっ、そのこと答えに関しては物申したいところではありますけど、今日の目的からお話した方がいいわね」
すると、如月は悪戯っぽくワクワクしたような顔で、持ってきた家電量販店の紙袋を俺に差し出す。その袋はそこそこ大きく大型の実花が持っているゲーム機ぐらいは余裕で入りそうだった。
「これ、遅くなって申し訳ないのだけど、例の体育祭のリレーの『ご褒美』よ」
「えっ……ああ、そう言えばそういう話だったな……」
「ふふっ、あの時の貴方、とてもかっこよかったわね。ねぇ、あの時のお話をしない? ふふっ、どれだけしても飽きないわ」
「勘弁してくれ……」
俺は楽しそうにしている如月を前に、恥ずかしくなりつい不愛想な態度を取ってしまう。しかし、俺のそんな態度も如月にとっては見ていて飽きないのか、楽しそうな表情を崩さない。
「ふふっ、この話はあとでランチでもしながらしましょう。さあ、ちょっと開けてみてくれるかしら?」
「…………」
ランチ……えっ? 俺JKとランチに行くんですか……? お化け屋敷に入るよりも恐いんだけど……社会的に殺されそう的な意味で。
(まあ、これ以上ごねても話が進まないな)
俺はそう考えると如月から紙袋を受け取る。紙袋の重さは5キロほどありそうだった。
……あ、あまり高い物じゃなきゃいいんだけど。
「…………ん? これは」
紙袋を中を見るとそこには家庭用ゲーム機とソフトが数本入っていた。俺は学生時代はそこそこゲームをしていたが、社畜時代ではやる時間がなくなり、それからは殆ど触っていない。
だから……最近のゲームはよく知らないんだけど、そんな俺でも知っていレベル有名なゲーム機だ。CMとかバンバンしてるしな。
「一緒にやりましょう。そのために買って来たわ」
「えっ……? お前ってゲームとか好きなの?」
「いえ、殆どやったことはないわ」
「…………はい?」
話の流れがまったくわからない。俺がゲーム好きだと勘違いしているのか?
いや、そんな雰囲気でもない。
「貴方もあまりゲームに詳しくないことはわかっているわ」
「それなら何で……ゲーム機も高いだろうに……というか、家の押入れをあされば同じ物が出てくるかもしれない。実花のやつがかなりゲーム好きだし」
「ええ、もちろん知っています。実花さんはわたくしの親友であり、将来の娘ですから。でも実花さんの物を勝手に使うのも気が引けたので。将来の娘と喧嘩はしたくないですから」
「…………」
実花の場合その辺まったく気にしないと思うけど……というか将来の娘……いいや、つっこまない。
まあ、如月が俺の娘を嬉しそうに親友というのは……なんというか、気分が良かったりするが……。
「未来さんの趣味である読書やお料理はわたくしもそこそこ理解がありますが、実花さんの好きなゲーム関係は疎くて……理解しようと思いました」
こいつ友達想いだな……。
「でも、何で俺も一緒なんだ? それこそ実花と一緒にやればいいじゃん」
「これは一石八鳥の作戦よ」
すげぇ、お前得しまくりじゃねぇか……。
「わたくしは貴方と一緒に居られてゲームができる。さらにはあわよくばランチやお茶も一緒できる。それと同時に実花さんの趣味への理解を深めることができるわ。その他にもメリットが多くある」
「そ、そうか……」
俺と一緒に居られるのがメリットになるのか……? いや、結婚が目的なんだろうけど……本当に如月にどう思われてるかわからないな……はぁ、不思議な関係だ。
俺がそんなことを考えていると如月は悪戯っぽく笑うと――。
「そうそう、実花さんが『パパと一緒にゲームにするのが夢なんだぁ』と、言ってたわ」
「…………」
「わたくし同様、貴方もゲームに慣れておいた方がいいのではないかしら? サプライズで一緒にゲームをしたらあの子すごく喜ぶわよ?」
「…………ほら、早くやるぞ」
「ふふっ、了解だわ。貴方、可愛いわ」
うっせえ。まあ、俺も実花が楽しそうにやってるゲームには興味があったからな。
自分が楽しむためにな。
日頃の労働の疲れを癒すのに丁度いいだろう。うん。




