お嬢様が休日に遊びに来た(2)
如月が家に来て5分後――。
俺の精神力はもう尽きかけていた……。
「さて、遊びましょうか?」
「…………」
そんな俺とは対照的に、家の部屋で楽しそうに仁王立ちをする如月。
いや……約束を忘れていた俺が悪いんだけど、もう少し俺のことを甘やかしてほしい。
お前、俺が未来に「仕事をサボるのはよくないよ? 足が動くなら働ける。仕事に魂を捧げなさい」とクソ社畜根性論を振りかざして、説得をどれだけ頑張っていたか見てただろ……?
あいつ出ていく時……。
『私はお父さんを信じます……信じます。信じます。信じます。信じます……娘の同級生に手を出さないことを信じます。本当に信じます……信じます』
とか色彩のない瞳で見つめてきたな……我が娘ながら普通に恐かったんだぞ?。
まあ……俺が如月の立場なら「知らんがな」って言うけど。
「あら、何か言いたいことがありそうね? 貴方だから特別に聞いてあげるわ」
それでも、俺の愚痴を聞いてくれる如月ちゃんはマジで天使だと思う。
「…………1つだけ言わせて貰えるとしたら、せめて5分遅く来てほしかった」
そうすれば未来と鉢合わせになることもなかっただろう。
そう考え、恨みがましく如月を見るが……如月は肩をすくめながら少し申し訳なさそうに笑う。
「さっきも言ったけど、貴方が覚えてない可能性があるのを承知で来たので、申し訳ないとは思っているわ。ごめんなさい」
「いや謝る必要はないんだけどな……一番悪いの俺っぽいし」
酔っていたとは言え、約束をほったらかしにしそうになったんだし。
「ふふっ、貴方はやっぱり優しいわね。女のわがままに付き合ってくれるんだもの」
「……………女ってガキが生意気言うんじゃねぇよ」
「ふふっ、そうね」
ドストレートに褒めるのは勘弁してほしい……恥ずかしい。ここは少し反撃したい。こいつも恥ずかしがらせたい……。
だが、軽い気持ちでジョークをJKに言うとセクハラで捕まる時代だ。言葉は慎重に選ばなくてはならない……。
「それで遊びに来たって何をするんだ? 大人の遊びか? 俺は60分2万4千ぐらい払えばいいのか?」
うん。これは完全にアウトだ!! 勢いでしゃべる癖はマジで何とかした方がいい。
い、いや、ここで慌ててはいけない。ここは冷静さを欠いてはただのセクハラだ。もうセクハラだけど。
ここは余裕を持って、あくまで『冗談』ということにしないと……それに如月がいつもの冷静さでおれのセクハラ発言を流してくれたら……ワンチャン!
だがーー。
「えっ……貴方、私としたいの? 別にわたくしは構わないわよ? 早いか遅いかの違いなのだし……でも」
「……………えっ?」
如月は赤くなるわけでもなく、恥ずかしがるわけでもなく、冷静な口調でキョトンした表情をしながら俺のことを見つめてくる。
そして何かを思いついて、遠慮勝ちに口を開く。
「貴方って……ロリコンなのかしら?」
「はああ!? 何でそうなる!?」
「いえ、夢野さんと致さないで、今のわたくしと致すのは……そっち系の趣味があるとしか思えないのだけど?」
「よくわからねぇ理論武装するんじゃねぇよ!! それっぽく聞こえるじゃねぇか!! それに明菜とはしないんじゃねぇ! できねぇんだよ!! 自由にさせてくれるんなら土下座するわ!! あとお前も充分美少女だからなっ!」
「えっ? 夢野さんとするのはいいのではないかしら? 夢野さんだったらわたくしもお勧めするわよ? わたくしと結婚したら週2、3回はわたくしと娘たちの元へ帰って来ればいいので…………あと、美少女って貴方に言われると嬉しいわ」
もう会話の話題がカオス!! それに会話が噛み合ってない気!
くっ、何でお前は日常会話をするみたいに余裕たっぷりなの!? おっさんがJKとするってやばいことだからな!
それと明菜はお勧めされるまでもなくいい女だわ! って……今の会話明菜に聞かれてないよな? か、壁薄いらしいんだけど……だ、大丈夫、土曜日は事務所に行くことが多いって言ってたし……。
い、いや、今は明菜のことを考えてる場合じゃない――。
「ねぇ、貴方、わたくし初めては自分の部屋がいいのだけど、いいかしら? 今からフレアに車をまわさせるわ。ふふっ、大丈夫よ。フレアは泣きながら喜ぶはずよ」
如月がほほ笑みながらそんなことを言い、スマホを取り出して電話をかけようとする。
「…………俺が悪かったから許してくれ!!!!」
もう素直に謝った。完膚なきまでに俺が悪かったと反省してる。
はぁ……今何の話をしてるんだっけ……?




