偵察ミッション(7)
それから俺は北条とアヤメに連れられて屋上に連れてこられた。ちなみにこの校舎は3階建てだ。
屋上にはネットが張り巡らされていて、安全性は問題ない。
さらにこの校舎は大きいこともあり、なかなかの広さでバスケットコートとテニスコートがいくつかある。前、雑談で実花に聞いた話ではいつもは昼休みの時間だけ生徒に解放されているらしい。
だが今は体育祭中のため周りには誰もおらず、下にある校庭からは体育祭の歓声が聞こえてくる。
「ジョン君、こっちよ!」
「はいはい」
俺は北条のあとについていく。すると校舎の入り口にある建物の影に案内される。ここは風邪通りもよくて過ごしやすい環境だ。
「ここは未来たちがいる下の観客席から見上げようとしても死角だから、下にいる人間には見つかりづらいわ」
「お前らここに来て間もないんだろ? よくこんな場所知ってたな。というか昼休み以外の生徒の立ち入りは禁止なんじゃないのか?」
俺が感心しながらそう言うと、北条は得意げに鼻をならして頷く。
「ふっ、私は特別なのよ! 学校内での『仕事』で活用できそうな場所を探していたら、『協力者』にここを紹介されたわ。『学校的』に『世間的』に騒ぎになる仕事だから特別に鍵も貰ったのよ!」
「…………」
ん……? 仕事とか、世間的に騒ぎとか……なんか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだが……うん、聞かなかったことにしよう。
と……いつもの俺ならそう考えるが……可愛い妹が関わってるからな……。
ああ……俺はいつからこんな熱血になったのだろうか……。
「おい、仕事ってのはなんだ? アヤメを危険な目に合わせてるんじゃないだろうな?」
「あんたって家族がからむと本当に心配性ね……普段はやる気のないコアラみたいなのに」
「えへへ……お兄ちゃんは私のことが大好きでござる。えへへでござる」
呆れる北条と嬉しそうなアヤメ。
……なんというかむずがゆい。
「さっきも言ったでしょ? 法にふれることはさせてないっての。あと危険もない。精々失敗した時に日本の経済が傾くぐらいよ」
「はぁ!? 大事じゃねぇか!」
何でこいつ余裕しゃくしゃくなの!?
「うるさいわね。あんたと同じ物差しで測るんじゃないわよ。あんたからしたら大事かもしれないけど、北条からすればそのぐらいのリスクを背負うのは日常茶飯事よ」
「いや、それもそれで問題がある気がする……」
日常的に日本経済を傾けようとするんじゃねぇよ……。
「はぁ、何かあっても全部会社が責任を取るわ。それは雇用主として当然の義務だわ」
「それならいいんだが……」
その当然の義務を守っている会社は日本にどのぐらいあるのだろう……。とか考えてしまう俺は歪んでいるのだろうか……。
(まあ、いざとなったら竜胆の爺さんに泣きつこう)
俺は気持ちを切り替えて体育祭の様子を見る。
実花は校庭で競技中か……あれはパン食い競争か? 昼飯前にやってやれよ……あいつ昼飯めっちゃ食ってたのに……いや、社会の厳しさを教える意味であえてか? 深いぜ教育は……。
それと未来は……1人階段に座り、楽しそうに話しているクラスメートを遠巻きに見ている……なんか友達がいないやつみたいだが……大丈夫かあいつ……。
「……………」
そんなことを考えていると――。
ピピピピピピピピ。
「あれ、これお兄ちゃんのスマホじゃない? お仕事でござるか?」
「ん? メールか……? 今忙しのに……」
俺は悪態をつきながらスマホの画面を見ると……一気に血の気が引くような感覚に襲われた。それは――。
From由衣
『……店長、女子高生と楽しそうに観戦ですか……? 逢引ですか? デートですか? 不潔ですね……』
「…………」
俺は恐る恐る来賓用の観客席を見る……すると、100メートルほど先に大勢の観客の中に由衣や明菜らしき人物が見えた。距離が離れているのでその感情まではわからないが……このメールを見る限り、かなりお怒りなのだろう。
というか、あいつよく俺だってわかるんだよ……どれだけ俺のこと好きなんだよ……はぁ。
「ああ、ジョン君、いい忘れたけど。ここは生徒側の席からは死角だけど、来賓席からは私たちの姿が見えるわ」
「早く言えよ……」
俺はため息をついて弁明のメールを打つことにした。




