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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第4章『オトノカガヤクミライへ』
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偵察ミッション(2)

「あ、アヤメ? お前も未来実花の応援に来たのか……?」


「あ、ああ……えっと……あはは」


 俺の言葉を聞くとアヤメは笑ってごまかす。どうにも気まずい雰囲気が流れるが、この中で何故か自信満々な奴がいた。


 北条は胸を張り自慢げに口を開く。


「ふっ、ジョン君、驚いたようね! ふふふっ、グレイさんは私の切り札よ! もう自画自賛するほどの渾身の『人事採用』だわ」


「…………」


 やっべっ……普通に意味わかんない。グレイさんってアヤメのことだよな。


 これは『空気読め』ということなんだろうか……。はっ、社畜の必須スキルだからな。俺にかかれば造作もないことだ。


 アヤメの困ったような笑顔に、北条の言葉、答えは簡単だ。


「アヤメ、雇用主は考えた方がいいぞ? 俺は全てを理解した!」


「お、お兄ちゃん、この一瞬で悟ったでござるか!?」


 アヤメがキラキラした羨望の眼差しを向けてくる。ふっ、そんなに褒めるなって。

 てか……北条家はブラック会社か……。


「おい、人の妹に何社畜プレーをしてるんだよ! けっ! ブラック会社なんて全て滅べばいいんだよ! くそが! 人の大切な妹を食い物にしやがって!」


「わああ、お兄ちゃん。会社への恨みが半端ないでござる……それに大切とか……照れるでござる」


 何でお前がドン引きして、照れてるんだよ。自分のことだろうが。

 ちっ、これだから社畜素人は困る。自分がいかに劣悪な環境にいるか理解できてないんだからな。


「アヤメ、こいつに長時間の労働を強制されてるんだろ? くっ、まさか身内が葵ちゃんのような現代に生きるゾンビになるなんて……」


「あ、あはは……それは葵ちゃんに失礼でござるよ……」


「ちょっと、ジョン君! あんた失礼ね! 私は部下には優しいのよ。それに法にふれるようなことはしていないっての!」


 ブラック会社を経営してる奴はみんなそう言う。

 そんな考えを視線に乗せて北条を見るが、本人に悪びれた様子はない。


「ふっ、週休二日だし。残業は多少はあるけど、残業代は全額負担。さらに福利厚生も完璧でボーナスも年二回よ」


「…………でもな、口だけではなんとも言えるからな。書面と実在が違うことなんて人事では山ほどある。どうせあれだろ? アヤメが残業しても『勝手に残ってるだけだ』とか言うんだろ?」


「あんた意外と疑り深いわね……言葉に変な重みを感じる」


 今の状態だと最高の誉め言葉だ。

 会社に対してのトラウマが多すぎるから仕方ない。


「お、お兄ちゃん、働く環境に関しては文句ない……と、言うか、かなりの好待遇だし……休みはいっぱいだし。前もって言えば休んでもいいって言われてるし。給料三桁でござるし。それに私は断ってござるが、望むなら高級マンションも社宅として用意してくれるって……」


「北条、俺もお前の所で雇ってくれ」


「あんたさっきまでの罵倒は何だったのよ!? い、いやよ、竜胆の血を引いた人間を雇うなんて後が怖いっての!」


「いや、あまりの好条件につい……」


 ……得意の手のひらくるっくるが出てしまった。

 なんだその悪魔が提案してきそうな好条件は……。


「でも、そ、そんな好条件絶対に裏があるだろ? そうじゃなきゃこの世の理に逆らっていることになるぞ?」


「……ジョン君、あんたが今まで働いてきた会社は、よっぽど過酷な労働環境だったってのね……可哀そうな人……」


 憐みの視線を向けるんじゃねぇ。

 

「お兄ちゃんそれも……大丈夫。多少大変だけど……悪いことはさせられてないでござる」


「えっ……? まあアヤメの性格的に法にふれることは絶対にしないだろうけど……」


 こいつ正義の人だし。


「それならどうしてそんなにへこんでるんだよ……」


「お、お兄ちゃんに怒られないかなぁ……て、ござる……」


「ん……? どうしてだ?」


「えっ……『知らなかった』とはいえ、竜胆とライバル関係である北条に入ったからであって……」


 俺の驚いたような反応に、アヤメも驚いたような反応を見せた。


「…………」


 な、何だろう……どうにも会話がかみ合わない気がする……。俺、竜胆とか北条とか、お家事情はまったく気にしないんだが……。

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