実花に相談(2)
「パパに乙女心を弄ばれたああああああああああああ!!!!」
「学校内でとんでもねぇことを叫んでるんじゃねぇ!!!!!」
俺と実花は厨房に他に誰もいないのをいいことに叫びあっていた……。
建物の構造上、ここの音は外に漏れづらいので、誰かに聞かれる心配は少ないが……それにしても不用心なのは自覚している……。
弁当箱の洗い物を2人でしていて、実花に未来と北条のことを相談しようしたら……実花の目を潤ませていき……何故かこんなことになった……。
まあ、こいつが俺のことを好き過ぎるのはわかっていたことではあるので、さっき送ったメールは配慮が足らなかったし、変な勘違いをさせたのかもしれない。
だけどこれだけは言わせてくれ――。
「父親に愛の告白されると考えてる頭お花畑の奴がいるなんて想定に入ってねぇよ!」
「う、うるさい! す、好きな人にあんな風に呼び出されたら普通に勘違いするよ! これはパパが悪いだもん! 絶対にパパが悪いもん!」
「お、お前どれだけ俺のこと好きなんだよ!? 俺父親だぞ!? お前正気か!?」
「そんなの他の男の人が全員ピクルスだと思えるぐらいには好きだよ! 何ならこれからホテルにでも行きますか!?」
「大声で言うことじゃねぇ……!?」
(…………ま、まずい。俺への愛が重すぎる。いや、正直言えばここまで想ってくれることはめちゃくちゃ嬉しいんだが……俺父親だし……)
「み、実花、とりあえずここはお互い冷静になろう……このままだと泥沼だ……」
「むぅ……まあ、めんどくさい女になってパパに嫌われるのも嫌だし……むぅ……」
頬を膨らませながらジト目でこちらを見ている。いつものなんだかんだ言って実花は達観しているところがあるから、子供っぽい表情は可愛く見える。
「はぁ、これも未来ちゃんのためだ。できる姉は甘んじてわき役になろう……ちらっ……情報だけ提供する都合のいい女になろう……ちらっ……不憫でこの片想いを永遠に引きずる女になろう……ちら」
「…………」
訂正。
めんどくさいだけだ。チラチラこっち見るんじゃねぇ……。
「はぁ……お前は何が言いたいんだよ。はっきり言えはっきり。多少のお願いなら聞いてあげないこともない」
「私を甘やかして」
「…………」
我が娘ながらドストレート過ぎていっそ清々しいな……。真顔で言ってるんじゃねぇよ。まったく、誰に似たんだよ……?
「具体的な要求を求める……」
「パパ、リレーで未来ちゃんとゆいにゃんとのぞみんと約束してるんでしょ……? みんなも混ぜて? ナカマハズレイクナイ」
「は、はぁ……? 何でお前それを……未来との約束はともかく、なんで由衣と如月との約束を知ってるんだよ」
「スマホの『パパの仲間たち』っていうグループチャットで聞いた」
「…………そ、そんなのがあるのか?」
俺の仲間たちってなんだよ……俺は呼ばれてないんだが……い、いや、女だけのチャットグループに呼ばれても困るだけだからいいんだけど……。
……『あのオヤジキモイだけど!』とか、言われているのだろうか……。
「それで約束して欲しいの!」
「あれ……? お前らがリレーで勝ったらお前にもキスをするっていう、トチ狂ったおかしいことするんじゃなかったっけ?」
「パパ……歪んでるね。キスは家族の愛情表現だよ……?」
「そ、そう言われるとそうかもしれんが……ここ日本だし……」
「あっ、私は乳首にキスしてもらってもいい?」
「地面とキスさせてやろうか?」
「いやだなぁ……1割は冗談だよ」
「…………」
未来と似たようなこといいやがって……似た者姉妹かよ……。
「まあ、ともかくそれは未来ちゃんのお願いだから! パパにはもっと約束でがんじがらめになって貰わないと!」
自信満々に言うなや。
「はぁ……まあいいや話進まんし……それで俺にどうして欲しいんだよ?」
「うーん、教師チームが勝ったら、アヤメちゃんのお願いを聞いて欲しいかなぁー」
リレーは俺たち『食堂チーム』と『警備員チーム』、それと『生徒代表チーム』、『教師チーム』で競われるんだが……。
……何でこいつは教師チームを推すんだ? それに……。
「? えっ? 何でアヤメ……?」
「まあまあ、意味はそのうちわかるから」
ど、どういうこと……? なんでこいつは悪戯っぽく笑ってるの……? 嫌な予感しかしないんだが……。
「そうそう、警備員チームが勝ったら夢ちゃんのお願い聞いてあげてね? ふふっ、そうすればフェアだから!」
「…………」
こいつらは何と戦ってるんだろうか……おじさんついて行けないんだが……。
「それで未来ちゃんとなつきちのことで相談って?」
まあ、今は未来のことが優先だな。
リレーのことは数時間後の俺が頑張るだろう……。




