実花に相談(1)
それからみんなで昼食を楽しんだ。
会話は絶えることなく、明るい雰囲気がずっと続いた。
「はぁ……美味かったなぁ。明菜と未来は料理が上手だよな」
「お父さんに褒められて嬉しいです。今度はもっと喜んで貰えるようにマグロの解体ショーができる程度には上達します」
「わああ、パパ、それって面白そうじゃない!?」
「いや、そこまでしなくていいから! 実花も煽るな!」
「えっ……? 義孝さん、マグロ好きなんですか……? そ、それなら、マグロ切り包丁を用意した方がいいですね……明日雑貨屋さんに……」
「あっ、テンチョー、マグロだったらあたしの知り合いの漁師に掛け合ってやるぞ!」
「明菜も三沢も本気にしなくていいって!」
こ、こいつらどこまで本気なんだ……? いや、こいつらのことだからほっとくと本気でしそうだ。仕事から帰ったらマグロ一匹がお出迎えという事態は避けたいな……。
「お、俺はマグロよりも鰻が好きなんだ」
「うなぎ!? きずなもだいすき!!」
「わああ、いいですね! うなぎならお仕事で捌いたこともあります」
「さすが……料理系の配信者をやってるのは伊達ではないですね。……女子力とはこういうものですか……そうですか」
おい由衣、多分うなぎをさばくことは女子力に直結しないと思うが……。
「うなぎやまぐろを……さばいて、握り寿司やひつまぶしを晩御飯を用意する……いい」
ぼそぼそと真剣な表情で呟く由衣さん……いや、余計なことは言うのはやめておこう。面倒そうだ……。
それよりも、実花と話をしたいが……。
「…………」
(ここで露骨に呼び出すと騒がれそうだな……。仕方ないここはメールでもするか)
俺は周りに見られないようにスマホを取り出して、こっそりとメールをうつ。
……早く済ませた方がいいから、簡潔な文にするか。えっと……。
『とても大事な話がある。2人で話したい』
完璧だ。よし送信っと……。
すると隣に座っていた実花がマナーモードにしていたスマホのメールに気が付いたのか、何気ない様子で画面を見た後――。
「…………!!」
驚いた様子で俺のことを見る。俺はその様子を見て静かに頷とく。すると実花に何故か照れた様子で頷き返される。
……何か勘違いをされているような気もするが……まあ緊急事態ということはわかってくれたようだ。多分……。
◇◇◇
昼食が済むと俺と実花は明菜が持ってきてくれた弁当箱の片づけと称し、2人で厨房の洗い場にやってきていた。
「…………」
「…………」
2人でもくもくと洗い物をする。
他のみんなも手伝いがっていたが、『教室の片づけをお願いできるか? 俺は今日遅刻をした実花に説教カーニバル』をするからと、理由を付けた。
うむ。昼休みに遅刻をしたことを聞いてよかった。俺の社畜時代に培った無駄な演技力が役に立ったな。
みんなも何かを疑ってる様子はなかったしな……。
まあ、嘘をつくのはあれだが……これも未来に知られないためだ……と、自分に言い訳をしておこう。
あと1つ気になることがあるのだが……。
「…………」
「…………」
な、何でこいつは顔を赤くして黙々と洗い物をしているんだ。そのくせチラチラとこちらを盗み見てくるし……盛大に何かを勘違いをされている気がする………。
はぁ、事情説明からする必要があるようだな……。




