Jkとお話(3)
「それで話があるのか……?」
「ん……?」
俺は売店の準備をしながら北条に話しかける
北条は屋台の中に設置してあるパイプ椅子に我が物顔で腰かけながら、興味深そうにわたあめを食べている。お前、いつからうちの従業員になったんだよ……。
はぁ、誰か来たら親戚で押し通そう。
今はそんなことよりも、こいつの要件を満たして早くお帰り頂くことが先決だ。
……由衣とかと鉢合わせると、「ふーん、店長は手が早いですね……恥ずかしくないんですか? いい歳して女学生をたぶらかして……ふーん」とか言って、軽蔑され、絶対面倒なことになる気がするし……。
「ああ、ジョン君が『竜胆』の関係者ってわかったから、話が進められるわね」
(…………竜胆に関しては黙秘に関しては黙秘権を行使しよう……余計なことを言って娘たちに怒られるのは嫌だし……まあ、もうこの状況で既に怒られそうだが……でも、俺は仕事場から逃げられないしな……)
「ふふん、それで話ってのはあんたの娘についてよ! 確か未来っていったかな。あの子は危機的な状況に陥っている!」
「…………」
俺は北条の話は軽く聞き流すつもりだった……。めっちゃ短い付き合いだが……北条みたいなのタイプは自分の喋りたいことを喋れば満足しそうだしな……。
でも……。
「…………あいつ、どうかしたのか…………?」
「やっと私の話を聞く気になっわね! ふふっ、何よ? さっきから面倒そうな顔をしてるけど、娘たちのことには興味があるの……? ジョン君って家族想いなんだぁ~。ふーん、そっかぁー」
北条はからかうような笑顔をこちらに向けてくる。だが、それは馬鹿にしてるような雰囲気はなく、微笑ましいものを見る感じだ。
そんな視線がなんともむずがゆい……。
「は、はん? そんなんじゃねぇよ。ただうちの頭のおかしい娘たちが、人様に迷惑をかけてねぇか心配なんだよ。あいつらがなんかやらかしたら保護者である俺の責任になるからな。だから、俺は娘たちを心配してるんじゃねぇ。俺の心配してるんだ」
「はいはい。ふふふっ、わかった。わかったっての」
ならその笑みをやめろや……。
「それで……未来がどうしたんだ?」
「ふふっ、これ以上はジョン君に嫌われるかな。でも、こんなおもちゃ……ふふっ、失礼、こんないいリアクションを取るならもうちょっと楽しんでもいい?」
「いい訳あるか! 早く話を進めないと、大ごとにするぞ! 具体的には……爺さんに泣きつく! いいのか! あの人、俺のことになると国さえ敵に回すらしいぞ!」
言ってて最高にかっこ悪いが……事実っぽいのが性質が悪いと思う……。こうでも言わないと話が進まなそうだしな……。
だが、そんな俺の醜い言い分がきいたのかわからないが……何故か自信満々で頷きながら、足を組み替える。
「ふっ、仕方ないわね! 今ここで竜胆を敵に回すのは北条にとっても不利益だしね。ここでは恩を売るだけにするわ。感謝しなさい!」
北条は偉そうにそう言い放つ。そして、そのまま話を続ける。
「それであんたの娘なんだけど……落ち着いて聞きなさい」
ここで急に北条は暗い顔をする。さっきまでの偉そうな笑みを浮かべていた時とは雰囲気が重くなり、思わず身構えてしまう。
えっ……そんなに、重い話をすんの?
「教室の空気を感じて……確信したわ! あんたの娘、未来は……いじめられてるわ!!」
「なっ……な、な、なんだと!」
俺はあまりの驚きで、手に持っていたボールペンを落としてしまう……
「間違いないわ。あの空気……如月も大概だけど、少なくとも避けられてるのは間違いないわね! 何となくそんな感じがしたわ! クラス雰囲気がそわそわしてたし! クラスの女子に緊張した顔で未来に『ひ、昼ってどうするの?』って、話しかけてたし! あれは呼び出しだわ!」
「ま、マジか……い、いやでも……そんなことがあるわけ……」
いや、待てよ。そういう否定的な考えがよくないってテレビで見たことがあるぞ。未来も誤解を生みやすい性格だからな……感情が表情に出にくいし。
「ふっ! ジョン君! 安心しなさい!」
そんな俺を見て、自信満々な笑みを浮かべる。
「ふっ! 不安になってるわね! あんたが望むなら私が協力してあげてもいいわ! 私がいるクラスでいじめなんて見逃せないわ!」
「そ、そうだな……あんまりガキの事情に口出すのは避けたいが……う、うむ」
「こういうのは早ければ早いほどいいのよ!!」
そんな北条が少し頼もしく思えた……。
だがーーこの時の俺はいじめというワードで動転し過ぎて、北条の言葉に『未来がいじめられている根拠』がまったくないことに気が付いていなかった……。
勘違いが勘違いを生み、ことは大事に面倒になっていった……。




