Jkとお話(1)
さて、休憩時間という夢の時間はあっという間に終わった……。
ああ……本当にあっという間だった。
娘たちの参加種目を見ながら応援して。
由衣と2人でいたおかげでパーティで知り合った保護者連中にからかわれ。
そんな保護者をかわしたと思ったら、今度は常連客の男子生徒にからかわれた……。
このことで由衣を不機嫌にさせたよな……ずっとじっーと地面を見てたし……はぁ。
そして、そんなこんなしてるうちに……葵ちゃんたちと合流した時には休憩時間残り5分……。
絆ちゃんに『ええ……お、おじちゃん、もういっちゃうの!! きずな、おじちゃんとお話したい!』と言われた……許してくれ。俺は所詮社畜の心を持つ者……仕事には逆らえん……。
そして売店に戻ってきた俺にさらなる試練が――。
「おお! テンチョーこっちこっち!」
「あれ、店長……麻依さん慌ててるような……」
売店の近くを歩いていると、三沢がこっちに向かって大きく手を振ってくる。
うーん……。問題があったのか……? 相変わらず屋台の近くに客はいないようだけど……。
「おう、休憩ありがとさん。それでなんかあったのか……?」
「ああ! それが大変なんだ! さっきここの教頭から連絡があって……」
「はあぁぁぁ!? お、俺たちまだ何もやってないぞ! 無実だ1から5億まで無実だ!」
「て、店長落ち着いてください……まだ、どんな悪い話か決まってないじゃないですか……で、でも、もしもの時は絆のために貯めてるお金が……少し……」
俺と由衣はそろって慌てる。だって、このタイミングで教頭から連絡とか絶対に悪い話だろ……。
そんな醜く慌てている俺たちを三沢が感心したようにみる。
「……に、似たような反応するな。ああ、由衣がテンチョーにどんどん染められてくぜ」
「そ、染められてくって……そんな麻依さん……」
な、何でちょっと嬉しそうなんだよ……。
「そんなことよりテンチョー聞いてくれ!」
さっきまで慌てていた三沢だが、俺たち反応を見て我に返ったらしい。ふっ、全て計算通りだ。
「なんか教頭が『出前』をして欲しいって」
「うん? ああ……そんなことか」
やべぇ、焦って損した……。そんなことならいくらでも。今朝と違って食材にも余裕があるしな。
「弁当が30個にポップコーン、わたあめが10ずつ。さらに20杯のコーヒーだそうだ。新井は先に厨房でコーヒーの準備をしてるぜ」
「はっ、随分多いな!?」
「なんでも教員とその家族に配るんだとよ」
教員の家族も来てるのか……どんだけお祭り好きなんだよ……まあいい。稼ぐチャンスだしな。それじゃあまずは……。
「そうだテンチョー、ポップコーンとわたあめは用意してあるぜ! 新井が食堂に持っていったぜ」
「おっ、サンキュー。弁当は昼用のストックを使おう。由衣は新井と合流して配達を手伝ってやってくれ……教頭をナンパしたら蹴飛ばしていいからな」
「了解です! くすっ、思いっきりやっちゃいますね!」
新井のやつは熟女趣味だからな……教頭ナンパとかマジで洒落にならん。本当なら新井には出前を行かせたくないんだけど……人手がない。
屋台には社員が1人は居た方がいいしな。三沢は……。
「三沢、お前は弁当の追加分を用意してくれ。俺はここで店番をしながらポッポコーンとわたあめのストックを作っとく」
まあ、まだ客の姿はないから、俺1人でも大丈夫だろう……たぶん。
「店長、私すぐに戻ってきますね」
由衣はそう言うと食堂に向かって駆けて行った。三沢もそれに続こうとするが……何かを思い出したのか、不意にこちらを向く。
「テンチョーになんか客が来たぞ! 『北条』って言ってた! また出直すらしいぜ!」
「……えっ?」
三沢はそれだけ言うと去っていく。
北条って……。
『ふんっ、やっと帰って来たわね。ジョン君! 私を待たせるって、いい度胸してるわね。あんたに話があるの。ふっ、とっておきのね』
背後から聞き覚えのある偉そうな声……。
ああ、なんだか嫌な予感が……俺は恐る恐る後ろを向いた。
するとそこには――北条夏輝が不機嫌そうな顔で立っていた……。




