体育祭を眺めて(1)
時刻は10時頃――。
屋台の営業が始まり1時間ほどが経過した。
葵ちゃんの力も借りなんとかピーク時を乗り切ることができた……。
そして葵ちゃんは「また忙しくなったら、呼んで下さい! 喜んで働きます!」と、いい笑顔で明菜と共に屋台を後にした……あいつどんだけイケメンだよ。
「…………平和だな」
今は屋台に並んでいた大勢のお客さんたちは、体育祭が始まったためか、まばらに来るだけだ。
こうなると、順番に休憩を取っている関係上、由衣と2人で店番をしているとは言え、楽勝だ……少し前の忙しさが少し恋しく……はならないな。暇最高。
「ふぁぁぁ」
「店長、暇とは言え営業中なんですから、大きくあくびをしないでください……」
呆れたように俺のことをたしなめてくる由衣。もうどっちが上司だがわからないな……。でも、ここまで混雑時と差があるとな……。
さっきからジュースが売れるぐらいだし……。
「でもまあ……あと少しで休憩だしな。もう少し頑張るか……」
「ふふっ、その意気です」
昼になるとまた混雑するのが予想できるしな……今のうちに休んだ方がいい。
今三沢と新井が休憩取っているから、奴らが戻れば1時間の休憩時間だ……さて、何をしてやろうか……事務所で寝てやろうか……。
(でも……休憩時間に事務所で寝てたら、娘たちが拗ねる気がする……自分たちの出場種目を見てほしがってたし……仕方ない……校庭の方に行こう。葵ちゃんたちもいるだろうし……ん? 待てよ)
そこで俺はあることに気が付く。
「まずいな……休憩時間に」
「え……店長、何がですか……?」
「いや……俺は実花未来たちの親ということは隠している。よって……学校において俺は学食の店長でしかない。そんなおっさんが、JKたちが体育祭をしている校庭にひとりで行く……犯罪臭がすごくないか?」
「店長……何をめんどくさいことを言ってるんですか……」
「いや、お前や新井みたいな若者なら自然だけど、俺は違う。おっさんだぞ? 葵ちゃんたちと合流する前に……警備員に不審者としてしょっ引かれても不思議じゃない……」
そうなればフレアさんが暴れるし……。
「いえ……完全に被害妄想だと思いますが……」
「大人とは常に最悪の状況を想定して動く……不審者として捕まってからでは遅い……変な噂が立つと店長を辞任させられかねない」
「はぁ……ここまで妄想が過ぎると逆に尊敬します」
由衣はそんな俺のことを呆れ顔で、皮肉たっぷりで言う。おい、めんどくさい自覚はあるがもうちょっと感情を隠せや。悲しくなるわ。
「て、店長……」
と……思っていたら、由衣が突然、そっぽを向く。角度のせいでその表情は読み取れない。えっ……俺の顔を見たくないってこと?
「店長、それなら私と一緒に行きますか……?」
「えっ……? お前おっさんと歩く趣味があるの?」
「な、何を訳のわからないことを聞いてるんですか? わ、私も……休憩ですし。絆の様子を見に行きたいですし、夢野さんと葵さんにもお礼を言いたいですし……ふ、深い意味はありません。も、目的地が同じなのに別々に行く方が不自然です」
「……そ、そうか……?」
なんか緊張を含んだ声で早口にでまくしたてられた……恥ずかしがってるのか……? こ、こっち向いてくれないからわからない……
いや、本人がいいならいいんだけど……なんか、気を遣わせちゃったか……?
まあ、でもありがたいか……1人で行くのは寂しいしな……。




