宣戦布告(1)
さあ、人間という生き物は切り替えが大事だ。どんなにダメ人間で、例え部下に膝枕をさせていた人間でも、しっかりと働けばその変態行為で失った信用を取り戻せる……かもしれない……たぶん、きっと……。
「…………はぁ」
俺は食堂近くのテラス席でひとり寂しくコーヒーを飲む。ちなみに他の従業員は屋台の方で最終チェックをしている。
これは別に俺がハブられてるとかではなく、単純に順番に休憩をとっているだけだ。だ、だよな? なんか由衣に――。
『て、店長が一番疲れてるんですから、最初に休憩をとって下さい!!』
と、必要以上に最初に休憩を取る様に言われたけど……お、俺は邪魔だったのだろうか……。
「……や、やめよう……これ以上考えるとドツボにハマりそうだ……」
現在の時刻は9時前。学生は教室でホームルーム中らしく、周りは静かだ……。
出勤してから3時間が経ち俺はもう疲れ切っている……。
「開店まであと20分……屋台の準備って大変なんだな……」
俺はこの数時間で自分で言うのもなんだが……結構働いた気がする。
……いや、実際は寝たふりで天国を味わってサボっていたが……まあ、それはこの際横に置いておこう……。
あれから、いろいろと準備に追われた。食材の仕込みに本部から届いたポップコーンやわたあめの機械の設置等だ。
設置が思ったよりも重労働だった……機械は重いし……古い所為か中々上手く動作しなかったし……はぁ、疲れた。
「…………いい天気だなぁ」
俺は何気なく空を見上げる。
すると、気持ちのいいぐらい綺麗な青空が広がっている。この壮大な空を見ていると、俺の悩みなんてちっぽけのような気が……。
いや、俺は天下の社畜心を持つ者だぞ。空の綺麗さになんか誤魔化されない。
『そこのあんた、ちょっといい?』
「ん……?」
俺がよくわからない葛藤をしていると、後ろから若い女の子の声が聞こえた。可愛らしい声だが、どこか自信に満ち溢れているような強気な感じだ。
振り向くとそこには――。
綺麗に茶色に染められた長い髪をツインテールにしている美少女がいた。目が吊り上がっており、気の強そうな印象を受ける。
……おいおい、最近美少女と住んでるから美少女耐性ができてる俺が言うが……すげぇ美少女だ……。
「ふんっ、へぇ、あんたがそうなの……あんたもいろいろ大変ってことね。ここには『宣戦布告』に来たんだけど……あんたには同情するっての」
そんな美少女は俺のことを興味深そうに見ている……というか、こっちに近づいてくる……はぁ!? か、顔近づけ過ぎじゃない!? 30センチも離れてないんだけど!
「お、おい…………えっと、どちら様…………?」
ここの学生であるのは間違いないと思うのだけど……でも、学生は今ホームルーム中なんじゃないのか……?
「そうね。知らないのも無理はないわね」
「…………」
少女は今時の軽い口調ながらもハキハキ喋る。
な、なんか偉そうな奴だな……まあ、何事においても自信満々の女は嫌いじゃないが……実花とかいつも無駄な自信に溢れてるし。無駄な。
というか……よく見ると、こいつのつけてる時計やアクセサリー……いい物だな。如月がつけてるのと同じレベルな気がする……。
「川島義孝、この私が自己紹介してあげる。感謝しなさい。あ、別にあんたのためじゃないってことを理解してよね」
「…………」
な、なんだこの強気なツンデレのテンプレのような少女は……。
あれだな……俺も美少女関連でここ半年で俺もいろいろ経験してきたからな……これはわかる……。
「私の名前は『北条 夏輝』。あんたに勝ち、あんたを下僕にする女よ!」
「…………」
また、厄介な女に目を付けられたな……絶対そうだ……。




