朝のお仕事(3)
さて……寝たふりをしてからどのぐらいの時が経っただろうか……。10分ぐらいだとは思うが……緊張のせいですげぇー時間が長く感じる。
「……ふふっ」
カリカリ。
由衣は俺に膝枕しつつ、紙に何かを書き込んでいるようだ。おそらく、今日使う食材の仕分け票でも作っているのだろう。
……由衣は機嫌がいいのか、時折嬉しそうな笑い声が俺の耳をくすぐる。
(絆ちゃんに膝枕している時と同じく、微笑ましい気持ちになっているんだろうか……?)
「…………」
(いや、中年のおっさんと我らがアイドルの絆ちゃんに膝枕をして同じ気持ちになるわけないか……大方、膝枕にくいついた中年が滑稽なのだろう……)
そうとわかればすぐにでも起き上がり、仕事をするべきなのだが……。そんな余裕があるわけでもないし……。
(だが……)
むにむに……。
うむ。由衣はモデルみたいに細いから、そこまで肉付きがいいわけではないが……どうして女の子の身体というのは柔らかく感じるのだろう……。
男の本能が俺に囁く……もっとこの時間を堪能したい!
(くっ、明菜に膝枕をしてもらった時も感じたが……この幸福感は麻薬だ。俺はとっくにジャンキーなのかもしれない……)
と……不純なことを考えていると――。
「ふふふっ……可愛い……」
由衣の笑い声と共に頭に柔らかい感触……どうやら頭を撫でられているようだ。
頭に優しい手のひらの感触が伝わってくる……さ、さすがにこれはなんだか悪いことをしている気分になってきた……いや、膝枕だけでも大概なんだけど。
だが……この幸福感にまだ――。
トントン。
「…………!」
「…………えっ、だ、だれ……?」
その時、扉をノックする音が聞こえた。
それと同時に外から聞きなれた声がする――。
『あら……? 留守なのかしら……? 三沢さんたちはここにいると言っていたのだけど』
『お嬢様、まさか……義孝様の身に何かあったのでは? 過労で中で倒れている可能性が……すぐに扉を開けましょう』
『えっ……よ、義孝さんが……』
(こ、この声は如月とフレアさんか……!?)
俺も由衣も突然のことに思考がフリーズしていしまい、反応が遅れてしまう。本来ならすぐにでも俺は起き上がらなければならなかったが――!
ガチャ……。
俺が起き上がるよりも先に扉が開く……。
「よ、義孝さん……!」
耳には普段あまり聞くことのない如月の慌てた声――。
ちなみに俺はまだ由衣の膝の上で寝たふりをしている。
(か、完全に起きる機会を見失った……!)
「き、如月さん……!?」
「あ、あら……これはどういう状況なのかしら……?」
俺は由衣と如月の動揺した声を聞きながら、俺は寝たふりを続ける……ど、どうするべきだろうか……?
い、今すぐ起きるべきか……?
俺は由衣の柔らかな太ももの上で頭を悩ませた……。




