体育祭前日(3)
未来の冷たい視線にさらされること数分――。
俺と未来は仲良く……屋台の組み立てをしていた。
「…………」
「…………」
会話はない。ただ2人でひたすらネジを占めていく……。親子の共同作業といえば聞こえがいいが、実際はそんなあたたかさは皆無だ。
俺からしたら今の空気は冷たさしかない。
「…………じぃぃぃぃぃぃ」
「…………」
いや……会話はないけど、視線の圧がすごい……何か言いたげだ。でも、コミニュケーションを取ろうと話しかけると……。
「み、未来、お前は手伝わなくてもいいぞ……? 家に帰ってごろごろしてていいんだぞ……? 夢のようじゃないか」
「…………ふんっ、お父さんの馬鹿」
「……す、すみません」
娘の気持ちがわからない……。全国のお父さんたちは娘の反抗期にどうやって対処しているのだろうか……。俺にwikiをくれ。
……いや、原因は俺にあることはわかってるんだが……俺が子供で親父が若い女と抱き合ってたら間違いなくグレる。
こ、ここは罪を素直に認めて、歩み寄ることから始めよう。
「俺が悪かったから、み、未来さん、許してくれないか……?」
「…………お父さんはエッチで変態で、美人なら誰でもいいんですね。できれば誰でもいいんですよね?」
「あ、あの、俺の謝罪の言葉を聞いてくれると嬉しいというか……」
「……由衣はお父さんの部下ですよね……? そんな関係で手を出すなんて恥ずかしくないんですか……? 性欲を自分で制御できないんですか……?」
「いや……それを言われると辛いんですが……」
「はぁ、娘として恥ずかしいです。大体お父さんは――」
「わ、悪い、何でも言うこと聞くから許してくれ……」
「ん? 今なんでもって言いましたか……?」
「…………」
あっ……人生詰んだかもしれない。このやらかした感は久しぶりだ……具体的に言うと、風俗で写真詐欺にかかった時以来やっちまった感だ。
「い、今なんでもって言いましたか……? いいましたよね? 私はしっかりと聞きました。エッチなこと。エッチなことをしてもいいですか……? これは権利を乱用してお父さんにいろんなことを…………」
「…………」
さすが俺の娘。
さっきまでの説教が全部台無しだ。
てのひらくるっくるのくる過ぎて手の動きが見えねぇ、ふっ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうな……。
はぁ……未来のやつ自分で俺に対して怒ってることを殆どやろうとしてるじゃねぇか……。
「はぁ、まあ、俺ができることならいいけどな……それより機嫌直してくれよ」
「…………」
未来はあれだけ冗舌に喋ったいた口を閉じて再びジッと俺を見つめて、やがて呆れたような大きくため息を吐く。
「はぁ、これ以上、私のわがままで怒ってもお父さんに嫌われるだけですね……それは嫌なので許してあげます」
「い、いいのか? 自分で言うのもなんだけど……俺みたいなやつを甘やかすと、すぐに調子に乗るぞ?」
「……本当に自分で言うことじゃないですね。それよりも――お父さんに聞きたいことがあります」
未来は呆れながらも俺を見据えた――。
その目には何かしらの決意が伺えるようで、今までのいじけた雰囲気はない。
……えっ? なんか重い話されるの? 俺……?
◇◇◇
同時刻――。
学校の屋上にてふたりの人物が義孝と未来の様子を見ていた――。
距離は結構離れているので、声はもちろんのこと、表情も読み取ることができない。だが、見ている少女は興味深そうにジッと見据えている。
ひとりは学校の制服を着ていてツインテールの少女だ。身長は160センチほどで、スタイルはよく、その整った顔も含めて、目を引くよう容姿だ。
目がつり上がっていてどこか気が強そうな印象を受ける。
「……あれが竜胆の次期党首ってことね」
「私からはその辺はなんともでござる。私はお兄ちゃんの味方なので!」
そしてもうひとりはスーツ姿の外人で、義孝のことを愛おし気にお兄ちゃんと呼ぶ、語尾の変な女性だ。今日赴任してきた教師である。
「ふんっ、改めて言われなくてもわかってるわ。わかっていてあんたを雇ったんだから。でも明日の体育祭の『リレー』は手を抜くんじゃないわよ」
「それはいいけど……お兄ちゃんの不利益にはならなそうでござるし。だけど、お兄ちゃんびっくりするだろうなぁ。私がまさかここで教師をやってるって知ったら」
「はぁ、あんたは反応が軽いわね。いいわね、必ず勝つのよ。これは『4大名家』の代理戦争だということを理解しなさいっての」
「はいはい~~私体力には自信があるでござる」
「ふんっ、わかればいいわ。遊技でも『北条』は負けないっての」
少女は傲慢を表情に宿して、愉快そうに言い争いをする義孝と未来の様子を見つめていた。
3章次でラストです!!!




