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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第3章『ミライヘノネガイ』
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いつもの日常(4)

 体育祭の打ち合わせが終わった後――。

 1日の勤務で1番体力を使う営業時がやってきて、現在はもっとも学生が来るピーク時になる。


 うちは普通の料理屋に比べた営業時間はかなり少ない。職員しか来ない時間を含めても2時間ないからな。だが、その分1時間あたりに来る人数はえぐいものがある。


 今日も――提供カウンターの前で50人以上の学生が並んでいる。今日は特別多い……。


「店長! チキンカツがあと20食です! 追加定食の鳥の照り焼きの準備しますか?」


「麻婆豆腐はどうだ?」


「そちらは余裕があります。たぶん、終わりまで持つかよ思います」


 ……麻婆豆腐を多めに用意しておいてよかったな……。でもチキンカツがこの時間で売り切れはまずい……。


 混みすぎて早い時間に定食が売り切れると、追加の料理を用意することになっている。


「ああ、鶏肉は三沢が用意してくれてるから、由衣はすぐにサンプル台の入れ替え作業をしてくれ。ここは俺1人でいい。三沢! 鶏を焼いてくれ!!」


『おお! 任せてくれ!』


 俺が提供カウンターの後ろにある厨房に声をかけると、三沢の大きな声が聞こえ、由衣が笑顔で頷く。


「わかりました! 2分で帰ってきます!」


 そう言い、カウンターを出ていく由衣。

 定食の列には70人ほど並んでいるが、由衣がある程度から揚げと麻婆豆腐を先に持ってくれているので、おれはひたすら米と味噌汁を盛ってカウンターに置いていく。


 すると、学生が順番にチキンカツか麻婆豆腐、ご飯、味噌汁を取る。流れ作業なので、すぐに食事を提供できるが、すぐに新しい学生が並び始める。


(この学食に来た当初はこの生徒の数に圧倒されて慌ててばっかりだだったけどな……。うむ、社畜の格言である『人間というのは馴れるものだ』というのは本当だ。ここにきて半年以上……今ではある程度の人数では動じなくなってきた)


 そんなことをしみじみ考えていると――。

 1人、常連の見るからにガッツリスポーツやっていそうな男子学生が声をかけてくる。


「店長さん! 俺、めっちゃ、ご飯大盛にしてください!」


「おお! 任せろ! 他にも大盛りして欲しい人はいますか!?」


 学生が数人、手を上げるのを確認して、俺はそれを考慮しながら米を盛り、隣の面コーナーを見る。


 新井の方もかなり並んでるな。イベントの『鬼チャーシュー麺』が当たってるな。やっぱり学生は肉だ。肉を食ってこその青春時代……この考えはおっさんっぽいか……。


「新井、そっちのラーメンスープはどれぐらい持ちそうだ?」


『この調子だと、10分ぐらいっす! イベントの鬼チャーシュー麺がやばい勢いで出てるっす!』


「よし、スープは替えが温蔵庫に入ってるから、由衣が戻ったら入れ替えてくる」


「くっ、音無の力を借りるのは不本意ですけど、仕方ないっすね……」


 スープの入れ替え作業もでかい寸胴に30人前のスープとなると大ごとだからな。1人でやると怪我の元になるし。


 それにしても……ゴールデンウィーク明けの所為か、いつもよりも客が多い。全国のお母さんたちも今日は弁当を作るのが面倒だったか……?


『テンチョーちょっと問題が起こった!! こっち来てくれ!!』


 その時、厨房から三沢の声が聞こえてきた。ん? なんか慌てた声だけど……三沢ってあのファンキーな見た目でメンタル弱いからな……仲間に迷惑がかかる時とか、仲間が心配な時は特に。


「ちょっと待ってくれ! 由衣がサンプル台に行ってるから、戻ったら、すぐに行く――」


「店長、戻りました。ここは私がしますから、早く厨房に行ってあげてください」


「お、おう、お前帰ってくるの早いな。悪いが頼む」


 由衣は俺にほほ笑むと、生徒たちに方を見る。


「すみません、もう一度、大盛の方は教えてもらってもいいですか? それと、チキンカツは並んでいる方で売り切れです。次は鶏肉の照り焼きなります。そちらがいい方はずれて並んでください」


 お、おお。遠巻きに俺と生徒の会話を聞いてたのか。仕事の早さと言い、つくづく優秀だな。


『お、俺です! お、大盛で!!』


『ぼ、僕もお願いします!!』


 由衣の愛想のいい笑みに、男子生徒はこぞって手を上げる。おい、さっき手を上げてなかった奴も手を上げてねぇか? ……いや、おっさんよりも美人にご飯をよそってもらってテンションが上がる気持ちは大いにわかるんだが……。


 おっと、それよりも厨房に行こう。


「おい、三沢どうした……?」


 厨房に入ると、スチームコンベクションの前で慌てた様子で首をひねっている。

 スチームコンベクションとは、幅150センチ、高さは2メートル近くある大物で蒸気で調理する機械だ。蒸気で蒸し焼きや蒸し物などができ、この大きさなので一気に100人前の調理ができる優れものだ。


 簡単に使用感を言えば馬鹿でかいオーブンだ。


 べらぼうにお高いらしいが……まあ、うちの5人目の従業員と言っても過言ではない。スチコンちゃん。


「て、テンチョー、実はスチコンが故障して動かねぇんだ…そのせいで追加の鶏肉が焼けねぇ……くそ、さっきまでは動いてたんだが……」


「…………」


 そんなこと言う、三沢……。おい、うちの5人目の従業員がダウンした……。ま、待て、もうチキンカツなくなるから、鶏肉が焼けねぇと定食が売り切れになるぞ……。


 それはまずい……学校側は定食の売り切れをかなり気にするからな……。


「はぁ……仕方ない。明日用の海老カツがあっただろ? あれすぐ揚げられるか?」


 判断は早い方がいい。

 素人の俺がスチコンが直るかどうかを見るよりも、早く他のものを用意した方が効率的だ。海老カツは人気メニューだから、そこまでクレームもこないだろう……たぶん。


「あ、ああ! フライヤーは使えるようにしてあるから、5分待ってくれ、すぐに揚げるぜ!」


「ちょい待ち」


 慌てて冷蔵室に走っていこうとする三沢を呼び止める。


「スチコンが壊れたのは気にしなくていいからな。いきなり壊れたのならお前の所為じゃねぇ。みんな使っている物だしな。だから、落ち着い作業しろよ」


 俺がそう言うと、三沢の表情から緊張が和らいだ気がした。


「ありがとう。すぐに用意する!」


 三沢は笑顔をでそう答え、冷蔵室に入っていく。


 はぁ、これで今日の営業は何とかなるだろう……すぐに由衣と新井にも共有しないとな。


「…………」


 ……まあ、この後スチコンの修理依頼とか、明日のメニュー変更とか、今日のトラブルを本社やクライアントである学校側に説明したりとか、やることは山積みなんだけどな……。

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