いつもの日常(1)
夢とはやがて覚めるものだ……。
俺はそんなかっこつけたがる中二病心と、会社に行きたくない社畜の心が融合したような心境で、職場である学校の裏門前で立ち尽くしていた。
5月の過ごしやすい陽気のお陰で清々しい朝だ。
「…………こ、これは夢なんだ。いや、今までいた社畜社会ワールドは偽物なんだ」
ゴールデンウィーク明けの、月曜日の早朝によくわからない狂言をほざいている中年が1人。もうこのまま働かないで休みの幸せな想いでに包まれていたい。
「…………」
だが、人間は立ち止まってはいられない生き物だ。なんというか、しがらみとか、言いえぬプレッシャーとか……。
まあ、早い話、俺が不審者に見えるらしく――。
近くにある警備室が騒がしいからな……なんか聞き覚えのある声も聞こえてくるんだが……。というか、見慣れたドレッドヘアーが見える。
『お、おい、あの人何してるんだ? あれ、不審者じゃないのか?』
『はぁ? 不審者ですか……この国の将来の王を不審者と言いましたか……』
『あ、あの……』
『いいでしょう。あのお方がどれだけ優れ、神々しく、夢を抱く存在かを……貴方の身体に教えましょう』
『あ、あの……ま、まって、にじり寄っってこないでください……ああああああああ!!!』
「…………」
よし。俺は何も見てないし、何も聞いてない。
フレアさんなんていう人とは会ってない。
そういうことにしておこう……。
「…………行くか」
(いつまでも現実逃避していると、また不審者扱いされそうだしな……そうなると警備室で無駄な血が流れそうだ……いや、マジで)
俺はそんなことを考えながら歩を進めて校舎に入る。
現在時刻は午前6時――。
まだ、生徒はいないと思っていたのだが……。
女生徒が2人、こっちに歩いてくる……見覚えがある。よく食堂に来てくれているギャルっぽいJKだ。
いつも食堂が空いている遅い時間に来るから、世間話程度はする仲だ。まあ、名前すら知らない仲だけど。
「はははっ、あんた最近太ったんじゃないのぉー」
「はぁぁ、言うんじゃないわよ! だから、こうして眠いのに頑張ってるんじゃないの! ……あっ、店長さん!! おっはようございます!!」
「ああ!! 店長ちゃん聞いてください~~! この子さああ!! また太ってさあ」
「う、うるさい! い、いいのよ! まだ平均体重ぐらいかなんだからっ……そうそう! 店長さん体育祭出るんですよね! 私応援してあげますね!」
俺に気が付き話しかけてくる。
朝から元気な奴らだな。朝が苦手な実花とは大違いだな……というか、体育祭の件噂になってるのか……? あんまり注目を集めたくないんだが……。はぁ……。
「お前ら、朝から元気だな……俺は眠い……」
「ああーー。店長ちゃん、そんなこと言ってると音無さんに怒られるよーー?」
ああ、そう言えばこいつらと由衣や三沢と仲が良かったな……仕事帰りに話してるのを何度か見たことがある気がする……「あいつ超きもくて、いつもやる気ないんだけど」とか、言われてるんだろうか……。
「あいつは……口うるさいからな。もう少し丸くなればさぞモテるだろうに……」
「…………それ、音無さんに言わない方がいいですよぉー」
「あはは……音無さん可哀そう……」
なんだお前らの苦笑いは……よくわからんけどその微笑ましいものを見る目はやめい。
なんか悲しくなってくる。
「ほっとけ。お前らは部活か……? 朝から偉いな」
今もなお爆睡してるだろう実花に見習わせたい。まあ、仮に俺が実花の立場だったら、絶対に早朝の部活なんてしないけど……。
「えへへ、そんなこと言われると照れますねぇ~~」
「ふっ、あんたの動機は褒められるほど、純粋じゃないけどねぇ!」
「もう! うるさいなぁ。今褒められて調子にって自分を美化してるんだから。私ってすごい人間って、思いこんでるんだからっ!」
「ただの現実逃避じゃねぇか……現実から逃げまくってるじゃねぇか。共感できるわ」
これでこそ、若者だ。と、思う俺は歪んでるんだろうか……?
「やめてください!! そんな呆れた目で見ないでください! はぁ、叫んだら、なんだかお腹すい手来ちゃった……そうだ、店長、今日のお昼ご飯何がおすすめ!?」
「……あんたねぇ、数秒前に言ったこと全否定しないでよぉ……店長ちゃんも呆れてるじゃん」
「ちゃ、ちゃんと、運動すればノーカンだもん!!」
「ははっ、今日は確か麻婆豆腐とチキンカツがお勧めだぞ」
「マーボーですかぁ、えへへ、嫌いじゃないです」
まったく……家の娘たちといい、この子たちといい。若いっていうのはそれだけで輝いて見えるな……はぁ、連休明けでだるいけど、俺も頑張りますか……。
少し、前向きになった気がした。
誤字脱字報告をして頂いた方ありがとうございますmm
非常に、劇的に、マジで助かります。
自分で気が付けるように頑張りたいです……。




