プレゼント!!!(6)
さて――。
感動とは人の心を大らかにするものだ。今の俺は菩薩観音よりも慈愛に満ち溢れている。
人に優しく。うむ、そんな人としての基本が、娘たちや絆ちゃん、由衣、明菜、如月の心遣いにより、俺の心の中で溢れかえっている気がする……今の俺はどんな無茶ぶりも笑顔で耐えられる――気がしたんだ。
「お兄ちゃん! 最後は拙者でござる!! ニンニン! さあ、出てきて! ガンダルシアちゃん!!!」
「…………」
外から仲良くお喋りしながら、帰ってきた如月とアヤメと絆ちゃん……その中でアヤメは目を輝かせてプレゼントを差し出してきた。
い、いや、可愛い妹からのプレゼントだ。むせび泣いて喜ぶことはあっても、絶望することないはずなのだが……。
我が家に鎮座している2メートル級のデブウサギのぬいぐるみの所為で軽く4回は絶望している。
た、ただでさえ人口密度が高いのに……こいつ場所取り過ぎだろ。
「わああ、あやめちゃんこのおっきいうさぎさん、どうしたの!?」
「ふっふっふっ、ウサギのガンダルシアちゃんでござる。もふもふだよ?」
(……い、いや、もふもふで触り心地よさそうだけど……。明らかに邪魔……というか、家ワンルームで3人住んでるのにこれ以上は無理だぞ……)
そんな想いで、俺は娘たちを見ると……。
「パパ! 新しい家族ができてよかったね!」
はぁ?
「お父さん、ガンダルシアさんの場所を作りましょう。とりあえず、お父さんのAVがたくさん入ってる押入れをあけましょう」
はぁ?
「ま、待て待て、何でお前らは受け入れてるんだよ」
「えっ? だって新しい家族だよ? ペットみたいで可愛いじゃん」
「お父さん、認知してあげないのは可哀そうだよ?」
「…………」
あ、あれぇ……俺がおかしいのかな……?
常識ないのって俺か?
そんな気持ちで他のギャラリーを見る。まずは明菜……。
「あ、あはは……す、素敵なプレゼントですね……あはは……」
苦笑いマックス。
うむ。明菜とはいい酒が飲めそうだ……。
そして如月は……。
「なるほど。今の若い子はこのようなプレゼントで殿方の気持ちを掴むのね。確かに印象には残るわ。くすっ、来年の参考になりそうね」
……待て。お前がこのクラスで頑張ると本気でまずい。目がダイヤモンドのぬいぐるみとか渡されそうだ……。
後でお話し合いをしよう……。
そして、真面目人間の由衣さんは……。
「店長、同情はします……頑張ってください……」
おい、肩をぽんぽんするんじゃねぇ。
ま、まだ家で引き取ると決まったわけじゃない。
そんな苦しい考えをしながら、次は絆ちゃんを見る。
「わああ、もふもふだぁぁ」
き、絆ちゃんがデブウサギのぬいぐるみにのまれていく……。やっぱり女の子は大きいぬいぐるみに憧れるものなんだろうか……。
「あーあ、おじちゃん、こんなおおきなうさぎさん、いいなぁーー」
「えっ……それなら、持って帰っても――」
「店長」
俺がやっかいもの払い……ないし、絆ちゃんにプレゼントをしようとした時、由衣から刺すような視線を向けられる。
その視線からは「お前、こんなデカいぬいぐるみが家に入るわけねぇだろ」という意思を感じる。いや、家も置く場所ねぇよ……。
「ふふふっ、お兄ちゃん、嬉しい? 嬉しいよね? 美奈ちゃんが教えてくれたんだもん!」
「……えっ?」
ニコニコしてるアヤメから思わぬ名前が出て思考が停止する。
「えっ……美奈……?」
「うん!! 前会った時に――」
◇◇◇
『えっ、義孝君が喜ぶもの? へぇ、アヤメちゃん、誕生日プレゼントしたいの? 義孝君に誕生日プレゼント……うん、面白そう! そうだねぇ、私ならもう迷惑なぐらい巨大なぬいぐるみを送って、義孝君の困惑する顔……じゃない。喜ぶ顔を見て楽しむかなぁー!』
◇◇◇
「って、言ってたでござる!! 美奈ちゃんの遺言をやっと果たせたよ……」
少し、感動しているアヤメ。なんなら、目の端に涙が溜まっている。
い、いや……俺も美奈の話には思うところがあるんだが……まず言わせてくれ。
「…………あいつ!!!! 俺らの可愛い妹に何吹き込んでくれてるの!?!?!?!?」
くっ、アヤメは俺と美奈のことはすぐに信じるからな……これは美奈が悪い。天国に行って文句を言いたい。
「さすがママ……パパのツボをついてる」
「お母さん、可愛いです」
お前らなぁ、何で平然としてられるんだよ……。巨大な家族が増えたんだぞ……?
……はぁ、でも、仕方ないか……可愛い妹のプレゼントだし、それに美奈から贈り物って感じもするし……。
明日、押入れをを片付けてスペースを作るか……最悪ソファー代わりに使おう。
「ありがとうな、アヤメ」
「うん!!」
嬉しい笑顔で答えるアヤメ。それは見ていて気持ちのいい笑顔だ。
(まあ、いいか……気持ちはめっちゃ嬉しいし……はぁ、なんていうか、人生で一番濃い誕生日だな……ガンダルシアを含めて、こんなに誕生日プレゼントを貰ってもいいのだろうか……?)
そんなことを考えていると――。
「あっ、パパ、お爺ちゃんが誕生日プレゼント郵送するって言ってたよ!」
「…………」
じ、爺さんのプレゼントだと!? ま、マジっすか!?
う、嬉しいんだけど……まずい……今から胃が痛い。さ、さすがに常識内のものを送ってくるよな……? そう信じよう……。
俺は神に祈り、そうして誕生日の夜は更けていく。
それは文字通り幸せな時間だった――。
ゴールデンウィーク編終了です!
明日からまた学校です!




