迷子の未来と絆
一方その頃――。
義孝、由衣と別れた後に、三沢、実花、新井は……。
『迷子』になった2人を捜して、人通りの少ない裏路地いた。
(こ、これは一体どうすればいいんすかね……! 兄貴ぃぃぃ!)
そんな中、新井は自分が崇拝する義孝に心の中で助けを求めていた。
それもこれも……未来と絆が『迷子』になったからだ。
楽しく5人でご飯を食べ、カラオケに遊びに行くはずだった……しかし、そうはならなかった……この場に絆と未来の姿はなく、残りの3人は慌てふためいた。特に意外にメンタルが弱い三沢が……。
「やべえええ! どうすんだよ! あいつらとはぐれた!!」
「三沢ッち! どうしよう! 未来ちゃんと絆ちゃんは手を繋いでたから、一緒だと思うから大丈夫だと思うけど……パパに怒られちゃう!!! ……あっ、それはそれでいいかも……SMプレー……くすっ」
「実花! こんな時に何を頬を染めてやがるんだ!! くっ、確かに未来がいれば安全だが……だけど、ならなんで未来のスマホにでねぇんだ!」
「み、三沢さん、実花の姉御……いったん落ち着きましょう!」
新井はふたりを必死になだめるが……実花と三沢は今にも心配し過ぎて死にそうだ。いや、実花は楽しんでる感じだが……その点を含めて新井には手が負えない状況だ。
(あ、兄貴助けてください……)
新井も確かに絆は心配だ。だが、未来が一緒にいるのは確定なので、2人よりは冷静だ。今ではその冷静さが悲しいが……。
「すぐに2人を見つけるぞ!! たぶん2人は誘拐されたんだ! 実花! 今すぐお前らの爺さんに連絡して、ヘリと重火器を用意してもらってくれ!」
「誘拐! み、未来ちゃんならありえる……! お爺ちゃんなら身代金で小国が買えるぐらいは平気で出すし! ……まあ、実際はそこまで心配しなくてもいいと思うけど。たぶんスマホの電池が切れてるだけだし。でも、心配しないと鬼畜な姉みたいだし驚いておこう……わあああああ! 大変だあああああああ!」
「実花の姉御おおおおおおお! 全部言葉にでてるっすよ!! そう言うのは隠してくださいよ!」
「てへぺろ」
「ことを大きくしないでくださいよ! 三沢さん心配で死にそうなんすから!」
竜胆家の事情と実花未来の祖父のことを考えれば……実花が言うことは間違いではないのだが……竜胆家の事情を知らない新井には実花が悪ふざけしてるようにしか見えなかった。
「さて、心配もしたことだし、新井君、三沢ッち、行こう~~」
「実花! お前、未来と絆の居場所わかるのか!」
「うん~~私に任せて~~発信機……おっと、愛の力で未来ちゃんの居場所は果てでもわかるから~~」
「い、今発信機って言わなかったすか?」
「はてはて〜なんのことこかなぁ〜」
実花は先ほどまであれほど取り乱していたのに、今はケロッと次の行動を決めていた。
「…………」
(さ、さすがは兄貴の娘……言動がトチ狂ってて行動が大物過ぎる。はんぱねぇ……)
新井はそんなことを考えながら、取り乱す三沢を引っ張って実花の後を追った。
◇◇◇
同時刻――。
その迷子になった未来と絆は駅前のベンチで2人仲良くソフトクリームを食べていた。
「絆さん……美味しいですか……?」
「うん! あまくておいしい! みきちゃん、かってくれてありがとう!」
「いえ。そうですか……ふふっ、それはよかったです」
未来は無表情で笑い声を出して、自分もソフトクリームを舐め、嬉しそうにソフトクリームを食べる絆を見る。純粋に可愛いと思う……。
未来は常に無表情で周りから冷たい人間だと誤解されやすい……特に子供には避けられることが多い……だが、内心では小さい子は大好きだ。
会う機会の多い絆に対しては、本当の妹の様に溺愛している。
(由衣もこれぐらい素直なら可愛いのですが……はぁ、それにしても迂闊でした。スマホの充電を忘れるなんて……まあ、お姉ちゃんが『発信器』を辿って見つけてくれるから、ここで待ってればいいですね)
未来は姉への信頼を胸に、軽い気持ちで周りを見渡す。
すると、ふと真横から視線を感じた……絆がニコニコしながら未来を見ていた。
「ん? 絆さん、どうかしましたか?」
「ねぇねぇ! みきちゃんきいて! おじちゃんとまんまなかよしだよね!? まんまいつもいじちゃんのおはなししてるの!」
「…………」
未来はいつもの無表情で言葉に詰まる。未来としては何が何でもイエスとは認めたくはないのだが……。
「はははっ、ふたりはなかよしぃ~~」
「…………」
父親大好きな未来も、さすがに小さい子の意見を頭ごなしに否定することはできない……それが例え、心の底から否定したい言葉でも――。
そして、幼さとはある意味残酷なのかもしれない。
「まんまとおじちゃんはけっこんするの! それでおじちゃんはきずなのぱあぱになるの!」
「…………」
未来は頭を抱える……。
(くっ、由衣……ここまで卑劣な手を使うなんて……小さい子供を利用するなんて……絆さんが父親に憧れる気持ちは嫌というほどわかります……簡単に否定は……したくないですね)
「…………」
(こ、これはある意味、既成事実よりも厄介です……。ここまでくると由衣を軽蔑よりも尊敬します……そこまでお父さんのことが好きですか……そうですか……あ、やっぱり憎いです)
「ふふふ~まんまとおじちゃんはなかよし~~」
(さて……わ、私はどう答えたらいいんでしょうか……)
未来は実花が見つけてくれるまで、頭を悩まで続けたが……結局否定することもできなかった……。
そして由衣に『夜、お話があります』というメールを送りつけた。




