勝負の幕開け(2)
「それじゃあ、縄跳び回すよ~~~! ぐるぐる腕が千切れるまで!」
「いえ、そこまではしませんが……はい。ここは任せてください。双子の相性の良さを見せます」
スポーツセンター前にある大きな公園内部の運動場にて、実花未来が大縄跳びを持って気合を入れていた。
正直、俺の子供の遊びのような意見が通ると思っていなかったのだが……意外にも皆やる気満々だ。
「よし、テンチョー、始める前にルールを決めるか?」
「ルール? 普通に全員でただ社畜のように、飛ぶんじゃないのか?」
「ちっちっ、勝負事をするって言っただろ?」
三沢が楽しそうに指を振る。おい、大縄跳びで勝負事……なんか嫌な予感がするんだが……。
だが、そんな危険察知能力がずば抜けているのは俺だけのようで――。
「へぇー、麻衣さん、なんか面白そうですね」
「ふっ、音無、後で泣いても知らねぇからな。この勝負、兄貴に圧倒的な勝利を!」
「きずな、おじちゃんのかっこいいとこみたい!」
「おお、チビ助! わかってるじゃねぇか!」
「もうぅぅ、きずなチビじゃないもん! おじちゃんがんばれ! あらいくんにまけるなあ!」
なんか知らんけど他のやつらはこの不穏な三沢の言葉の後でもモチベが落ちていないようだ……。
はぁ、俺だけぶーたれても空気が読めない感じだし……しょうがないか。
「三沢、勝負ってどうするんだ?」
「うーん、そうだな……100回飛ぶまで帰れないをやろう」
「……それのどこが勝負事なんだよ……ただのマゾプレーじゃねぇか」
「何いってるんだよテンチョー。どこからどう考えても勝負事だろ……自分自身とな」
ドヤ顔やめろ。
と、とにかくそんなドMプレーなんて御免だ。走るよりしんどいじゃねぇか……ここは大人の知恵をを絞ってかわそう。
「き、絆ちゃんには100回なんて辛すぎるだろ」
「あっ、絆なら……」
「きずなはまんまとおじちゃんのおうえんをするの! それで数をかぞえるの! まいちゃんが、いいおんなはみまもるものだっていってた!」
「ふふっ、絆見ててね。ママ、頑張るから」
「うん!」
「と、言うことだ。テンチョー諦めろ」
だからドヤ顔やめろ。
「…………」
こいつ、幼女を洗脳してやがった……。
絆ちゃんはキラキラとした羨望の眼差しを俺と由衣に向けている……というか、由衣は母親だからわかるけど、なんで俺は絆ちゃんの信頼を勝ち得ているんだろうか……。
「ふふっ、店長」
「ん? なんだ?」
由衣が楽しそうに俺に笑みを向けてくる。それはどこか悪戯っぽいように思えた。
「くすっ、絆の夢を壊さないように頑張りましょうね?」
「……勘弁してくれ……」
まぁ、見苦しく取り乱しだしたが、冷静に考えたら所詮は子供の遊び縄跳びだ。大人様にかかれば100回なんて瞬殺だろう。
「ああ、そうだテンチョー。それだけじゃつまらないから、引っかかった奴は十二支のものまねをしようぜ。テンチョーはドラゴンのものまねな」
「ふざけんな。一番難度高いじゃねぇか!」
「あっ! それならパパ! パパがミスったら私と未来ちゃんもエンシェントフェアリードラゴンのものまねするよ」
何それ! 逆に見てぇ!
というか、さらにプレッシャーかけるなよ。
まあ、それはともかく……大縄跳びでチームワークを高めることができれば、体育祭でも好成績を残すことができるはずだ……。
ちなみにこの後、俺は凄まじく体力を奪われることになる……大縄跳びを子供の遊びと馬鹿にしていたのが俺の運のつきだった……。




