勝負の幕開け(1)
それから俺たちはスポーツセンターの受付までやってくる。
バスケ、フットサル、水泳、卓球、バトミントンなど様々な運動ができる設備があった。
休みということもあり、受付は大勢の人でにぎわっている。
ちなみに言い出しっぺの三沢とわくわくの冒険心が止まらない絆ちゃんは周りの施設を見に行った。
そして三沢はーー。
『あたしは絆を冒険の旅に連れてくぜえええ』
『わふうううう、まいちゃんやったああああ!』
『と、いうわけだテンチョー。みんなが何をやりたいか聞いといてくれ!』
「…………」
知ってるか? 人はあれを丸投げと言う。社畜の時に毎日のようにくらっていた。やるのは好きだが、やられるのは嫌いだ。
ふざけんな。俺を含めて個性的で頭のおかしい連中の意見が簡単にあうと思うなよ。
「兄貴、愚民どもがゴミのようすっね。バスケやフットサルとかは難しそうっすね」
と、大勢の人間が近くいるのにイキった発言をする新井君。だが、新井が持つ天性の小物感のせいか、うっとおしくみられるどころか、微笑ましいものを見る視線が集まる。
そんな視線に耐えられなかったのか、由衣が呆れ顔でため息をつく。
「いきなり変なことを言わないでください。まったく、その手の冗談は店長だけで間に合ってます」
「ああん? 音無、それの何が問題があるんだ? 兄貴と一緒とか最高じゃねぇか」
「新井さんと店長では言葉の重みが全然違いますけどね」
「はん! 何を当たり前のことを言ってやがる! 俺なんかミジンコと兄貴を比べるとかおこがましいぜ」
「それはそうですね」
「はっ!? 音無の癖にわかっえるじゃねぇか! クックク」
由衣と新井はいつも職場でしてるようなやり取りを始める。
相変わらず、意気投合してるんだが、喧嘩してるんだがわからんやり取りだな……。
「……どうでもいいけど、俺に飛び火させんなよ」
「そうだよ! パパの最強談義なら! 別の場を設けようよ!」
「そうですね……みっちり6時間会議室でも借りてやりましょう。お父さんもそれでいいですね?」
よくねぇよ。
うむ……やっぱりハイパーカオス状態だな……これであれだろ?
三沢が帰ってきた時に何も決まってなかったら俺が怒られるんだろ?
やってられるか……理不尽の極地だ。だが……ここで投げ出したら社畜は務まらない。理不尽に抗う……というか、理不尽を気にしないように日常にするのが社畜の人生だからな……。
「はいはい、そんな奇抜選手権一位のイベントはしない」
「パパぁ~そのネタつまんなーい。奇抜選手権とかどういうこと~」
よし、お前は後でいじめてやる。泣くまでユルサナイ。
「いいから、何したいんだよ?」
「うーん、私はみんなでバトミントンの勝負したいかなぁ」
「お父さん、私はバレーボールがしたいです」
「俺はバスケっすかね!」
「店長、私は卓球がしたいですね。それなら絆もできそう……」
「…………」
てめぇら、協調性って言葉知ってるか……? ま、まあいい。ここはじゃんけんでもさせて適当に……ん? 待てよ。ここで新井が勝ってバスケでもやることになって見ろ。
(あんな常に走ってるスポーツ……死ぬぞ俺。ここはまとめ役の権力を存分に発揮する場面じゃないのか?)
俺は生き残るために周りをきょろきょろして、体力がミジンコな俺でも楽しめるスポーツがないかを探す。き、絆ちゃんもいるんだから平和なのがいいよな。
うん……。決して幼女を盾にしてる訳じゃない。
そして、俺は平和的なスポーツというか……『遊具』を見つけた。これなら絆ちゃんも楽しめるだろう。
「諸君。今から『大縄跳び』をします」
そう俺は宣言する。
まあ、これをスポーツと呼んでいいのかは微妙なところだけどな……実際みんなの反応は『お前逃げたな』という非難の目が多い気がするしな。た、楽しけりゃいいんだ楽しけりゃ。




