運動不足を呪って(1)
それから俺と音無親子は待ち合わせ場所で三沢、新井と合流した。
ちなみに写真の一件は近くの売店で買い物をしていた三沢に見られており、死ぬほどからかわれた……。
まあ、その分は絆ちゃんは嬉しそうだったし、由衣も写真の絆ちゃんが可愛いのか……しばらく、はしゃいで俺や三沢に写真を見せてきた。
さらにちなみに俺が絆ちゃんを肩車してる写真は俺の顔が半分に割れてたりするので、俺からすれば軽いホラーに見える。
将来絆ちゃんがあの写真を見てトラウマにならなければいいなと思う今日この頃。
というか見せられた絆ちゃんの写真30枚以上あったんだけど、いつのまに撮ったんだよ。愛し過ぎだろ……。
まあ、でも……今はそれよりも大きな問題がある。それはーー。
「はぁはぁ、はぁはぁ、し、し、死ぬ」
俺は芝生に座り込む。
少しランニングコースを走っただけで、死にそうになっていた。
マジで歳には勝てない。体力がなさすぎる……。ん? あれ、俺若い時も体力なかったか……?
「兄貴!!!!! 大丈夫っすか!!! 傷は浅いっすよ!!!」
「騒がないでください! 店長の体力はもう限界なんです! もうプランクトンぐらいの呼吸しかしてないんですから!」
「ああん、音無! てめぇ! 兄貴を馬鹿にすんじゃねぇ!」
「たくっ、テンチョーは情けねぇな! たかだか数キロ走っただけじゃねぇか」
「おじちゃん……だいじょーぶ?」
集合した俺たちは音無さんの娘自慢を聞いた後、スポーツセンターの更衣室で着替えて、まずはランニングコースを走ることにしたのだが……。
これが間違いの始まりだった……。
そういえばこいつら全員若者だった……由衣に関しては10代だしな……。というか、いくら若いからってなんでこいつらはケロッとしてんの?
(軽く5、6キロは走った気がするんだが……)
三沢なんか絆ちゃんをおぶって走ってたんだぜ……。
「この、体力お化けが! こちとら普通の人間様なんだよ。普通の人間様に合わせてメニューを作りやがれっていうんだ!」
「テンチョー……その歳でいじけんなよ」
俺の魂の叫びに冷めた目で「こいつダメだ」みたいで見てくる三沢。
そんな情けない俺を見て由衣が俺と三沢の間に入りかばってくれる。
「て、店長も頑張ってるんですから、そんなに責めないであげてください」
おお、音無さんが俺のことを守ってくれている……いつもは真っ先に俺のことを怒るのに。
「由衣、テンチョーは甘やかしたら、どこまでも増長するから、そういうのはよくないぞ」
「お前俺の母か」
まあ、三沢の言うこと自覚があるんだけど。
「で、でも、たまには甘やかしても……」
「そ、そうだぜ! 兄貴にも偶にはやすらぎが必要なんだぜ!」
「おじちゃんをいじめちゃだめ!!!」
おお、仲間が増えた! これこそ俺のカリスマ性がなせる業か! ふっふっふ、困っちゃうなぁ。
「はぁぁ、テンチョーが調子に乗ってるぜ……でもよぉ、お前らこのままだとテンチョーは長生きできねぇぞ……?」
「…………」
「…………」
「…………」
俺の弁護をしてくれていた3人が顔を見合わせる……あっ、なんか嫌な予感。
「ま、麻衣さん……その心は?」
「だってよぉ、少ししか走ってないのにこの様だぜ? 明らかに運動不足だろ。運動不足からなる病気もあるしな」
「ま、待て、俺は運動不足じゃなくて、体力がないだけ――」
「店長……!」
座ってる俺を取り囲む3人……さっきまでは味方だったのに……。
「走りましょう! 虫の息になるまで! 身体は壊してからでは遅いんです!」
いや、走ると身体を壊しそうなんだけど……。
「ああ、音無の言うことを聞くのは屈辱でしょうけど、今回ばかりは奴の言う通りっす! くっ! なんておれは無力なんだ……」
何でお前は泣きそうなんだよ。
「ううう! おじちゃん! よくわからないけどがんばって!」
お前は空気にのまれすぎだろ……。
はぁ……走るか……。




