体育祭に向けて(4)
その翌日――。
土曜日が休みというのは素晴らしい……遅くまで寝ていられる。最近俺は休日出勤という負の事象に囚われていたからな。
この自由を盛大に謳歌しよう……と、思っていたのだが。
『ピピピピピピピピピ』
だが世の中は残酷だ。今朝6時だぞ……休日に起きる時間じゃない。
人間は本当に望むものはそう簡単に手に入らない。俺はただ安眠をむさぼりたいだけなのに……。
そもそも早朝の電話は俺の心労が大きくなるだけなことが多い。前の如月の電話とか。こうなりゃ無視して……。
「んんーー……お父さん。電話うるさいです……むにゃ」
その時、一緒に川の字で寝ていた未来がむくりと身体を起こす。いきなりの着信音で起こされた所為で無表情ながら少し不機嫌そうだ。
だが……寝起きということもあり、ぼーっとした顔で、衣服も少し乱れている。
なんというか……だいぶ慣れたつもりだったけど……無防備で無駄にエロいな。俺はこんな奴を横によく熟睡できるもんだな……歳かな。
今度風俗に行こう。
「パパ……? むにゃ……」
「あ、ああ……悪い。起こしちまったか?」
実花まで身体を起こす……そしてこっちを見つめてくる。どうやら寝ぼけているようで、瞳が虚ろだ。
実花は朝弱いからな……寝ぼけて訳のわからんことすることあるし。
……と思ったら……いきなり抱きついてきて俺のことを布団に押し倒す。そして俺のTシャツをめくり……乳首をペロリと舐める。
「!?!?!?!??!?!?!?!?!?!?!?」
「……汗の味……ちょっとしょっぱい……ぺろぺろ」
突然の娘の奇行に早朝ということで叫ばなかった俺を褒めてもらいたい。マジで。
お、おい。
「や、やめろ、実花……」
「何で……? れろ……今ぴくっとした……かわいい」
ぼーっとしたのまま、俺の乳首を可愛がる実花。
「…………」
だめだ。どうしよう……。
い、いやさっさと引き離せばいいんだけど……俺も寝起きのためか、思考回路が馬鹿になっている。引き離すのはもったいないような……。
「ふぁああ、お父さん……」
「い、いや、違うんだ未来。俺は少し葛藤してるだけで……」
葛藤している時点でアウトな気がするが……。
「いや……パパがお姉ちゃんはいちゃちゃしてるのはいつものことだからいいんだけど……私も混ぜて欲しい」
俺そんなにいつもイチャイチャしてるの!?
「それよりも早く電話に出なよ。むにゃ、どうせ電話は今日の練習で浮かれてる由衣なんだし……あんまり音鳴らしてると夢野さんに迷惑ですよ?」
「…………すみません」
やばい、何も言い返せなかった……。
未来様の言う通りです。はい。
「私とお姉ちゃんはあと2時間ぐらいしたら応援に行きます……」
そう言うと未来は二度寝を始める。
今日の練習のことや由衣の件を昨日の夜娘たちに話したら神妙な面持ちで「邪魔はできない」と呟き、渋々応援だけすることになった。
(別に邪魔でもないと思うけどな……従業員たちもお祭り気分なんだし)
でも……由衣の件、飯に行くことに未来が反発しなかったのは意外だったな。それどころか絆ちゃんの面倒を見てくれるらしいし。
……思ったよりも由衣と仲が悪くないのか……?
それとも親離れ……はないか。自分で言うのもなんだけど、俺愛されまくりだし。
そのせいで別の問題が発生しそうだけど……娘に手を出すとか人間としてお終いなので頑張りたい……っと、電話に出ないとな。
「もしもし……」
俺は乳首を舐めている実花を引き離し、布団におろして、着信に出る……。
『あっ……由衣です。店長やっと出ましたね』
あっ、未来の言う通り、電話は由衣か……モーニングコールしてくれたのか。
はぁ、俺もそろそろ準備するかね。
『店長そろそろ準備しないと――』
「パパぁ、ズボン脱がしてもいい……?」
『…………』
「…………」
バカ娘は俺のズボンを掴みながら、寝ぼけ眼で頬を赤く染めているが……力尽きたように二度寝した。
い、今の由衣に聞こえてたか……?
『……変態』
それだけ言うと、由衣は電話を切る……俺は何か悪いことをしただろうか……。
いや……実花も寝ぼけただけだし……怒るのは大人げないのだが……。
「はぁ……」
俺は悲しい気持ちながら出かける準備を始めた。




