一夜明けて(2)
『先輩~私は外の自販機でコーヒー買って待ってるんで、女の子の寝姿を楽しんだら来てください~』
という、後輩のありがたい心遣いを頂いた俺は、自分のコートを取るためにリビングにやってきた。
「さて……俺のコートは……」
うむ、改めて明菜の家のリビングを見渡す……。
酒の空き容器や、料理がのっていた皿などが散乱しており、お世辞にも綺麗とは言えない状況だ……まあ、この狭い部屋で5人で大宴会をしていたのだから仕方がないか……。
後で片づけを手伝おう……。
(…………みんなすげぇー無防備だな。い、いや……フレアさんは別か)
壁にもたれかかり、一升瓶を抱きながら瞑想するように眠るフレアさん。
まるで銃を抱きながら眠る兵士のようだ。
不用意に背後立てばやられる……そんな雰囲気をかもし出していた。
(こっちはこっちで……一応男がいるのがわかっているのだろうか……)
2人仲良くベッド寝ているアヤメと明菜だ。可愛らしく寝息を立てていて、微笑ましいのだが……それと同時に2人共、かなりハイレベルなナイスバディ―なのに……寝返りとかうっている影響か……衣服がかなり乱れている……。
ああ……アヤメ、これ以上寝返りをうつと……中央の突起が見える。
明菜は明菜で……自分の家だからって薄着過ぎだろう……信用されているのかもしれないが……短パンから伸びる足がとてもエロい……。
(あれ……? 明菜何かに抱きついて寝てるな……あれは服? しわになっちゃうんじゃないか……ま、まあ、でも今はそれより……)
そしてさらに――。
「うぅ……んん……………ん………」
(艶めかしい……寝息がかなり耳に毒だ……)
俺は1つの真理に辿り着く、こいつらは寝ていてもエロい。
さて……もう観察は十分楽しんだので、さっさとコートを取るか。葵ちゃんも外で待ってるしな……。
「ん? あれ? コートが見当たらない」
ベッドの横あたりに置いていた筈だが……。
酔っ払ってどこかに移動させたか……? でもどこにもないけど……。
「義孝様……おはようございます」
その時、戦場の傭兵のように目を閉じていたフレアさんが、あたたかい笑みを浮かべながら話しかけてくる。
「あ、おはようございます、フレアさん。起こしちゃいましたか?」
「いえ、私は周囲10メートル以内で生物が動くと、目を覚ましすので、どうかお気になさらず」
「あ、そ、そうですか」
フレアさんは嫌味を言ってるような雰囲気はまったくない。
むしろ、俺に気を使わせてしまったのを申し訳なさそうにしている。
「義孝様、この体質は目障りでしょうが、どうかご容赦くださいませ。そのかわり、不審者が現れましたら瞬時に血祭りにしてご覧に入れましょう」
「ほ、ほどほどにお願いします」
「かしこまりました。義孝様がそう仰られるなら」
仰々しく俺にかしずくフレアさん……。
……この人は生まれる時代を間違えたのではないだろうか……。
「義孝様。コートでしたら、マダムが手にしております」
「えっ?」
俺はフレアさんに言葉を聞き、明菜の方を見るとーー。
「ふふふっ………んん、はい……むにゃ……食べますぅ」
明菜は可愛らしい寝言を呟きながら、服にぎゅっと抱きついている。
よく見ればあれは俺のコートじゃねぇか。
「マダムが寝ぼけまなこで拾っていました。とても幸せそうだったので、お声がけはしませんでした」
「そ、そう……」
ベッドの近くに置いていたから抱きマクラがわりにされたのか……。
自分がいつも着ているコートが明菜の胸が押し付けられている……なんだか、とても照れくさい……。
外に出るから……コートは返して欲しいんだけど……。
「えへへ……むにゃ……えへへ」
とても幸せそうだ……。
はぁ、家隣だし別のコートとってくるかな。
俺は小さく笑い、その場を後にした。




