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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第2章『夢見る時間』
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夢のバレンタイン(19)

   ◇◇◇


「よし、俺の話を聞いてくれるか……?」


「あぁ……う、うん」


 俺は改まってストーカーに向き合う。彼女は怯えてるような視線をこちらに向けてくる。

 ……まあ、そりゃそうか。

 この人、いまだにフレアさんにアイアンクローで身体を拘束されて、さらには余った手で、ナイフを首元に添えられている。


 相当な修羅場を潜り抜けた人間でもトラウマになるレベルだろう。

 と、とにかくこのままだと話もできない……。


「ふ、フレアさん、そいつ離してもらってもいいですか……?」


「はい、かしこまりました。義孝様」


 フレアさんは俺の言葉にニコリと柔らかな微笑みを返すと、ゆっくりとストーカーの拘束を解き、まるで老齢の執事の様にすっと俺の少し後ろにつく。


 ……従順なのが逆に怖い。マジで……俺はなんでこの人の信頼を勝ち得たんだろうか?

 俺の見えないカリスマ性の賜物……じゃねぇな……そんなカリスマ性があるなら、社畜を10年以上もしていない。


 そんな俺の考えを読んだのか、如月が少し嬉しそうに口を開く。


『フレアもわたくしと一緒に貴方の仕事姿を半年見続けていたので、感じるものがあるのよ』


 なるほどね……待て、フレアさん校内にいたのか……全然気がつかなかったんだけど……っと、今はストーカーの件か……。



「くっ、あんた覚えてなさいよ! あんたなんか、さっさと警察に突き出してやるんだからっ! あんたは明菜様にふさわしくないんだから!」


 そんなことを考えていると、ストーカーが再び俺のことをキッとにらみつける。さっきまでは泣きそうだったのに……その切り替えの早さは尊敬してしまう。


 もう、俺に敵意むき出しだ……はぁ、学習しないな……俺は別にいいんだけど……背後から凄まじい殺気を感じるんだが……。


「ふふふふふふっ、義孝様、利き腕を切り落としましょう」


 やめろ!

 さすがはデスサイズ、思い切りの良さがはんぱねぇ!


「ひっ、そこの女! な、ナイフをこっちに向けるんじゃないわよ!!! あたしは先端恐怖症なのよ!」


 収拾つかねぇ。これじゃあ、まともに話もできない。


「フレアさん、俺は何を言われてもいいんで、見守っててもらえますか?」


 俺はフレアさんの方を見て、そう伝える。

 するとフレアさんは殺気を収めて、心配そうな潤んだ眼差しを俺に向けてくる。

 その顔は、まるで家族を心配しているように思えた。


「お、お言葉ですが……義孝様、御身はこのような社会のゴミにどうこう言われていい身分ではございません!」


「いや、俺は一般人だしな。将来もそんなに有望じゃないと思うぞ」


「いえ! 義孝様は将来この国の王となられる方です! 全てを得て君臨する支配者です」


 話が飛躍しすぎじゃねぇ!?


『フレア、的を得ているわね……さすがわたくしの部下だわ』


 お前は黙ってろや。


「ふっ、この国の王? はっ、頭でもわいてるんじゃないの!?」


 だよな!!!

 ストーカーと同意見なのは甚だ遺憾だが……今はこいつしか一般論を持っている奴がいない! なんだよ日本の王って! この国はいつから王政になったんだよ!


「くっ、まあいい、おいストーカー、えっと……」


「ふんっ、『秋村香苗』よ。明菜様の従順なる下僕よ!!!」


「…………」


 高らかに宣言するストーカーもとい、秋村さん。

 下僕ならストーカーなんてしてるんじゃねぇよ。


 まあ、ストーカーに正論を説いても始まらないだろう……ここは明菜から手を引いてもらう話をしてみよう……まあ、無駄だと思うけど……。

 だが、とにかく行動しなければ始まらないのが、社畜マンのつらいところだ。


「おい、ストーカーなんて辞めてまともに働けよ?」


「はっ! あたしは年収1200万よ。あんたと違って高給取りよ」


「…………」


 ……よく見れば、この女がつけているネックレスや指輪、時計はやたら高そうな物だ……。レインコートの下は高そうなスーツだし……。


 …………急に妬ましくなってきた。


「なあ、フレアさん、爪をはぐ拷問とかできる?」


「はい、お任せ下さい。数千の拷問を極めておりますので」


「ちょっと!! 話が違うじゃない!!! ぼ、暴力はしない約束じゃなかったの!?」


 そんな約束はした覚えはない。

 ……はっ! 俺は何を考えてるんだ。危ない危ない。

 こいつの年収を聞いた瞬間、感情がダークサイドに落っこちた。


 くっ……なんでこんな奴の年収が俺よりも高いんだよ。社畜時代の給料の4倍以上じゃねぇか。世の中間違ってやがる!


「はぁぁぁ、秋村さんは明菜が――」


「はっ! あんたごときが明菜様を呼び捨てにするんじゃないわよ!」

 

 めんどくせえ!


「ああ……明菜様が務めてた病院の患者さんだったんだよな?」


「ええ、そうよ! あんた如きにきかせるのは、癪だけど、聞かせてあげるわ!! あたしと、明菜様の運命の出会いをおおお!!!」


「…………」


 なんか……壮大な昔語りが始まりそうだな……1ミリも興味ないんだが……もしかしたら、説得するヒントがあるかもしれないしな……。


 …………警察に突き出すのは簡単だけど、明菜は穏便に済ませたいって言ってたからな。

 はぁ……自分で言いうのもなんだけど……俺って根っからの社畜だよな。

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