夢のバレンタイン(14)
「お、お前……どれだけ俺のこと調べたんだよ。明菜のストーカーのことまで……というか、フレアさん俺の家の近くにいるのか……?」
『ええ、貴方の護衛がどうしてもしたいと言っていたもの。よかったわね。あの子、貴方と別れてからずっと貴方の家の前で護衛しているわよ』
「お、おい、それは言ってくれよ…………」
『聞かれなかったもの。それにあの子がプライベートの時間を使ってしていることだもの。雇用主だからと言って口を出すのも野暮なのではないかしら……」
「それはそうだけどなぁ……はぁ」
俺はつい少し責めるような口調になってしまう……だが、如月は気することなく、淡々と言葉を口にする。
勝手に護衛をされても純粋に迷惑だ……このくそ寒い中……。俺の所為では一ミリもないが……罪悪感が……。
いや、今はそれよりも……ストーカーのことが大事か。
「それで? フレアさんはストーカーを捕まえたのか? 何でこのタイミングで……」
俺の予想ではあのストーカーは結構な時間このマンションの近くにいたはずだ。それをフレアさんがスルーしていたとは考えずらいのだが……。
『それが、ストーカーが『催涙スプレー』を夢野さんの部屋に投げ込もうとしたところを取り押さえたらしいわ。貴方フレアに感謝しなさいな」
「はっ!? あのストーカーそこまでやろうとしたのか!? それはフレアさんに感謝だな……」
すみません、さっきまで責めてたけど。
いや~、そこまでのやるストーカーだとはな……危ない、危ない、これはいずれ大ごとになったかもしれないな……マジでフレアさんに感謝だな。
『……何を呑気なことを言っているの? さきほども申し上げてたけど、フレアは身内に害をなす者には容赦しないわ』
「えっ……? な、何真面目な声で言ってるんだよ。いくらフレアさんでも、警察に引き渡して、はい、お終い。だろ?」
…………な、なんだ? 自分で言っててすごい違和感が。
あの戦場帰りのようなフレアさんが……そんな穏便に済ますか……? そんな考えがよぎってしまう……。
『あと、もう1つ言っておくわ。フレアは相手から情報を引き出す拷問技術をマスターしていて、戦場でついたあだ名が『デスサイズ』だそうよ』
「ストーカーの命があぶねええええええええええええ!!!!」
俺は通話をそのままんにして、ベランダを飛び出して、部屋の中に入る。
かなりドタドタして出たが、明菜はエロ本に夢中で俺の行動に気が付いていないようだ。
これは好都合!! 明菜とストーカーを合わせるのはまずいからな。
だけど――どれだけエロ本をガン見してるんだよ!!!
そんな感想を抱きながら、俺は明菜の家を飛び出した。
そのままマンションを出て、再びスマホを耳につける。
「お、おい、如月、フレアさんは何処にいるんだ」
『貴方の家の近くの公園にいるわ』
ここから近くの公園といえば1つしかない。ここから走って3分ほどだ。よしすぐに向かって――。
『少しお待ちなさいな。その前に大事な話があるわ』
「はっ!? 今緊急事態になんだよ!! フレアさんが犯罪者になるかどうかの瀬戸際だぞ!!」
『それは大丈夫よ。フレアがストーカーにどんなことをしても、如月がもみ消すわ。権力とはそういうものではないかしら』
「普通に怖い話してるんじゃねぇよ!!!」
権力の怖さは社畜時代に嫌というほど経験してるわ!
『そんなことよりも――』
そんなこと!?
『貴方に言いたいのは、わたくしは貴方が他の女生と寝いても気にしないわ。だから、帰って夢野さんとセックスしててもいいわよ?』
「はああああ!? お前はこの状況で何言ってんの!? お前一応は俺の嫁立候補者だろ!」
『ふっ、だからよ。如月の当主となる貴方が女の1人、2人、囲んでないでどうするのよ。もう少し当主として自覚を――』
「そんなものはねえ!!!」
俺は呆れを通り越して……頭痛がしてきた。頭痛い……酒いっぱい飲んだしな。
くそっ! これが終わったら浴びるほど飲みなおしてやる!
俺はそう決意して公園に向かって走り出した。




