夢のバレンタイン(13)
◇◇◇
『ピピピピピピピピっ』
「…………」
「…………」
相変わらず如月からの電話は鳴り続けている。
しかし、明菜は生まれて初めてのエロ本に夢中で着信に気が付いていない。どれだけエロ本の魔力に取り込まれてるんだよ……。
(まあ、いい。今のうちにまたベランダを借りて、電話をすませてしまおう。もう、さっきの下着は片付けていたし、大丈夫だろう……さっきと違って深夜だから静かにしねぇとな……)
「明菜、俺ちょっと電話してくるな」
「…………ええ」
俺は本を夢中で読んでいる明菜に一言断り、ベランダに出る。ちなみに明菜が開いているページはパイずり特集だ。
お前は一体なんの勉強をしているんだよ。興奮するじゃねえか。
(おっと……とりあえず電話に出るか、如月は時間に厳しいからな)
ガラッ。
俺はスマホを片手にベランダに出て、電話に出る。
すると――。
『…………はぁ、貴方電話に出るのが遅いわ。わたくしの電話には3コール以内に出なさいな』
「無茶言うなよ……俺はそこまでスマホに縛られる生活はしねぇよ。いいか、休日の業務電話は速攻で出る。なぜなら、休日明けの俺に返ってくることが多いからな。でもな、なんでお前からの電話をすぐに出なきゃいけないんだよ」
……こんな時間だから、少し当たるような言葉を口調なってしまった……すぐにまずい、と思い謝ろうとするが……如月は何故か機嫌がよさそうな声を出す。
『へぇ、わたくしは貴方の中で、もう気が置ける仲という訳ね。悪くないわ』
「…………」
なんか好意的に受け取られたみたいだ……俺が如月と話すようになってからトップクラスで機嫌がよくなった。
な、なんだか照れくさくなってくるな……。
「そ、それで何の用だよ。お前、早く寝た方がいいぞ……? さっきよりも声が体調悪そうだぞ……?」
『そうね……だいぶ眠いわ……でも、事情があって寝ることができないのよ』
お前は社畜社員か……? 半年前の俺を見ているようだ……社畜はプライベート時間を生み出すために睡眠時間を削るからな。
労働時間と睡眠時間だけの1日は精神的にかなり絶望するものがあるからな。
「まあ、本当に早く寝ろよ? それで……どうしたんだ? 俺の声でも聞きたくなったか?」
『ええ、そうね。わたくしが貴重な時間を捧げるのは貴方だけだもの。感謝しなさいな』
「…………」
からかうつもりで言ったのに……真面目な声で返されてしまった……調子狂うな……。
『くすっ、反応が可愛いわね。実にわたくし好みよ』
如月が悪戯っぽく笑う。
どうやら……全部計算ずくらしい。
「お前さあ、本当に高校生か……? もっと、子供っぽい反応しろや」
『貴方の好みがそうなら努力はするわよ? 努力は。でも、今のわたしくしも十分初々しいのではないかしら。わたくし、処女ですし』
「…………だ、だから、反応しづらいことを言うな」
…………そうか、処女なのか。ふ、ふーん……としか、言えねぇよ。同い年の娘を持つ身としては限りなくデリケート会話だ。
まあ、あいつらは毎日俺に処女である報告をしてくるけど。
親としてはほっとするような……そんな報告聞きたくないような……複雑な心境だ。
『ふふっ、貴方とのお話が楽しくて、本題を忘れるところだったわ』
「はぁ……なんだよ? 話って?」
俺がため息交じりにそう聞くと、如月は少しだけ声のトーンを落として話始める。どうやら真面目な話のようだ。
『フレアが貴方の家の近くで不審者を捕縛したわ』
「…………はっ?」
『おそらく、貴方と懇意な関係の夢野明菜さんのストーカーだと思われるのだけど、どうする? フレアは身内に害をなす者に厳しいから、放っておくと大惨事になるわよ?』
「…………」
そんなことを真面目に言う如月ちゃん……。
えっ? この話マジなの? お前事情を把握し過ぎじゃない?
ツッコミ所が多すぎておじさん何から口にすればいいか、わからないんだけど……。




