夢のバレンタイン(8)
『いらっしゃいませー』
コンビニは入ると店員の女性が俺に声をかけてくる。俺は店員の顔を見もせずに扉のガラスぞいの通路の一番奥にあるエロ本コーナーに一直線に進む。エロ本を買うコツは余計な行動をしないことだ。
店員の様子を見ながら店内をウロウロすると、それだけで不審者に見えるからな。
(さて……どれにするか、目的は明菜を恥ずかしがらせることだから、ぶっちゃけどれでもいい気がするが……明菜はエロ本初心だから、セミヌード写真集でも顔を真っ赤にしそうだし)
目の前には数十種類のエロ本が並べられている。JKものや大学生、コスプレ、痴漢、など様々種類がある。
エロ本がコンビニから消えようとしている世の中なのに、この店は随分とアグレッシブに攻めているな。嫌いじゃない。
「…………」
いざ買うとなると悩んでしまうものだな……エロ本を買うなんてどれだけぶりだよ……軽く10年は越えている気がする。
まあ、サクッと決めてしま――。
「…………」
『じぃ…………』
その時視界に、本棚の後ろにあるガラス越しにこちらのことを注意深く伺っている明菜の姿が映った。
その様子は真剣で真面目な顔で俺の手の動向を見ている……どんだけ興味深々なんだよ……。
俺の性癖が気になるのか、自分が今まで知らない世界だから興味あるのか、それとも明菜がエロいだけか……うむ。
俺の性癖が気になるだけはありえないな、嫌われてはいないと思うけど……さすがにそこまでは意識されていないだろう……多分。
人生経験多い先輩ぐらいの立ち位置だろう……。
『…………じぃ』
(おっと……早く選ばないと……ここは無難にJKものでいいか。この中では一番健康的な気がする)
俺はJKもののエロ本を手に取る……すると、明菜の顔が露骨に悲しみに染まる……。
(あっ、俺JKの娘がいるんだった……これはまずいか。じゃあ、次は痴漢ものを……)
持っていた本を戻して、次は痴漢ものを手に取っててみる。すると――。
『…………じぃぃぃぃぃぃぃぃ』
ものすごい呆れた目で俺のことを見てくる明菜さん。『お前、犯罪者にでもなるの?』と、言いたげだ。待て、むしろ痴漢という犯罪を起こさないために、こういうのを読んで欲求を満たすんだからな。
これはこの世に必要なものだ。
『…………じぃぃぃぃぃぃぃぃ』
まあ……それを女性に理解してもらうのは無理な話か……というか、痴漢を受け入れられても困る。うちの娘はマジで頭がおかしい。
むっ……それじゃあ、あえての外人ものか……?
『…………』
またしても悲しみに染まる明菜の顔……あ、この表紙の人、由衣にタイプが似てるな……顔は5倍ぐらい由衣のが美人だけど……。
……さすがに知り合いに雰囲気が似てるのエロ本はまずいか……。
そ、それじゃあ、この巨乳の姉ちゃんが表紙の本は……。
『……ニコニコ♪』
…………どうやら許されたらしい……なぜだ? 何? 俺はそんなおっぱい好きだと思われてるの? ……明菜、おっぱいにコンプレックスがあるから嬉しいのか?
(ま、まあ、いい。さっさと、会計を済ませてしまおう)
俺は巨乳のエロ本を持ってレジに向かう。ふっ、俺ほどの度胸を備えてる男にかかれば、カモフラージュで他の商品を買う必要もない。
なんなら袋などいらぬ。そのままでいい。
『いらっしゃませー! あれ……? お兄ちゃん?』
レジの前に行くと……見覚えのある顔が目に留まった……。
「なっ! あ、アヤメ……?」
お、お前! 何でこんなところで働いてるの!?
俺の驚愕を他所に……アヤメの視線は俺が持ってるエロ本に向かう、
「あはは、お兄ちゃんも好きでござるなぁーー」
無邪気に笑うアヤメ。
……どうやら、イージミッションだったエロ本購入は一気に難度が上がった……なんで俺は妹分相手にエロ本を買わなければいけないんだろうか……。




