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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第2章『夢見る時間』
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夢のバレンタイン(5)

『ピピピピピピピピ……』


「さて、どうしようか…………」


 今朝も同じようなことなかったっけ……。

 俺の気持ちとは裏腹に鳴り続けるスマホ……。どうしよう。めっちゃ出たくないんだけど……だけどなぁ。無視すると直接ここに来かねないんだよな……あいつ。


 それはそれで俺の手には余りまくる事態なので……ここは素直に電話を取るのがいいだろう。はぁ……酔いが冷めてきちまったよ……。


「……明菜、ちょっと電話してくるわ」


「あ、はい。ふふっ、新しいお料理用意してますね。そうだ、お仕事のお電話ならベランダを使ってもいいですよ~。この時間なら『黒崎さん』居ないと思いますし」


 黒崎さんとは明菜の隣、つまりは俺の二つ隣に住んでいる、おばさ……お姉さんだ。近所でスナックを経営している。

 俺とは15年近い付き合いになるが……ちょっと、あの人苦手なんだよな……俺。


 おっと……そんなことよりも如月か。あいつ時間とかにうるさそうだし。


 ガラッ……。


 俺は自分のコートを羽織い、リビングと繋がっているベランダに出た。


「…………さむっ」


 2月の突き刺すような寒さが、酔った頭を無理やり覚醒させようとしてくる……さっさと電話をすませるか。


「はーい、もしもし」


『…………電話に出るのが遅いわ。せっかくこのわたくしが貴方の身を『心配』してあげたのに……減点10点っていうところかしら。貴方はわたくしの時間がどれだけ貴重なのかわかっているの?』


「…………」


 いきなり減点されたんだけど……たくっ、今時は減点式よりも加点式の方がいいって、よくわからんニュースでやってたぞ。


「おい、心配ってーー」


『はぁ……まったく。もう少しはわたくしの時間を自由に使える自分の幸運を少しは噛みしめなさいな。大体あなたは自覚が――』


 俺の話を聞いてくれない……心配ってなんやねん。俺、命でも狙われてるの?

 ん? あれ……如月の声……?


「ん? お前、ひょっとして体調悪いのか? それか疲れてる?」


『えっ……? どうしてそう思ったかしら?』


「そんなの勘だ」


『……直感で生きてるわねあなた。如月を継ぐのだからもう少し理論的に生きなさいな』


 如月は少し驚いた声色だったが、すぐにいつもの毅然とした態度をとる……。


 やっぱり……その声はどこか疲れているように感じる。昼間会った時の自信満々な感じがない。うむ、ブラック会社で鍛えられた俺は他人の疲れには敏感だからな。

 ……そうしないと新人はすぐに辞めるし。あとは……美奈のことがあってからか……他人の体調が特に気になる様になったのは……。


『……はぁ、あなたに隠し事はできないってことかしら。さすがは未来な旦那様ね』


「おい、それははっきりと断っただろ? 如月も継がねぇぞ」


『今はね。私も言ったわよね。わたくしが卒業するまでに貴方をその気にさせて見せると。ふふっ、安心しなさいな。貴方が自分の意思で断るのならば、わたくしは深追いはしないわ』


「そうかい……はぁ、この話はずっと平行線だよな……」


『ふふっ、それともうひとつ、最初は貴方の家族事情を利用したけれど、もうあんな真似はしないわ』


「それは助かるけどな……」


 もう、俺ら家族の事情が漏れることに怯えなくてもいいのか……。

 まあ、ここはどんなに言い寄られても、大人の余裕を見せておけばいいんだ。


「それよりも、お前早く寝ろよ……体調悪いんだろ?」


『そうね……さっきまで厄介な『来客』があったからかしらね……』


「来客? へぇ、金持ちになるとそういうのも頻繁にあるのか」


『…………何を他人事でいるのよ。来たのは貴方の娘たちよ』


「…………へ?」


 あいつら、姿を見ないと思ったら、如月の家に行ってたのかよ……おい待てよ。


『…………戦争です』


 昼間の未来の言葉が頭で再生される……。

 おい、まさか……。


「う、家の娘たちが迷惑かけたか……?」


『ええ、愚痴になるし、こちらも悪いところがあるから、深くは言わないけれど、これだけは言わせてもらうわ』


「…………」


 よし、土下座の準備はできた。今明菜の家のベランダだけど……。


『ふたりともどれだけ貴方のことが好きなのよ……実花さんにはずっと貴方の自慢話を聞かされたわ。未来さんにはずっと威嚇されていたかしら。愛されてるわね……』


「あ、あいつら人様の家で何やってるの?」


 説教項目がまた1つ加わった。明日は説教カーニバルだ。


「本当にすまん……あいつらには言い聞かせておく」


『いいわよ。先に攻撃したのはこちらだもの。それに――くすっ』


 如月は悪戯っぽく笑う。それはいつも大人びてる態度の如月だが……歳相応の少女のような感じがして、可愛らしく思った。


『数年後の娘だもの。あれぐらいは許すわ。わたくし、自分にも他人にも厳しいけれど、身内にはとても甘いの』


「………お前も大概だよな……なんで同級生を娘扱いできるんだよ」


 俺の周りにいる女はデンジャラスというか、行動的というか……頭がおかしいというか……。


『ふふっ、誉め言葉として受け取っておくわ。それでは今日のことろは旦那様の申しつけ通り、早く休むことにするわ』


「おう、早く寝ろ。そういえばチョコありがとうな」


『あっ……あのチョコ食べてくれた? あれはわたくしが大好きな……おほん。またこの話は後日。それと『護衛』は任せなさいな。それではごきげんよう』


 如月は学生っぽくテンション高く喋ろうとしたが、それを自分で切り、最後お嬢様らしく取り繕って電話を切った。

 あいつも可愛らしいところあるんだな……ん? 護衛……? そう言えば電話の目的って結局何あったんだ?

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