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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第2章『夢見る時間』
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偽りの約束(3)

 俺は事態が全くのみこめないまま、ホテル内にある有名な和食料理屋の個室に連れてこられていた。


「…………」


「…………」


 20畳ほど高級感あふれる和室に俺と如月が向かいあって座っている。

 何を話したらいいかわらない不安感と、如月が放つ妙な緊張感のせいで俺の思考回路はポンコツに成り果てていた。


 この状況で冷静な行動ができるやつがいたら、そいつは神だ。


 そして、長い沈黙のあと、如月がすました顔で口を開いた。こいつに動揺は全く見られない……昼下がりのティータイムのようだ。


 なるほど、こいつが神か。


「早朝と言うこともあり、軽めな食事を用意しましたわ。それとお酒も。ご自由にお楽しみになってくださいな」


「こ、これが軽めの……」


 俺と如月の目の前のテーブルには豪華な食事が用意されていた。

 鯛の姿盛りに、生牡蠣、山菜の天ぷら、いくらとウニをふんだんに使った釜飯。


 何が軽めだ。貧乏人にとったら最期の晩餐と言われても不思議じゃねぇ……。


 それにあの日本酒……て、テレビで見たことあるぞ。確か一升瓶で数万円酒じゃねぇか……。


「…………」


 まあ、ここはお酒を頂きつつ、話を聞くのが吉なのではないか?

 人間、飲まなきゃやってられない時がある。そうしないと人間の精神は壊れてしまう時がある。俺にとってはそれが今だ。


 うむ。朝から飲む言い訳もしたし、頂こう。


「それじゃあ遠慮なく頂くか」


 俺はとっくりに用意されているお酒を手に取ろうとするがーー。


「お待ちなさいな」


「なんだよ。やっぱりダメなのか?」


「そうではないわ。貴方はそのままでいらして」


 如月はすました顔のままそう言うと、その場で立ち上がり、俺の隣までやってくる。


 妙に距離が近い……ふわっと香水のに香りが鼻をくすぐる。こいつ……身体は小さいけど、座り方1つとっても妙に色っぽい仕草をするよな。


「お、おい……」


「わたくしがついであげますわ。ほら、おちょこを持ちなさいな」


「あ、ああ……」


 俺は戸惑いながらも断るのは変な話なので、言われるがままおちょこを手に取る。


 トクトク。


 そして、如月がすかさず酒を注いでくれる……俺は娘の同級生に一体何をしてもらっているのだろうか……? ふと我に返るとマジで訳が分からなくなるな……。


「それじゃあ、頂く」


「ええ、お好きなだけ飲みなさいな」


 俺はおちょこを一気に煽る。

 その瞬間、喉に日本酒独特の風味が広がり、香りが花から抜ける。味は甘いようですっきりしていてとても飲みやすいが、その味は深く、決して水っぽいわけではない。


「…………美味いな」


「ふふっ、お口に合ってよかったわ。ほら、おちょこをこっちに出してもらえるかしら?」


「あ、ああ……」


 俺はまた言われるがままに、おちょこを如月の前に差し出す。とくとくっと注がれる日本酒。

 ……如月の和服という姿も相まって、日本酒をそそぐ姿はとても絵になる……。

 

(……ま、まずい。このままじゃ簡単に酔っぱらいそうだ。その前に『理由』を聞くだけ聞くか)


 俺はそう思い立つと、如月が日本酒を注ぎ終わったのを見計らって、緊張気味に口を開いた。どんな答えが返ってくるかわかったものじゃないしな……。


「な、なあ、なんで俺はお前とお見合いなんてしてるんだ?」


「それはわたくしがあなたを脅したからではないかしら」


「…………脅してる自覚はあったんだな」


「それはそうね。わたくし馬鹿ではないので。理由なのだけど……」


 如月はすました顔で言葉を続ける。


「貴方にはわたくしと夫婦になって欲しいの」


「なっ……!」


 思わず日本酒の入ったおちょこを落としそうになった。

 それもそうだろう……自分の娘の同級生にプロポーズをされたんだ。まだ宝くじが当たったって言われた方が現実味がある。


 だが……如月にふざけた様子はない。それどころか……照れた様子もない。ただの真顔だ。とてもじゃないがプロポーズをした少女の表情ではない。

 というか、これじゃあ、まるで業務連絡だ。


「お、お前正気か? お、俺みたいな一般人を掴まえて何が目的だ?」


「……『一般人』……『一般人』ね……」


 その時、俺が言った言葉が気にくわなかったのか、不機嫌そうに眉をひそめた。

 さっきまで……クールな態度だったから、いきなりそういう怖い表情に変わると場の空気が凍りついた感覚に襲われる。


「えっと……俺なんか変なこと言ったか?」


「いえ……貴方は悪くないわね……貴方の反応から『知らない』ことはわかっていたもの」


 今度は呆れたような、憐れむような表情をする……うむ、如月は未来と一緒のクール系だけど、未来と違って喜怒哀楽が表情に出やすいよな……。

 まあ、未来は一皮むければただの変態だけど。


「えっと……それで、知らないって」


「貴方……一部ではとても有名人よ? なにせ貴方『竜胆家』の次期跡継ぎだもの」


「…………はっ?」


 びっくりするぐらい初耳なんだが……。

 えっ……いつから俺跡継ぎになったの? えっ……!? はっ!?

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