バレンタインの幕開け(3)
ゴールデンウィーク中は不定期連載になります(時間もバラバラになるかと)
ご迷惑をお掛け致しますmm
2月14日早朝6時。
俺は前日の忙しかった仕事の疲れや、如月との一件での心労で、疲れて惰眠をむさぼっていた。
ちなみに我が家は1Kの狭いマンションなので、必然的に親子3人仲良く川の字で寝ている。
ポジションは未来、俺、実花で俺が挟まれる形だ。
最初はJKに挟まれて寝ているという意識が強すぎて、ドキマギしたが……人間とは不思議だ。すぐになれた。
「んんんん、ぱぱぁぁぁぁ、そこぉぉぉ」
「お父さん……そこはだめですぅ……うううん、あああ」
「…………」
ごめん、エロい寝言は勘弁してください。悩ましく艶っぽい声を出すな。思わず観察したくなるじゃん。
(はぁ……娘たちの寝言なんて気にしてる場合じゃないな……寝れる時に寝よう)
人間疲れた時には寝るのが一番だ。特に今日は予定が目白押しだし。
午前中は如月主催のお見合い。
午後は実花未来とランチに行って遊びに行く。
そして夜は明菜と飲み会だ。
うむ。どの案件ももれなく美女が絡んでいる。俺はいつからモテモテに……っと思ったが、実花未来は娘だし、明菜はお礼で義理堅いからだし、如月に関しては意味わからんし。
……恋愛のことに無頓着な俺でもなんとなくわかる。これはモテているにとは違うのではないか……たぶん。
(ふぁああ、まだ……6時半……まだ寝られるな……)
まあ、そんなこんなで今日は予定がいっぱいだ。体力を補うためにもあと3時間は寝かせてもらおう……。
如月は「迎えをよこす」とか言ってたけど、どうせ10時とかだろうーー。
『ピピピピピッ』
その時、俺のスマホが惰眠を許さないとばかりに鳴り響く。
どうしよう……とっても嫌な予感がする。
「…………」
いや、ここは無視だ。無視。
休日の電話っていうのはろくなもんじゃない……ここは無視した方が……。
「…………」
でも……待てよ。元社畜の経験としては……ここは無視した方が大ごとになるんじゃないか……? どうせ仕事は誰も手伝ってくれない。
結局いつかは自分でやることになるんだ。そうなると早いか遅いかの問題だ。
……こういう責任感を逆手にとって会社を経営してる人間はマジで腐ってると思う。
「はぁ……もしもし」
俺は嫌々身体を起こし、スマホを手に取って電話に出る。
すると……受話器の向こうから昨日聞いた、少女の偉そうで不機嫌そうな声が聞こえてきた。
『電話に出るのが遅いわ。あなたはわたくしの時間の貴重性をわかっているのかしら? わかってないわよね? そのあたりの詳細に教えてあげたいわね』
「…………ふぁぁ」
朝からよくしゃべるやつだな……。
はぁ、やっぱり電話は如月お嬢様か……こいつどうやって俺の電話番号を調べたんだ?
くっ、なんか振り回されてばかりで腹が立ってきたな。いくら弱みを握られているとは言え文句ぐらい言っても罰は当たらないだろう……。
「おい、お前なぁ、今何時だと思ってる――」
『失礼、わたくしは貴方とお話をしている暇はございませんので』
「はぁぁ、元はと言えば、てめえが電話をかけてきたんだろうが……」
くそ、この生意気な小娘に言い返したい気持ちはいっぱいだが……ここは俺が折れた方が早そうだな……社畜精神の神髄はあきらめの良さにあるからな。
自慢できることじゃねぇけど……。
『話を続けるわね。貴方のマンションの前に迎えの車を用意しているわ。すぐに向かってもらえるかしら? ああ……服などはこちらで用意しているから、あなたは身1つで着ていいわ。それではよろしくね』
プッ。
くっ、あいつ言いたいことだけ言って電話切りやがった。
はぁ、弱みを握られている以上逆らえないしな……はぁ、とにかく行くか。
……機嫌を損ねるとまた無理難題を吹っ掛けられるかもしれねぇしな……。
「…………お父さん?」
俺が身体を起こすと、隣で寝ていた未来も同じく身体を起こして、眠そな目でこちらを見てくる。
……パジャマのボタンが半分ぐらいはずれていて……妙に色っぽいし。
「わ、悪い。起こしちまったか?」
「いえ……それで、お父さんは如月さんの元に行かれるのですね……脅されてセックスするの? 不潔です。気持ちいことをするの? 不純です」
「お前の頭の中の方が不潔だろ。話を重くするんじゃねぇよ……」
「それでは気持ちいことはしたくないんですか?」
「いや、めっちゃしたい」
「…………お父さんの馬鹿」
……今のトラップは仕方ない俺は本心を隠さない男だからな。まあ、人間としては最低だと自分でも思うけど。
「お父さん、そんなことされそうになったら、すぐに連絡してください。竜胆の持てる力を全てを使って……如月を滅ぼします」
「物騒なこといってんじゃねぇよ。おっかねぇな……」
まったく……こいつは寝起きでもぶれねぇな……ぱっと見は真面目で無表情だから下ネタの破壊力がすごい……。
まあ……でも、こいつなりに心配してくれてるのかね……。
「まあ、昼までには帰るから、飯に行く準備でもしててくれ」
俺はそう言いながら未来の頭を撫でる。サラサラとした黒髪の感触が手に伝わってくると同時に、未来が気持ちよさそうに目を細める。
「ふふっ……はい、待ってます」
未来は無表情ながらも、どこか嬉しそうに言った。




