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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第2章『夢見る時間』
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お仕事を頑張ります(6)

「お、お前、今なんて言った……?」


 初対面の人間から聞いてはいけない言葉が飛び出た気がした。そのせいで敬語も忘れて思わず聞いてしまう。


 そんな俺の態度を見て少女は短く息をはく。


「ここで話すことではありませんわね。少しお時間を頂けるかしら?」


 ……いや、あっちも敬語じゃねぇんだから、そんなに気にしなくてもいいか。てか、まあ……美少女のお誘いだ。しかもアイドル級の美少女だ。

 世の中の中年男からしたら、お金を払ってでもお喋りしたいと思うレベルだろう。


 だがーー俺は別だ。潜ってきた修羅場の数が違う。


「そうか、でも俺は忙しんだ。じゃっ!」


 俺は料理卓に乗っていた洗い物を手に取ると、そのままいい笑顔でその場を去ろうとした。

 いくら美少女とお話したいからと言って、この手の罠は危険だ。ふっ、俺だって学習ぐらいする。これは半年前実花と出会った時のパターンだ。


 いくら美少女だからって誘いに安易に乗るのは危険だ。むしろ美少女だからこそ危険だ。昔から言うだろう綺麗なバラには棘がある。それを娘たちが身をもって教えてくれたのだ。


 というか……頭がおかしいのはうちの娘だけで充分だ。


「ふっ……」


 しかし、俺が美少女に背を向けると背後から鼻で笑うような声が聞こえた。


「わたくしをないがしろにするなんて隅に置けない殿方ね」


 言葉自体は冷静だが、何となくゾっとするような声。まずいな……会って数秒だけど、俺の手には負えない系のやつだ……。


 本能的にそう察知する。俺の中の警報器がガンガンなってやがる。

 ここはとっとと、ここを去って――。


「このまま別れてもいいけど、娘さんたちのことを学校に知らせるわよ?」


「はっ……?」


 思わず振り帰る。すると美少女は真剣な眼差しでこちらを見据えている。ナチュラルに俺のことを脅しているのに嘲笑することも楽しんでいる様子もない。


 はぁ……ばらされて困るのは事実だしな……また、面倒なことになったな……。


 くっ、なんで俺の周りには無駄に行動力がありまくる美少女が多いんだ……。


「しょうがないな……わかったよ。その代わり貸しだからな。盛大に貸し1つだからな。孫の代まで怯えておけよ」


「わたくし、ここまで恩着せがましい人を初めて見ました……ふふっ、いいでしょう」


 そこで初めて少女が薄く笑う。身長や年齢には不釣り合いな妖艶な笑みだ。


「感謝します。わたくしの名前は『如月望きさらぎのぞみ』よ。以後お見知りおきを」


   ◇◇◇


 同時刻――。

 未来は台所に立ち、料理をしていた。義孝は飲んでくると言っていたので食事は必要ないだろうが……一応しめで食べられるおにぎりとお味噌汁を用意していた。


「未来ちゃん~ふぁあああ、おはよう……むにゃむにゃ」


 その時、リビングから実花が眠そうに目をこすりながら、ゆらゆらとキッチンへ歩いてきた。昨日徹夜したので今日休み時間に空き教室で寝ていた実花だが、寝足りなかったのか、帰ってすぐに布団に入った。


「あっ……やっと起きてきましたね」


 呆れながら実花を見る未来。


 未来としては『聞きたいこと』があったので叩き起こそうとも考えたが……幸せそうに眠っていたので……待つことにした。


「お姉ちゃん……さすがに生活が自堕落すぎますよ……はぁ」


「うぅ……パパが好きそうなゲームを見つけてやめるにやめられなかったんだよね……」


「それは興味があります。あとで教えてください。次の日が休みなら徹夜もいいでしょう」


「にゃははは、それなら後で一緒にやろうよ! 今度はお医者さんごっこ!」


「い、いえ……もうごっこ遊びはいいです」


 未来は義孝に痴漢ごっこをして怒られたのを思い出したのか、少したじろきながらおにぎりを作る……無表情だが、動揺しているのがバレバレだ。


 実花はそんな様子を楽しそうに見ている。だが、やがて何かに気が付いたのか、きょろきょろと周りを見渡す。


「あれ……? そういえばパパは?」


「三沢さんと葵さんと飲んでくるそうです。最近、疲れてたみたいだから丁度いいよ」


「ああ……、確かにね。くすっ、それで未来ちゃんはパパの夜食を用意してるわけだ。そのおにぎり、パパのだよね」


「お父さん喜んでくれるといいですけど……あ、そういえばお姉ちゃん」


 未来はおにぎりをお皿の上に盛ると、ラップをかけて実花の方を見た。


(さて……『容疑者』を問い詰めますか)


「もしかして『如月さん』に妙なことを言ってない?」


「…………」


 実花は未来の言葉を聞くと、表情が固まる。生まれてからの付き合いの未来には、それが間違いないことがすぐにわかった。


「…………お姉ちゃん」


 未来は自分でも驚くぐらい低い声を出した。

 自分の中に怒りの感情がわいてくるのを感じる。こんなにも腹が立っているのは実花が1人で義孝に会いに行った時以来だ。


 その理由は簡単、義孝にとって何かしらの迷惑がかかる可能性があるからだ。


「み、未来ちゃん……せっかくの可愛い顔が台無しだよ。もっとハッピーにホッピーに……『のぞみん』にはちょっと『借り』があって――」


「お姉ちゃん、正座して事情を説明して」


「……はい」


 実花は素直に正座をする。

 実花は知っているのだろう。家族が絡むと、未来は止まらないことを……。

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