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俺はJKの子持ちだったのか!  作者: シマアザラシ
第2章『夢見る時間』
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お仕事を頑張ります(1)

 明菜との偽デートから数日経ち、約束の2月14日を次の日にした金曜日、俺は朝早くから出勤していた。


 現在の時刻は朝6時。事務所どころか、生徒や職員すらまだ人がいない時間だ。

 ひたすら事務所で今月中日の売り上げを計算していた。この辺は元経理なのでお手の物だ。

 だが……。


「誰も来てない事務所で1人仕事とか何回経験しても悲しい気持ちになるな……」


 俺はいつもなら三沢や由衣が騒がしくしている事務所を見渡す。早朝なので当然だがとても静かで……それにまだ暖房がきいていないのでとても寒い……。

 その事実も俺の寂しさを増長させていた。


「はぁ……早めに終わらせてコーヒーでも飲むか」


 こんな時間に出勤しているのは別に俺が社畜だからという訳ではない。単に学食というのは朝が早いのだ。うちの場合昼1食の提供だが、食べ盛りのガキが数百人くるので、準備は朝7時から行われている。


 三沢や由衣たちもそろそろ来るだろう……。


 まあ、その分帰りが早い。何もなければ5時には帰れる。何もなければ……。

 今日みたいに懇親会がなければ……。


「どの会社にも残業はつきものだよな……はぁ、俺店長で管理職だから残業代出ねぇのに……」


 今日は演劇部の送別会が行われるらしく、夜に料理を提供する予定だ。それもこの学校の演劇部は全国区らしく、OBも来るのでその規模は100人ほどだ……。

 片づけを考えると余裕で9時を回る。


 それにうちは『とある事情』から従業員の人数を絞っているので業務に余裕はない。なので今日は休憩時間すらあるかどうか怪しい。


「…………」


 あれ……? 今日に限って言えば社畜なのか? ……ま、待て。落ち着け。


 俺は社畜という概念に地獄よりも深い憎悪を宿す身だ……その俺が社畜になっているわけない。そ、そうだよ。確かに残業代は出ないけど、休日出勤手当は出るし……給料だって前の会社の倍は貰ってる。


 だ、だから俺は社畜ではないはず……そ、そうに決まってる。

 

「…………」


 で、でも最近は季節がらか、懇親会が多くて休日出勤や残業も多いし……それに伴って……こうして出勤時間も早くなったな……俺去年までは7時出勤だったし……。

 あ、あれ……少なくとも1日の勤務時間は余裕で8時間を越えてるな……いや、でも労働基準法なんて守ってる方がおかしいと言われる世の中だ。ならばこのぐらいは普通――。


 で、でも、最近は残業時間も厳しくなって……あまり多いと会社が罰金を払わなきゃとか何とか……あれ? ……ここ最近で残業が逆に増えている俺は一体――。


「あっ、店長おはようございます!」


「ゆ、由衣!!!! 俺は社畜じゃないよな!!!!」


「わっ、い、いきなりどうしたんですか!?」


 俺は椅子から立ち上がり、事務所に入ってきた由衣の肩を掴む。

 当然、俺のいきなりの行動に由衣は慌てふためくが……俺にとっては自分の中にあるちっぽけなプライドを守るための壮絶な戦いだ。必死にもなる。


「た、確かに俺は早く来たり、残業したりしてるけど……前の会社比べたらお遊戯みたいなものだし……だ、だから社畜なんかじゃ……」


「お、落ち着いてください……前の会社ではどうだったかはわかりませんけど……て、てんちょうはしゃちくじゃ……ありません……」


 おいこっちを見て言葉を口にしろや。

 何で目を合わせようとしねえんだよ……まさか。


「由衣、正直に言ってくれ俺は社畜なのか?」


「ええー。そ、それを私の口から言わせます?」


「……なんだと」


 答えは得た。

 社畜のハードルも引くなったもんだ……そう考えると前の会社のヤバさがわかる。

 だって俺今の2倍は働いてたぞ?


 それで得たていたものが今の半分の給料……やばい泣きたくなってきた。


「げ、元気だしてください。私も麻衣さんもフォローしますから」


「ありがとう……こんなクズに優しくしてくれて」


「も、もう、泣きそうにならないでください。めんどくさいなぁ……まあ、可愛いからよしとします」


 最後の方は聞こえなかったけど、何でお前はそこはかとなく嬉しそうなんだよ……ていうか、なんでこいつもう出勤してるんだ?


「おい、お前来るの早くないか? サービス残業なんて一文の得にならないんだからな」


「……サービス残業漬けの店長がそれをいいます? 懇親会の準備を早めにすれば店長が休憩する時間が取れるんじゃないですか? ……えっとやっぱり迷惑でした?」


 申し訳なさそうに言う由衣。どうやら勝手に早くきたことを気にしてるようだ。


「散々泣き言を言ったけど、俺のことはいいんだよ店長様だからな」


 まあ、助かるのは事実だけど……。


「私なら大丈夫です。絆はお母さんに見てもらってるし、定時には帰りますから」


「…………」


 ……でもなぁ……下にサービス残業はさせたくないなぁ。うーむ。マネージャーの生名さんに残業代出せるか聞いてみるか。

 人件費結構絞ってるから嫌とは言わんだろう。

 この規模の現場で従業員が『4人』って頑張ってる方だと思うし。


「わかった。今日だけだからな」


「くすっ、店長ってお人好しですよね……」


「ん? どうかしたか?」


「いえ、なんでもありません。ありがとうございます。私着替えてきますね。ふふっ、少しならのぞいてもいいですよ?」


「馬鹿なこと言ってないで早く着替えてこい。来たからにはこき使ってやる」


「ふふっ、はーい」


 由衣は返事をあうると更衣室に向かって歩き出す。

 そに足取りは軽く、どこか嬉しそうに感じだった。

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