夢見るバレンタイン(6)
俺と明菜はマンションからゆっくりと30分ほど歩いて、目的である自然公園に着いた。この公園は駅の近くにあるのしては緑が多く広い。
広さも東京ドームぐらいはあり、日曜日なので子供や家族連れでにぎわっている。
明菜は公園に着くとおしゃれなハット帽子を被った。一応有名人だもんな、騒ぎになるのは好ましくないし。
でも……。
その程度の変装だとすぐ周りに知られてしまうんじゃないか? 俺と明菜が付き合っているというデマがストーカー以外に流れるのは好ましくない。
そう明菜に言うと……。
「大丈夫です。わたし『仮面系配信者』なので、帽子をかぶっておけば簡単には気がつかれないはずです。ふふっ、心配してくれてありがとうございます……そ、それにべつに……わたしは……」
と、顔を赤くされた。どういうこっちゃ。
それに仮面系配信者ってのが謎ワードだ。あと……顔がバレないならストーカーにアピールできるのか……?
まあ、本人の望む通りにさせればいいか。いざとなったらどんな無茶振りでもフォローに入る。社畜の心得だ。
「ふふっ、義孝さん、実花ちゃんと未来ちゃんとの生活はどうですか……いつも賑やかですよね」
「あっ……すまん、いつもうるさいよな」
「い、いえいえ! そんなつもりで言ったんじゃないですよぉ……ふふっ、いつも楽しそうでうらやましいって思っていますよ」
「実花に迷惑かけられたらすぐに俺に教えてくれ。あいつがコレクションしてるAVを片っ端からハンマーで破壊するから」
「み、実花ちゃん……AVをコレクションしてるんですかぁ……最近の子は進んでるな……」
そんな軽い? 話をしながらを俺はデート(偽)を楽しんでいた。というか……AVをコレクションしているJKなんて実花ぐらいだから。
まあ、いいか……それより――。
「それで……心当たりの相手って誰なんだ?」
俺は周りを気にしながら、本題を切り出した。危険な相手じゃないとは聞いているが、一応把握した方がいいだろう。
「あ、はい……すみません。もっと早く話すべきでした……つい、楽しくて」
「それは俺も同じだから気にしなくていいって」
明菜みたい美女とデートしてるんだから、実は一番の役得は俺だったりする……昨日までの明菜に避けられていたような雰囲気もないし、いいことづくめだ。
「ふふっ……そっかぁ、義孝さんも同じなんだぁ」
「? どうした? いきなり笑いだして……寒さにやられたか……?」
「くすっ、何でもないです♪ ちょっといいことがあっただけです」
……? まあ機嫌いいならいいか。
「それで、相手の話ですね。実は私が看護師をしていた時の患者さんなんです」
「えっ?」
明菜は困ったような笑みを浮かべながら言う。嫌悪感というよりはどう対処したらいいのかわからないといった感じだ。
「じつは何度か……家の近くで様子を伺っているのを目撃したんです」
「ああ……それで誰だがわかったのか……」
「ええ……実は以前から交際を申し込まれていて……もちろん丁重にお断りしたんですけど……それから職場とかにも来るようになって……根はいいひとなんですけど……」
なるほど……そこまで執着されてるなら帽子ぐらいの変装は意味がないかもな……。明菜はそれも計算してるのか……前々から思ってたけど……ぽわぽわしててぶっちゃけ馬鹿っぽいところもあるけど……意外としっかりしてるよな。
でも何よりも――。
「明菜って実花といい、変態にモテるよなぁ……優しいし」
「もうっ、義孝さん、自分の娘を変態とか言っちゃいけませんよ……?」
「いや、どうしようもない事実だし……」
あいつから変態を取ったら何が残るんだ。
「むぅ……実花ちゃんはいい子なのに……あっそうだ♪ ……えいっ」
明菜はいきなり俺の腕に抱きついてきた……ムニムニと大きな胸が俺の腕に押し付ける……はっ!?!? 何事!?!?!?
「なっ、いきなりどうした!!! 痴女に目覚めたのか!? これで金を稼いでるのか!?」
「ち、違います……こ、こんなことするの義孝さんが初めてです……だ、だって……実花ちゃんがこうすればストーカーさんを諦めさせられるってぇ……実花ちゃんはわたしのことを考えてくれるてるんです……変態じゃありません」
拗ねたように俺の腕に抱きつき続ける明菜……顔は当然の如く真っ赤だ。
ごめん、実花のやつそれ面白がってるだけだぞ……! というかまた最終的に得してるのは俺なのでは! この圧倒的なボリュウーム!!!
(というか……明菜こういうことするの初めてって……ま、まさかな。ここまでの美人がそういうことはないだろう……ないよな?)
俺はなんか公園という公共の場で思考のラビリンスに入ってしてしまった……。




