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お題その4 布と服について

こんにちは、書き溜めがなかなか進まず、消えていく貯金に恐怖を感じているブービーです。

だったらこんなの書いてるんじゃねえよというのは正論ですが、ぼくはミジンコなので思った時に書かないとすぐ忘れてしまうのです。


※なんだか適当にやりすぎて単位の記載方法がバラバラです、そのうち直すかもです。

今回は中世ファンタジーの中での服とそれを作るための布について考えてみたいと思います。


数ある異世界転移や転生で中世チックな世界に飛ばされるお話では、現代のような服を量産して大人気になり大金持ちとか、わりと見かける描写ですね。

確かに中世の服って布を何枚か重ねただけのものとか、変なかぼちゃみたいなパンツとか、変なタイツとか、そんなダサいイメージがありますよね(偏見)

実際には14世紀頃までの一般的な服装は、ローブと呼ばれる、ワンピースタイプのものでした。

14世紀中盤から、上着とズボン(といってもタイツタイプ)に分かれる服装が出てきたようです。


こんな中、果たして中世チックな世界に現代のような服を持っていたとして売れるものでしょうか。

例えば今の自分たちが、これ未来で流行ってるからと言われて銀ピカの宇宙人服のようなものを渡されたらどうでしょう、たぶん流行らないと思うんですよね。


とは言え服の進化とは別に奇抜な方向にのみ偏ったものではないので、恐らく流行る要素を含んだものも中にはあるのではないかと思います。

その辺は個々で妄想してみるしかないですよね。


人の好みというのは文字で表現するのはなかなか難しいものですが、新しい服が流行った経緯などを面白く描かれている作品などがあったら見てみたいと思います。あるのかな?



さて、人の好みは様々で、これを必要以上に考えていると何も出来なくなってしまうのでとりあえず置いておきます。

ぼくが見た作品の中では、主人公などが新しい服を開発し、わりと早く量産体制が整い、一般人に行渡って大人気に、というのがありがちでしたが、実際にその過程を辿るとなるとどうなるでしょうか。

ここからは服を作るうえで必要な要素を、各ステージごとに考えてみたいと思います。




「布の材料」


服を作るには布が必要です、布を作るには糸が必要です。

それでは糸を作るには…原材料となるものが必要ですね。

ここでは糸を作る際の原材料について考えてみたいと思います。


調べてみたところ、昔から使用されている糸の素材で代表的なものは以下の4つのようです。


羊毛ウール

亜麻リネン

シルク

綿コットン


中世のヨーロッパの気候は綿の育成に適しておらず、場合によっては綿は絹よりも高価だったとか。

原材料となる綿は、インドやアラブ方面から良質なものを輸入していたようです。

ヨーロッパで綿産業がウールを産業を抜いてくるのは18世紀になってからのようです。


最も流通していた素材はダントツでウール、次にリネンだったようですね。

絹はどこに行っても相変わらず高価で富裕層御用達の素材だったようです。


綿とか服の素材では定番中の定番だと思ったのに、まさかの地位逆転ですね。

もっともこれは風土によるものですので、中世風の異世界などであればどこで何を作っていようが問題ないと思います。ファンタジー万歳!


以下は各素材について少しだけ詳しく考えてみます。


羊毛ウール

羊の毛です、羊というと何となくヨーロッパって感じがしますね。

羊から刈った毛を洗って方向を整えて紡いで使用します。

羊は中世では山岳地域を中心に広い範囲で羊が飼われていたようです。

お肉にしてもおいしい羊ですが、実際には肉となることはあまりなく

乳を搾り、毛を刈りながら糧を得ていたようです。

通常は老衰や事故などで死んだりした場合のみ、その肉を食べたという事です。

肉は一度食べたら終わりですが、乳と毛は羊が生きていれば次々と取れます。

食料が豊富というわけではなかった中世では、肉は貴重品だったのですね。


※実際は中世初期は穀物の生産量や人口の関係から、食肉が主だったという話です

 この辺は後で中世の農業とか狩猟とかやることがあったら触れてみたいと思います。



亜麻リネン

麻の茎と表皮の間にできる細い繊維を抜き取って使用します。

麻はヨーロッパ中で生産が推奨された植物でした。

特に亜麻は高級麻であり、低質な麻(大麻)の5倍くらいの価値があったそうです。

一般的には下着の素材や一般人~貧民が使用する素材でした。



シルク

絹はカイコガと呼ばれる蛾の幼虫が作る繭が原料になります。

カイコガは太古の昔から人に飼われ、人に慣れてきた為、既に体が退化してしまい

1人で生きていく事ができない生物になってしまっています。

その弱弱しさと、白く可愛らしい成体の姿から隠れファンが多い昆虫でもあります。

カイコガの幼虫が成体になる際に繭を作ります、この繭は全て1本の糸で作られており、これを解いて絹糸を作るのです。

ただし繭を採取する場合は、幼虫が繭を作り中でさなぎになっている間にお湯を通して殺してしまうのだそうです、ひどい。



綿コットン

インド・エジプト原産の綿という植物の種子を包む白い毛(綿花)を紡いだもの。

ヨーロッパでは良質の綿が育たず、インド方面から良質の綿が運ばれてくるようになるまで、ヨーロッパでは綿織物は高級品でした。



こうして糸の原料になるものを調べてみると、今まで分からなかった意外な事実が見えてきますね(ぼくだけですが)

これらの原料を使い、糸を紡ぎ、それを布にしていく訳ですが、それを実行するには労働力が必要となってきます。

果たして中世の人々はどのくらいの生産力をもって、糸や布を作っていたのか。

次はその辺りにスポットを当てて考えてみたいと思います。



「糸ができるまで」


今でこそ繊維機械という大きな機械で糸を大量生産していますが、昔は何をするにも人の手で行っていました。


大抵は繊維の種類により、糸を作成する前準備のようなものが必要になってきます。

綿であれば、綿打ちと呼ばれるワタをばらしてふわふわにする行程が存在します。


糸を紡ぐには、基本的に材料となる繊維を手でねじってより合わせ、長い糸にしていきます。

このより合わせの作業には経験が必要で、素人だと糸が細くなったり太くなったりして品質が安定しません。

糸を紡ぐ人はスピナー(spinner)と呼ばれ、主に女性が活躍しました。


初めは手で紡いだ糸を、木の棒に巻き付けて糸を作っていましたが、12世紀ごろに手回し式糸車

13世紀ごろから足踏み式糸車が開発されます。

これにより糸の製作にかかる時間は短縮され、繊維産業が広がって行ったのです。

18世紀に産業革命が起き、紡績機が開発されるまで、糸紡ぎは人の手で行われていました。



糸を紡ぐ速度としては、木綿で手回しの糸車を使用した場合、慣れた作業者で10gの糸を紡ぐのに約1時間半かかるそうです。

素人の場合はその倍、10gの糸を作るのに3時間もの時間がかかるとか。

木綿糸は、その太さにもよりますが、1gでおよそ1.7メートルの長さになるようです。

足踏み式糸車を使用した場合は、手回し式の倍程度の効率になるようです。


ちなみに現代の最新の繊維機械を使用すると、1分間で8000メートルの糸を作れるそうです。

人の手だと慣れた作業者でも1分間で18センチ程度なので、手回し糸車の約44万倍の速度…チート過ぎますね。




「布ができるまで」


それでは次に、糸を布にする工程を考えてみたいと思います。

糸を布にする際には機織り機を使用します。

機織り機の歴史は古く、紀元前5000年頃には既にそういった道具があったようです。

そして現在に至るまで、その基本的な構造は変わっていません。

あらかじめ縦に張った複数の糸の間に横糸を張り、横糸を下して組み上げていく方式です。


10世紀になると機械化が進み、足踏み式の水平織機というものが現れます。

鶴の恩返しなんかで鶴が使っているアレですね。

13世紀になると一般人による糸、布の量産体制が確立し、織物産業は広がりを見せていきます。

当初は女性が活躍していた機織り産業でしたが、17世紀ごろになると機織り機が大型化し

その大型機械の操作を行うために、専門分野での機織りは力の強い男性の仕事となっていきました。


布を作るという行為は遥か昔から行われていたのですね。


それでは次に、機織りに要する時間はどの程度でしょうか。

これは織る布の種類にもよりますが水平型の足踏み機織り機を使用して単色の布の場合、帯用幅の布であれば、1時間で約30センチくらいのペースで作成できたようです。

これが上着用の幅が広い布になると、1時間で5センチ程度の速度だったとか。

作る布地の幅や模様の有無などの要素が加わることにより、作成に必要な時間が変化してくことになります。


糸紡ぎに対して、機織りは作業ペースが速かったため、中世の機織り職人は糸の供給が間に合わないケースが多々あり、暇を持て余すことが多かったというような話もあります。




「服ができるまで」


これまで糸、布の製作過程を考えて来ましたが、それでは実際に服を作るとなったらどの程度の材料が必要なのでしょうか。

そしてそれから作られる服の価値とはどの程度になるのでしょうか。

またまた適当な数字を勝手に組み合わせて考えてみたいと思います。


まず作成する服ですが、こちらは現在の紳士物のLサイズのTシャツを解いた実験があったので

それを基準に考えてみたいと思います。


まず紳士物LサイズのTシャツを糸に戻した場合、袖の部分も合わせると、約5600メートルになるようです。

綿花1個からは約95メートルの糸が作れるらしいので、Tシャツ1枚で約60個分の綿花が必要となる計算になります。


これは現代の高度な繊維技術で作られたTシャツですので、中世で使用されていた衣類に使われている素材量と全くのイコールではないと思いますが

せっかく具体的な数字が見つかったので、これを基準に考えてみたいと思います。


まずは素材の作成です。

5600メートルの綿糸を紡ぐにはどのくらいの時間がかかるでしょうか。

「糸ができるまで」の項目で調べた、手回し式糸車を慣れた人が使った場合の糸の作成速度は約11.3m/hになります。

この数字を当てはめると、5600メートルの糸を作るには、約495時間という膨大な時間がかかる事になります。

1日8時間、休みなしで紡ぎ続けたとして約2か月です。恐ろしいですね。

足踏み式糸車を使用して倍速になったとしても約250時間、1日8時間労働で1か月かかる事になります。



次に布の作成に入ります。

一般的なTシャツ程度の大きさのものを作る場合、横幅110センチの布が2.2メートル程度必要とのことですので、それを基準に考えてみます。

作成速度に関する具体的な数字がなかなか見つからなかったので、ここは唯一見つかった中世の布作成速度「5cm/h」を採用してみようと思います。

その速度で2.2メートルの布を作成するには、44時間必要です。

1日8時間機織りしまくって、5日半といったところですね。


しかし使っている素材量は同じはずですが、糸を作る時間と比べると随分短く感じます。

中世の機織り職人が暇していたというのは何となく分かるような気がしますね。



そして最後、縫製にかかります。

こちらに関しては、熟練の針子さんでも1日がかりだったようです。

なのでTシャツ1着8時間という感じで考えてみます。


こうしてようやくTシャツが1着作成されました。

それではここまでにかかった人件費を計算してみようと思います。


糸作成(495時間:61日)

布作成(44時間:5.5日)

服作成(8時間:1日)


合計(547時間:67.5日)


単純に全工程で同じ賃金を支払うとしても

これを書いている時点の日本の最低賃金が時給714円なので、それと合わせると390,558円

ちょっと途上国に頼んじゃった系の激安賃金、時給300円くらいだとしても164,100円

おいおい世界の電子産業を支えてる工場なんて時給150円だぞってことでも82,050円


安い労働力を集めて経済無双…妄想が捗りますね! 奴隷使役的な意味で。


全行程の9割を占める糸作成の工程が短縮されれば、人件費は大幅に圧縮できそうです。

とりあえず足踏み式糸車の導入で人件費を半分近く減らせますね。

そして生産量は倍です!

まあ、そんなうまいこと行かないのがお仕事なんですけどね…


しかもこれ作成の人件費のみなので、材料価格を上乗せしなくてはなりません。


「原材料費を考えてみる」


なんだか当時の木綿価格が見つからなかったので、ここでは羊毛で計算してみます。(安定の無能)

羊毛は中世において最も一般的な繊維なので、ある意味羊毛計算が、市民的な価格イメージに近いのではと思います。


例えば13世紀ごろの羊毛は6.3kgで15,000円程度だったようです。

13世紀と言っても長く、どのあたりの相場なのか分かりませんが、そこは考え出すと収拾がつかないのでスルーします。

毛糸は50グラムで100メートルくらい、セーターを作るのには1600メートル、約800グラム程の毛糸が必要だそうです。

そこから考えると、セーターに必要な羊毛の価格は1900円程度となります。

恐らく羊毛から毛糸にする工程(洗って、染めて、ほぐして、まとめる)の中で重量は減少すると思われますが、具体的な数値が不明なのでここでは考えないことにします。


この1900円に加工賃を加えたものが、毛糸のセーターの原材料費となるのですね。

加工賃がどの程度かは、そられしい記述が見当たりませんでした…

でも例えば5倍になって、セーター1着の原材料費が1万円くらいになったとしても、糸紡ぎの工賃には遠く及びませんね。


それでは上の方で木綿で計算した縫製までの工賃を当てはめてみます。


・ウールでセーターを作ったら

糸作成(1600m、142時間:18日)

布作成(2.2m、44時間:5.5日)

服作成(8時間:1日)


合計(194時間:24日)


時給714円で138,500円くらい。

スーパーブラック工業、時給150円で29100円くらい

おや、随分とマシな値段になりましたね。


ウール製品の場合、布の作成時間などは綿よりも短いのではないかとか

そもそも糸から編み上げればいいんじゃないかとか思いますが、その辺はまあ適当で…

それに針子とかどう考えても技術職なので、恐らく賃金は他の工程よりも高いはず…

そのあたりは個々で調整していただければと思います。

糸紡ぎや機織りは人を増やせば時間短縮はできますからね。縫製はそうもいきませんが…




さてここまで、色々な合ってるのか間違ってるのか分からないデータを基に考えて来ましたが

一言で言ってしまえば、中世の服は高い! ということに尽きると思います。

実際のところ、中世では服を3着持てる女性は幸せ者だと言われていたようですね。

貧民は低質なリネンで作られたローブ(ワンピースぽいやつ)くらいしか持てず、それでも決して安いものではなかったようです。


多くの家では女性や子供は糸を紡ぎ、家計を助け、服は自前で作りました。

14世紀ごろになると、糸紡ぎの委託業務(材料を渡して出来た糸を買い取る内職斡旋業)が盛んになり、糸の量産体制が確立されていきます。


一方、繊維業と密接な関係にある染色業は、中世では賤業とされ、なんだか良くわからない宗教的な理由で不遇な立場にあったようです。

また、染料や特殊な薬品を使用するため、河川の汚染を引き起こし、様々な問題を発生させていたようです。

さらには中世では身分によって使っていい色が決まっていた場合もあるようで、そのあたり面白そうだからと調べてみたところ、ちょっとめんど…ミジンコには難しい内容だったので、このテーマはスルー決定です。



はぁ、それにしてもカイコガ、不憫すぎる。

誰かカイコ様が無双するちーれむ物を書いて下さいおねがしいます。

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