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現代の忍ギルドは忍ばない  作者: 江山彰
第一章『異世界に召喚、いや、異世界を召喚した少年』
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六の巻『初クエスト達成』

   六の巻『初クエスト達成』



 レベル1の傭兵少女、中の人は若手最強のくの一。


「俺たちと基本スペックが違うからな、あいつが小さい頃からずっと努力してきて手に入れた力だ」

「彼女のことを、よく知っているのですね」


 どこかつまらなそうに腰をかがめた亜雪が下から雷丸を覗き込む。


「まあ、いろいろと世話になってるからな、もう少し融通が利くと完璧なんだが」

「押し付けはいけませんよ、彼女はあなたが絡まないと、とても優秀そうですから」


 火炎弾を外したにもかかわらず、作戦通りに三匹が残る形になっている。状況の変化に臨機応変に対応した証拠だ。あの無駄のない動きならもっとゴブリンを減らすこともできたに違いない。


「せっかくの気遣いだ、こっちも役割をはたすか相棒」

「もちろんです。久しぶりですね二人でコンビを組むのも」


 撃った薬莢を抜き、最後の火炎弾を装填する。この二発を撃てば後は通常弾のみ。


「今度は外しません」


 雷丸たちには気がつかず、緋桜を囲むように動いていたゴブリンたちに火炎弾をお見舞いする。先ほどの外した一発目の失敗を教訓に狙いを修正した火炎弾は見事に命中した。


 ここまできてやっとゴブリンたちも雷丸たちの存在を認識する。


 ギィギィと奇声を発しながらダガー片手に目標を雷丸たちに変えて襲いかかってきた。


「もう一つ」


 最後の火炎弾も命中。


 二人の分担はあと一匹になった。亜雪の銃が弾切れになる。


「雷丸、装填まで時間を稼いでください」

「その前に終わらせてやるぜ、来い、我が呼び声に答えよリトルフォックス!」


 リトルウルフを呼び出した時と同じ魔法陣から今度は銀色の子狐が現れた。


「挟み撃ちだ、混乱させろ!」


 雷丸の指示に左右に分かれ黒と銀の小さな召喚獣はゴブリンへと挑みかかる。


 ゴブリンはダガーを持つ右手側に回りこんだリトルフォックスを狙ってくるが、銀の子狐は逆にダガーを持つ手首に噛みついた。痛みに耐えきれなかったのだろう、唯一の武器が手から抜け落ちる。


「とどめだリトルウルフ」


 合図と同時に黒い毛並が放電をはじめ、口から雷撃が放たれた。


 背後からの攻撃となった雷撃は避ける隙も与えず命中、断末魔と共に霧となって消えていった。忍術雷遁の初歩の技を参考にした下位電撃魔法「サンダー」はゴブリンていどなら一撃で仕留められる威力を持っていた。


「おっし、後は緋桜がボスを倒せば」

「ギギィ」


 緋桜の状態を確認しようとしたら近くからゴブリンの鳴き声が聞えた。それもすぐ背後から。


 この場に残っているのはソルジャーゴブリンだけで、それも前方で緋桜と戦闘をしている。聞こえるはずがない。想定外のことに動きが鈍る体。


 火炎弾で倒したと思っていたゴブリンが実は倒し切れていなかったのだ、こげた体の子鬼はいつのまにか雷丸の背後に回り込んでいた。


「雷丸!」


 亜雪の悲鳴、雷丸の脇腹に痛みが走る。


「どじったぜ」


 倒れた雷丸を助けるため、亜雪が銃を構えるが敵との距離が近すぎた。銃身が弾かれその場に尻もちをついてしまった。


 ゴブリンは邪魔者はいなくなったと雷丸に鈍くくすんだ色のダガーを振りおろすとする、主のピンチの召喚獣たちも引き返してくるが間に合わない。


 もはやこれなでと、雷丸自身が感じた時、高速で飛来したロングソードがゴブリンを貫いた。


「へ?」


 雷丸が間の抜けた声を出す。


「これって、緋桜のだよな」


 ゴブリンが霧となって消え、ロングソードがカランと落ちた。


 投げた本人はどうなった。ロングソードを杖の代わりにして立ち上がる。ピンチに陥ったならこの剣を届けなければと、しかし。


「心配して損した」


 無手になっても緋桜はソルジャーゴブリンと対等に渡り合っていた。グレートソードの豪撃も当たらなければ意味がないと、柳の枝のごとく受け流していた。


 焦りをみせるソルジャーゴブリンが上段から叩き付けるように振りおろす斬撃を半身にするだけの最小限の動きでやり過ごし、隙だらけになった相手の懐に飛び込むと、天に向かい打ち上げるような蹴りを繰り出した。


 蹴りは喉に突き刺さり、これが決着の一撃となる。


「雷丸様、おケガはありませんね」


 振りあげた足をおろし、何事もなかったように普段と同じ口調。


「ああ、これは幻のキズだからな」


 痛みはするが切り口から血は流れていない、リアルを追求した仕様だが、協力をしてもらった亜雪を含め各方面からグロイ表現は抑えて欲しいとの意見が多かったのだ。先ほどの猪も血の臭いはしても腐った異臭は発生しない。


 ギルドカードが光り、クエスト洋紙が判子と共に現れペタンとクエストクリアの印を押した。すると再度ギルドカードが光、今度はファンファーレが鳴る。


「レベルアップしたな」


 確認するとレベル1から一気にレベル5まで上がっていた。


「上がり過ぎかな、最初だしこのくらいがちょうどいいのか?」

「そうですね、倒した数を考えると上がり過ぎの気もしますが、ソルジャーゴブリンのクエストは多分初見ではクリアできませんよ、普通の一般人でわ」

「ああ緋桜を基準に考えたら、とんでもないムリゲーになるな」


 ギルドカードでいろいろな数値を見ながら相談をはじめてしまう雷丸と亜雪のギルドマスターズ。


「あの、雷丸様、先ほどから会話されている内容が理解できないのですが」


 戦闘時とはうってかわって心配で自身のない表情、ボスを蹴り一つで圧勝した人物とは到底思えない。


「雷丸、もしかして緋桜さんになんの説明もされていないの」

「どういう意味ですか」


 とても嫌な予感が緋桜を襲う。聞いてはいけないと修練で培った忍の感が訴えている。しかし、逆に今聞かなければ、後でとんでもないことにもなると雷丸との長い付き合いで身に染みている。どっちにしてもいいことは無い、だったら早く楽になろうと緋桜は決断した。


「説明をお願いできますか」

「難しいことじゃないぞ、明日からここでの異世界クエストを一般の人に参加してもらうだけだ」

「はい?」


 雷丸に言われた内容を理解するための脳の処理が追いつかなった緋桜がフリーズした。


「最初はテスト公開だけどな」


 一般の人に公開する。何を、異世界クエストを、異世界クエストとは幻術で覆われた山の中で行われる雷丸が考えた遊び。公開する、異世界を、幻術を……


 忍術を一般に公開する。


「な、何を考えているのですかッ!!」


 単語をつなぎ合わせてようやく理解する雷丸の目的、リトルウルフが放ったサンダーなどくらべものにならない雷が裏山の異世界に落とされた。

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